【ムーンショット型研究開発制度②】未来社会のDXはAIやロボットが変える

【ムーンショット型研究開発制度②】未来社会のDXはAIやロボットが変える

これからの未来に向けて、多くの企業がビジネスにおける競争力を強化するため、様々なDX推進施策を取っています。

DX推進の重要性は、企業の単位に留まらず、「日本」という国家単位においても同様です。

一方、国を変えるDXは、単に他国との競争力強化のためだけの施策ではありません。

端的に言えば、我々国民がより豊かで安心した暮らしを送れるように、日本の社会構造そのものを変革するDXこそが、国が行うべきDX推進策と言えるでしょう。

「社会・環境・経済」という3つの暮らしの基盤を改善・向上させる事を目的に行われる、内閣府主導の【ムーンショット型研究開発制度(ムーンショット目標)】はまさにその最たるものです。

ムーンショット型研究開発制度は、画期的なデジタルテクノロジーによって人々の暮らしを根底から変える「社会構造のDX推進」を実現することで、未来の日本をよりよい方向へ導く事を目的としています。

ムーンショット型研究開発制度について解説する本シリーズの第2回目として、今回は3つの柱の内「社会」に焦点を絞り、より詳しくこの政策を読み解いていきます。

AIやロボットが活躍する未来は、決して荒唐無稽なSFの世界の話ではありません。日本政府が真剣に描く未来社会の在り方を、本記事を通じて、垣間見てください。

日本政府が目指す未来|社会編

日本政府が目指す未来|社会編

内閣府が主導するムーンショット型研究開発制度では、日本社会が抱える諸課題を解決するための目標として、具体的に9つの目標(ムーンショット目標)が設定されています。

9つの目標を達成することを通じて政府が改善・向上させようとしているのは、大別すると「社会・環境・経済」という、人間が生活するための基盤となる3つの領域です。

今回取り上げる「社会」領域と密接に関わる目標の内、DXの観点から見て、特に興味深い目標は、【目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現】【目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現】ではないでしょうか。

共に2050年までに人の生活基盤にAIやロボットを導入して、より良い社会を作っていこうという目標です。

それぞれの目標について考察していく前に、まずは現在の日本社会が抱える問題を振り返っておきましょう。

日本の未来が抱える問題点

日本の「社会」が抱える問題として真っ先に挙げられるのは少子高齢化です。日本に限らず多くの先進国で問題になっていますが、特に日本は世界でも類を見ない超高齢化社会であり、歪(いびつ)な社会構造になっています。

我が国の人口減少はかつてないほどに進行しており、先頃発表された総務省の発表では、昨年10月1日現在の外国人を含む総人口は1995年以降最大の落ち込みであり、その速度は加速しているようです(参考/総務省2022年15日発表)。

2020年10月に発表された国土交通省国土審議会の【「国土の長期展望」中間とりまとめ】においても、2008年には1億2,808万人まで増加した人口も、2050年には1970年当時と同水準の約1億人にまで減少すると試算されています。

こうした少子高齢化の進展により、今後ますます生産年齢人口が減少する事は間違いありません。課題先進国と称される我が国は、他の先進諸国に先駆けてこの問題に取り組んでいかなければなりません。

少子高齢化時代を切り拓くイノベーション

少子高齢化時代を切り拓くイノベーション

医学の飛躍的な進歩により人の寿命が延び続けていることに加えて、ライフスタイルの多様化など様々な影響により出生率は減少、少子高齢化には益々拍車がかかっています。

今後迎える「人生100年時代」に向けては、定年年齢の延長や確定拠出年金制度の設定など、政府としても様々な施策を行って対応しようとしていますが、これらは少子高齢化問題の構造的な解決には結びつく施策とは言えません

また、社会福祉制度や子育て支援策の拡充など、少子化に歯止めをかけるための政策も間違いなく重要ですが、それだけで乗り越えられると考えるのは楽観的すぎると言わざるを得ません。

今の日本で求められるのは、社会の問題を抜本的に解決し、時代を切り開くイノベーションです。

サイエンスとテクノロジーで急進的なイノベーションをおこし、国家レベルのDXを推進させなければ、少子高齢化時代を乗り越え、新たな時代を切り拓いていく事は出来ません。

ムーンショット目標とは、こうした状況を打破し、様々な背景や価値観を持ったあらゆる年齢層の人々が、多様なライフスタイルを追求できる社会となるよう、来るべき新たな社会を迎えるために設定された目標であり、それを実現させる制度がムーンショット型研究開発制度です。

持続可能な社会構造への変革

人生100年時代においては、新たな社会構造へと変革していくことが求められます。

未来は現実社会のみならず、メタバースに代表される仮想現実社会も含めたシームレスな社会構造となると予測されており、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれる社会が広がるでしょう。

この未来の社会像は、「持続可能な社会(Society5.0)」と定義されており、内閣府の科学技術政策の1つに掲げられています。

内閣府は、人類のこれまでの歴史を以下の通り、4つの社会に分類して整理しています。

  • Society 1.0:狩猟社会
  • Society 2.0:農耕社会
  • Society 3.0:工業社会
  • Society 4.0:情報社会

現在は「情報社会(Society4.0)」においては、インターネットの発達により、世界はこれまでにない広がりを見せました。ここ十数年の著しい技術の発展と、それに伴う生活の目まぐるしい変化は、今の社会を生きる私たちが身をもって経験してきたと言えるでしょう。

インターネットの普及がそれまでの「工業社会(Society 3.0)」とは全く人の営みを可能にしたということについては、議論の余地がないはずです。

一方で、インターネットを通じて離れた場所にいる人とも容易にコミュニケーションが取れるようになったとはいえ、現代社会においては知識や情報は分野ごと、あるいは個人ごとに分断されており、横断的な連携が不十分な状況にあります。そして、その分断こそが「人が行使する能力の限界」を作っているのです。

現代社会の限界は、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して、これまで政府が十分な対応を行えなかったことを端的に表しています。

しかし、Society5.0では、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)ですべての人とモノが繋がり、知識や情報は共有されます。それによってこれまでにない新たな社会を生み出し、現代社会が克服できない課題や困難の解決を目指しているのです。

現代社会特有の問題解決に大きな力を発揮すると期待されているものの1つが、AIやロボット技術などの先進テクノロジーであり、その解決こそがムーンショット型開発制度の特に目標1と3に託された想いなのです。

では、こうしたシームレスな社会構造である「持続可能な社会(Society5.0)」を実現させるための【ムーンショット型研究開発制度】の目標1と3は、具体的にどのような目標なのでしょう。次章ではさらに詳しく考察していきます。

>>次ページ/ムーンショット目標1&3

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この記事の執筆者

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

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