現在の飲食業界を取り巻く状況を見渡しても、アフターコロナに対応しきれていない店舗も多く見かけ、それは1~3店舗ほどの小規模業態においてはさらに顕著な傾向でしょう。
飲食業界にとって苦難の時代という現状を乗り切るためには、単にコロナ対策で店内環境を整えたり、デリバリーサービスに登録したりというだけでは心もとない状態です。
そこで「飲食店を変えるDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)戦略」と題し、これから5回にわたってIT技術によって飲食店を変革させる方法、つまり「飲食店のDX化」についてご紹介します。
これまでの飲食店の常識と現状を打破し、新しいフィールドへと踏み出したいと考える飲食店経営者様にとっては非常に有用な内容となっております。
新しいビジネスチャンスをつかむ一助とするためにも、どうぞお付き合いください。
目次
新時代の飲食店経営にはDX導入が不可欠!
企業がIT技術を用いて業務の効率化や、売上・利益の拡大の仕組みづくりを行い、そこから顧客や社会に対しての価値提供方法を変革させ新たな企業価値を創出する。
近年のトレンドワードでもあるDXを簡単に解説すると、こういった言葉になるでしょう。
2018年に経済産業省がガイドラインを策定し、日本でも広く知られるようになり、実際に導入する企業が増えているDXですが、その潮流は「対面営業による商品提供」を主とする飲食業界においても同様です。
店舗型ビジネスの典型的業態である飲食店、特に小規模店舗においのDX推進が一般企業とはいささか趣を異にする点があるのは事実ですが、さりとて無関係なものではなく、特にアフターコロナ以降けして無視できない概念だといっていいでしょう。
コロナ禍で飲食店のDX化が加速
そもそも飲食店というものは「不特定多数の人が集まり、対面サービスにより提供された商品を口にする」というビジネスモデルです。
そこには当然のごとく「会話」が存在し、「人と人のコミュニケーション」が重視される業態であるのは間違いありません。
しかし、新型コロナウイルス感染が広まって以降、これまで当たり前に享受していた状況は一変。政府の自粛要請や消費者の忌避意識なども手伝って、いまの飲食業界はかつてない危機的状況に見舞われているのが現状です。
そんな閉塞的な状況を打破するための光明としても捉えられるのがDX推進で、そのために各企業・店舗では知恵を絞って取り組んでいかなければなりません。
大手飲食店だけの取り組みではない
もちろんこうした事態にいち早く対応し、新型コロナウイルス蔓延前後より積極的にDXを取り入れる飲食事業者も多数います。
しかし、それらはいわゆる「チェーン店」や大手企業が運営する飲食店舗がほとんどで、単独店舗、もしくは2~3店舗規模の個人経営や小規模企業ではまだまだ従来のアナログ型店舗として営業を続けているのが実情でしょう。
とはいえ飲食店にとって不遇ともいえる現在の状況が近々に改善する兆しは見えず、そもそもの飲食店のあり方が変わっていく流れの中で、旧来のビジネスモデルにだけしがみついていては「未来がない」というのは抗うことのできない事実です。
特に小規模店舗のおいては、今まさに「店舗としてのあり方」を考え直さなければならない時期が来ているといえます。
飲食業界にとって未曾有の危機的状況の中、やむなく閉店へと追い込まれる店舗も多いのがそうした小規模店舗で、もともと企業的体力のある大手企業の経営する店舗よりもその状況は逼迫しています。
DX推進は小規模店舗にとってこそ、未来を生き抜いていくための切り札となるものです。
小規模飲食店のDX導入への壁
「DX推進がこれからの新しい飲食店経営にとっては不可欠」というのは、紛れもなく時代の潮流です。
しかし、そうはいっても個人経営の小規模店舗などではDX導入へのさまざまな壁が立ちはだかります。
それはおおむね次の3つに集約されるでしょう。
- DXへの理解不足
- 方法がわからない
- 金銭面の不安
DXへの理解不足
DXというのは決められた手法ではなく、概念そのものを指します。
そのため、その概念の理解はひと筋縄ではいかず、そこが理解できないため「うちには関係ない」という意識へとつながってしまうのです。
しかし、店舗の経営者自身がそういった思考へ陥ってしまうことが、もっともDX推進を阻害する要素となります。
