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テレワークの問題点
現場からの要望もあり、企業としては積極的に取り入れていきたいテレワークですが、そこにはいくつかの問題点も存在します。DX推進に係る問題も含めて、それぞれ以下のような点です。
レガシービジネスの弊害
企業には、いまだに紙面による押印や、稟議承認等を行う紙文化が根強く残っており、これらが変わらない以上、単に自宅で実施可能な仕事をテレワークとして置き換えているに過ぎません。
押印や承認などのためだけに出社する必要があるのであれば、テレワークによってもたらされる働き方の選択肢の広がりは、限定的なものになってしまうでしょう。
まず、はじめに紙の書類をデジタル化(デジタライゼーション)し業務の効率化を図るなど、レガシービジネスを払拭することから始めていく必要があります。
業務の性質からの難しさ
飲食店などの店舗型ビジネスや製造業、医療施設などでは、テレワークの導入そのものが難しい場合もあります。
仮にテレワークを導入するとしても、どの業務について、どこまでをテレワークの対象とするかは、慎重な検討が必要となります。
勤務状況把握が難しい
テレワーク実施下では、オフィスで業務を行っている場合と違い、スタッフの勤務状況把握が難しいという問題があります。
そのため以下のような対応が必要となってくるでしょう。
- 勤怠管理システムなどを活用することで個々のスタッフの勤務状況を把握する
- 業務遂行状況について報告を求める
- スタッフ間でこまめなコミュニケーションを行う
同時に、プロジェクトのスケジュール進捗状況の把握にも、こうした業務の「可視化」が重要となってきます。
帰属意識の希薄化
通常オフィスで業務を行っていれば、スタッフ1人ひとりのちょっとした変化に気付き、必要な時に声がけもしやすく、雑談の中でのコミュニケーションも取りやすいもの。
しかし、テレワークの場合は、業務上必要がない時以外は会話をしないといった状態に陥りやすく、コミュニケーションが不足しがちになります。
テレワークは原則として自宅で行うことが多いため、会社とプライベートというオン・オフの切り替えがしづらく、このような労働環境は社員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性もありますので注意が必要です。
また、テレワーク環境が継続することにより、会社への帰属意識が希薄になるという懸念もあるため、スタッフ間の相互コミュニケーションが必要不可欠となります。
セキュリティ対策
企業の機密情報を保護するうえでセキュリティ対策は欠かせないものとなりますが、テレワーク導入下では、ハード面・ソフト面共に次のような問題があります。
- ハード面:VPN(Virtual Private Network:仮想専用線)機器がサイバー攻撃を受けたことによる情報漏えいが発生する可能性があるため、ソフトウェアの最新アップデートやセキュリティパッチの適用を行い、常に最新の状態に保つことが重要。
- ソフト面:テレワーク継続による会社への帰属意識の希薄化に伴う責任感の低下などにより、人的ミス発生の可能性が高くなったり、また当該ミスが発生した場合のキャッチアップが遅れる懸念がある。
また、周りの目が届きにくい労働環境や帰属意識の低下により、社員が情報漏えいや不正行為に手を染めるといった最悪の事態も想定して、情報セキュリティや職業倫理醸成のための教育などを定期的に実施することが大切です。
デジタルワークプレイスに必要な環境設定
デジタルワークプレイスに必要な環境設定には、いくつかの形式があります。それぞれのテレワークの形に適した、ハードウェアやツール類が必要です。
ここでは、どのような形式であれ、テレワークの環境設定に最低限必要だと思われるツールについて解説します。
ハードウェア
まず、肝心のPC(パソコン)に関しては次の2つの選択肢が考えられます。
- 会社貸与:同一のスペックかつセキュリティ対策を施した環境で業務を実施でき、環境設定を一定レベルに保つことが可能。反面、PCの購入・リース費用等多額の投資が必要。
- 私用PCの流用:機器自体の費用は発生しない(社員補助金などは除外)が、セキュリティレベルを含め一定かつ安定した業務環境が構築出来ない。
PCの他、オンライン会議システムを利用するには、以下の機器も必要です。
- オンライン会議用カメラ(カメラ内蔵PCでない場合)
- マイク(PC内蔵マイクで不足な場合)
- スピーカー(PC内蔵スピーカーで不足な場合)
- ヘッドセット/イヤフォン等(より良い使用環境を望む場合)
通信環境
テレワークではリモートアクセスやオンライン会議等を行うにあたり、1日でおよそ1GB~2GB程度のデータ通信量が発生するといわれています。
通信量の制限が低かったり、回線の速度が遅い場合は、業務に支障が出るのは言うまでもありません。
そのため、通信量無制限のモバイルWiFiルーターや光回線を準備すると良いでしょう。
オンライン会議システム
オンラインでリアルタイムに音声や画像の通信を行うためには、専用ツールを各PCにインストールする必要があります。
ビジネスシーンでも良く利用される代表的なツールは以下の通りです。
- Zoom
- Skype
- Microsoft Teams
連絡ツール
チャットによる対話形式でテキストのやり取りが可能なのと同時に、画像や資料のリアルタイム共有も可能な連絡ツールの一例です。
- Skype
- Microsoft Teams
- Chatwork
- Slack
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールでは、単にプロジェクトを進めるためのタスクやそれに伴うスケジュール管理を行うだけでなく、プロジェクトメンバー間のコミュニケーションもツール上で行うことが可能です。
複数タスクがスケジュール上で集中する繁忙期の特定や、各メンバーの業務負荷状況を可視化出来るツールもあり、これらを可視化することはプロジェクトの進捗管理の効率化にもつながります。
- Trello(トレロ)
- Asana(アサナ)
- Backlog(バックログ)
- kintone(キントーン)
- InnoPM(イノピーエム)
- Todoist(トゥードゥーイスト)
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、スタッフの就業時間管理・出社管理等のいわゆる労務管理を総合的に行うことが出来るシステムです。
PCやスマホなどのデバイスから出退勤の打刻のみならず、ICカードや生体認証による打刻が可能なシステムもあります。
- ジョブカン
- AKASHI(アカシ)
- IEYASU(イエヤス)
- jinjer(ジンジャー)
- F-Chair+(エフチェアプラス)
まとめ
今回ご紹介したアンケートからも明らかなように、テレワークの導入はコロナ対策のみならず、多様な働き方を求める時代の要請であるといえます。
デジタル社会の中で、多くの企業によっては事業を継続していく上で必要なものであるといっても過言ではありません。
またDX推進の観点からもテレワークを導入することは、業務の可視化・効率化につながり、スタッフがどこにいても高いパフォーマンスを生み出すことが可能です。
つまり、社員が働きやすい環境を作るだけでなく、企業側にとっても既存のビジネスをさらに発展させたり、新しいビジネスを生み出すチャンスでもあるのです。
ただし、セキュリティ対策やリモートでも働きやすい環境づくりも含めると、テレワーク導入には決して少なくない費用が必要。
各自治体等が行っている助成金等の支援制度活用なども含めて、より効果的、効率的なテレワークの導入をご検討ください。