飲食店を変えるDX戦略と題してお送りしているこの特集記事ですが、第1回目では飲食店にとってのDX推進の概要を説明いたしました。
第2回目となる今回は、さらに踏み込んだ内容としてクラウドサービスを使った飲食店DXの一例をご紹介します。
とはいえクラウドサービスと一言でいっても、取り扱うことのできる業務は多岐にわたり、とてもここでそのすべてを説明することはできません。
そこで今回は、特に飲食店にかかわりの深い受発注業務や勤怠管理といった業務の効率化と、いつの日も飲食店を悩ませる人材確保の変革に絞って解説します。
飲食店のDX推進のとっかかりとしてもおすすめなこれらの施策を、どうぞ学んでみてください。
目次
仕事のあり方を変えるクラウドサービス
店舗の売上台帳や仕入れ台帳をパソコンに入力して、帳簿管理をしている飲食店は多いと思います。
ノートなどへの記帳の延長線上にあるそれらの作業ですが、Excelなどの計算ソフトを用いた管理では、手入力の煩雑さがあるのは否めません。
とはいえ、それでも管理する店舗が1店舗だけの場合はそれほど問題ではないでしょうが、2店舗3店舗と経営する店が増えた場合、それら各店のデータを集中管理する必要があります。
そんな時に便利なのが「クラウドサービス」で、その登場以来それまでの業務のあり方を根本から変えました。
クラウドサービスの概要とSaaS
クラウドサービスとは、以前はパソコン上のハードディスクなどに保存していたデータやソフトウェアを、インターネットを通じてネット上の仮想空間に保存するサービスです。
そこに保存したデータは、セキュリティ上のアカウントやパスワードを入力することで、複数のパソコンやモバイルからアクセスすることができます。
特別な設備投資などは必要なく、経営者が現場以外の出先や事務所でもリアルタイムでデータの確認や情報の閲覧ができるなど、コストダウンと業務効率化の面からみてもメリットが大きいシステムです。
中でもSaaS(Software as a Service)と呼ばれるサービスは、電子メールやグループチャット、オンライン会議システムといった連絡ツールから顧客管理や勤怠管理などのソフトウェア機能を、インターネット上で使えるサービスとなっています。
受発注業務の効率化
そうしたSaaSアプリを飲食店が導入する場合にもっとも効果を実感しやすいのは、受発注業務の効率化です。
近年は出入りの納品業者などが、こうしたシステムを使って酒や食材の発注をするよう依頼してくる場合もありますので、なじみのある経営者様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一部の大手企業を除けば飲食業界の場合はこうしたシステムを導入しているケースは少なく、まだまだ電話やFAXといった旧態依然とした発注システムに頼っているケースがほとんどなのも事実です。
ともまれこうしたサービスを有効活用すれば、発注業務が簡便に行えるだけでなく、オーダーエントリーシステムや電子会計システムと連動させることにより、月末の帳簿作成までが一括して管理・作成できるようになります。
だけでなく、レシピを入力しておくことにより食材ロスの管理まで行えるなど、徹底したコスト管理や人的ミスの削減など、多くの場面で利益を生み出す業務効率化に寄与するのです。
勤怠管理の効率化
次に進めやすいシステムとしては、勤怠管理システムが挙げられます。
これは従来のタイムカードをさらに進化させたシステムと考えてよく、原理としては理解のしやすいものでしょう。
これまでタイムレコーダーに専用のカードを挿入し時間を打刻することで管理していた勤怠管理が、SaaSでの勤怠管理システムであれば交通系ICカードやアプリをDLしたスマホをかざすだけで、簡単に管理できます。
またクラウドサービスを利用した利点として、複数店舗の出退勤状況を集中管理できるだけでなく、複数の店舗をわたり歩くエリアマネージャーなどの勤務状況も一元管理できますので、月末の手作業による集計業務などは一切不要です。
当然のことながら手入力によるヒューマンエラーも極限まで抑えることもできますし、それまでの体制・オペレーションで(≒人件費を増やさず)税金管理まで行える利便性は、アナログのタイムカードにはないメリットといえるでしょう。
Web面接で人材採用を効率化
新型コロナウイルスの蔓延以降、お客様と従業員という接触を考え直す必要が出たこともありますが、同時に従業員同士の距離感も考え直さなければならなくなっています。
それは新しいスタッフを採用する段階では特に顕著です。
また、特に学生バイトなど若年層の採用時に見られる傾向として、バイト先探しから面接の予約までをすべてスマホ1台で行うケースも多く、こうした人材を採用する場合に検討する余地があるのが「Web面接」という手法です。
これはZOOMやSkypeなどのオンライン会議システムを用い、店舗まで来店せずに求職者との面接を行うシステムで、アフターコロナ以降在宅ワークの広がりとともに一般化してきました。
近年はこうした手法を取り入れている飲食店も多く見られ、そのどれもが一定の成果を上げています。
Web面接のメリットとしては大きくわけて次のようなものが考えられます。
- 面接時間の調節などが楽に行え、効率とスピードが上がる
- 求職者もわざわざ店舗までくる必要がなく、気軽に応募してもらえる
- スマホ世代の若者を取り込むため、応募までの心理的ハードルを下げられる
- 録画することにより他の責任者と面接の様子を共有できる(個人保護法の観点から録画には双方の同意が必要)
- 外出自粛下でも面接を行うことができる
こうしたさまざまなメリットは、忙しい採用担当者の物理的な成約を減少させ時間を有効活用する(≒コストパソ―マンスの増大)だけでなく、従来よりも数多くの候補者の中から採用する人材を選べるといった副産物も生み出します。
またさらに突き詰めたシステムとして、スマホでの自撮りに慣れた世代特有の感性をうまく利用した、応募者に短時間の応募動画(自己紹介動画)を撮影してもらい、それを投稿してもらって一次選考を行うシステムで成功を収めているケースまであるのです。
コロナ禍で人と人との距離を考え直さねばならない現状でも、最終的にはリアルに対面して働くことが必要な飲食店ではありますが、応募者の心理的ハードルを下げるためにも、こうしたWeb面接ツールを利用した人材採用を取り入れてみるのは、人手不足に悩む飲食店にとっては1つの光明となるのではないでしょうか。
まとめ
連載企画の第2回目として、「クラウドサービスを利用した業務効率化」と「Web面接による人材確保」について解説してまいりました。
これら2つの取り組みは、小規模店舗でも比較的簡単に取り入れられるシステムですので、DXの取り組みの最初期の段階で取り組むことをおすすめします。
とはいえ、DX推進はバランスが大事です。
どれか1つの業務をIT化しただけでは、本当の意味でのDXは成し得ません。
しっかりとしたDXによるゴールを見極めて、そのためには自店のどこを変革、あるいはブラッシュアップしていかなければならないのか。
そうした本質を忘れずにDX導入へと邁進してください。
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