IT技術を用いなくとも店舗の業績を改善できる手段は多々あるのはもちろんですが、そこにDXという概念を持ち込むことによって、さらなる業務効率化や売上の向上により、利益率の改善を図る可能性が見えてくるのです。
- うちには関係ない
- やっても無駄
- 大手の真似などできない
そうしたマインドをリセットして、真に消費者が求めるサービスを模索することこそ、飲食店経営には欠かせない考え方で、その中の1つの施策としてDX推進があるということを理解することが、DXによる経営改善の第一歩となります。
方法がわからない
小規模飲食店にとってもDX推進は不可欠だと理解できたとしても、次に立ちはだかる壁は「そもそものやり方がわからない」ということです。
これにはDXというものの理解が深く関わってもくるのですが、それこそがDXを始めたもののうまく行かない1番の理由ともいえます。
コロナ禍のDX推進とはいっても、何もすべてを非対面型のビジネスに変えるわけではなく、そこだけを取って語るものではありません。
DXで導入するIT技術は多岐にわたり、当然のことながらそのすべてが必要なわけでも無く、店の規模感・立地条件・顧客状況などによって導入すべき施策は変わります。
飲食店が取り組みやすいDX事例としては、大きく分けて次の3つが挙げられます。
- 会計をデジタル化する
- 予約や注文をデジタル化する
- 人材採用や勤怠管理などをデジタル化する
この3点はIT技術の導入による成果がわかりやすく、小規模店舗においても手を付けやすい事例ですので、その中から自店に必要な施策のみを少しずつ導入していけば、その先にきっと新しい店舗モデルが見えてくるはずです。
金銭面の不安
最後に挙げるDX推進の大きな壁としては、多くの経営者が持つであろう「金銭面の不安」です。
「IT技術を使って業務改善を行う大切さはわかるけど、実際に経営が苦しい現状では店を維持するのが精一杯で、そんなお金はかけられない」
そんな悩みをお持ちの店舗経営者様は多数おられると思います。
新型コロナウイルスによる売上減少を補助する一時的給付金や、ウイルス蔓延防止のための営業自粛に対する助成金など、政府が設定する支援金はいくつか存在しますが、それらはすべて営業を「続けて」いくための支援金で、DX推進など将来への投資には充てづらいというのが実情です。
また、それらを受け取る店舗としても、受け取らざるを得ないだけの逼迫した状況があり、そこから先の投資をする予算などとても捻出できないといった現状もあるでしょう。
しかし、DX推進は経済産業省主導で国が企業に対して推し進める施策ですので、そのための補助金というのも存在するのです。
特に、企業がITツールを導入する際に利用できる「IT導入補助金」などは、まさにぴったりな補助金制度で、2021年度は通常枠に加えて「低感染リスク型ビジネス枠」という、コロナ禍に対応する企業向けに最大450万円まで補助金額を拡大した枠も設定されています。
まとめ
「飲食店を変えるDX戦略」と題したこの連載企画の第一弾として、今回は飲食店のDX導入に対する概要を解説いたしました。
大手チェーン店や大規模店舗などでは今や当たり前のように取り入れられているDX推進ですが、小規模店舗の経営者様においてはなかなかピンとこない話かもしれません。
それはけして遠い国の話ではなく、今そこにある危機を乗り越えるための大きな施策です。
むしろ現在2~3店舗規模の店舗にこそ導入していただきたい概念で、「現状改善による新しい価値の創出」を行うためのアイデアはそれこそ無数にあります。
これから数回にわたりそのアイデアについていくつか解説してまいりますので、よろしければお付き合いいただければ幸いです。
ただし、DXを推進するということは単なるIT化(既存の技術の一部をITに置き換える)ということではなく、業務そのものをゼロから作り直すことと同義ですので、それ相応の覚悟は必要となります。
しかし、現在の飲食業界を取り巻く未曾有の危機的状況を乗り切り、自店の新しい未来を切り拓くためにも、ぜひ覚悟を持って皆さまの店舗にも「DX」という概念をうまく取り入れてみてください。
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