デジタル化4つのメリット
では、DXの手段となるデジタル化を行うだけでは、何の意味もないのでしょうか?
当然ながらそんな事はありません。DXを推進していく上でデジタル化には大きな意味があります。ここでは、DX推進におけるデジタル化の意味を考えるにあたり、重要な4つのメリットをご紹介します。
膨大なデータ利活用
デジタル化されていない紙媒体などのアナログな記録方法では、膨大なデータを利活用することは極めて難しいことは言うまでもありません。
これまではアナログ管理されていた経理データや、膨大な顧客データなどをデジタル化することにより、はるかに楽で効率的にデータを取り扱う事が出来るようになります。また、人間の手を介さないデータ管理が出来るようになれば、単純なヒューマンエラーも無くなり、業務処理は正確かつ迅速に行えるようになるでしょう。
業務の効率化
労務管理や受発注作業、あるいは品質管理・製造管理などこれまで人の手によって行われてきた手間と時間のかかる業務をデジタル化することにより、業務効率は何倍もアップします。
また、例えば書類をデジタル化すれば、物理的に行わなければならなかった押印作業がオンラインで行えるようになるなど、業務の効率化に加えて生産性の向上への貢献も期待出来るでしょう。
事業継続性の確保
製造ラインや単純かつ膨大な計算作業などを、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)などを使ってデジタル化すれば、人が行っていた時には欠かせなかった休息を取らせる必要はなくなります。
24時間製造ラインを動かしたり、遠隔地から複数の業務へ指示を出したりと、時間や場所に制約されずに事業を継続していくことが出来るようになります。
それだけでなく、災害や事故などの予期せぬトラブルにより、人がシステムに物理的にアクセス出来ないような時も、システムを止める必要がないため、不測の事態によって事業の継続性が失われるリスクも最小限に抑える事が出来るでしょう。
働き方の多様化
経済産業省が【DXレポート】で提示しているように、これからの企業活動にはリモートワークの導入が必要となっています。
それまでの働き方をデジタルによるリモートワークに置き換える事が出来れば、これまで都市部に集中していたビジネス拠点を地方へ移管したり、距離的に離れた場所にいる優れた人材を雇用できたりと、物理的な場所にとらわれない多様な働き方が可能となります。
企業ごとに求められるデジタル化は違う
DX推進が求められているのは特定の業種・業態に限った話ではありません。これからの未来は、社会全体がデジタル構造に変わっていくことは間違いありません。その社会の中でビジネスを継続していくためには、全ての企業が大なり小なりデジタル産業化していく必要があります。
とはいえ、そのための手段としてどんなデジタル化を行う必要があるのかは企業ごとに異なります。
例えば、デジタル化の意識が高くDX推進が進んでいる業種は「建築・土木」や「社会インフラ」に関わる企業だと言われています。これらの分野は上に挙げたようなデジタル化のメリットを最大限に享受して業務の効率化や生産性を高めており、そこから新たなビジネスが生み出されているケースもあります。また、日本政府もDX先進国にならってデジタル・ガバメントを進め、行政の仕組みを変え、旧態依然としたシステムからの脱却を目指しています。
デジタル化と相性が良い産業がある一方で、飲食店に代表される対面接客型の業態の場合は、デジタル化出来る業務が比較的限られているのは事実です。もちろん、飲食店の場合でも労務管理や経費の管理などデジタル化によって効率化できる部分は少なくありません。また、タッチパネルやモバイルオーダーなど、コロナ禍では店員と接触する機会を最低限に抑える形での飲食サービスも人気を集めています。とはいえ、これが飲食店全体にとってメリットのある仕組みとは言えません。例えば、高級店で食事をする際に、顧客が求めているのは単においしい食事だけではなく、デジタル技術では代替不可能な人による接客サービスも含まれているためです。
このように業種だけでなく、企業ごと、店舗ごとに求められるデジタル化の分野と適用範囲は大きく異なります。そのため、あらゆる企業が全ての業務をデジタル化しなければならない訳ではありません。
企業ごとに自社のどの業務をデジタル化していくべきかを慎重に見極め、適切な方法で適切なデジタル化を行っていくことが、DX推進というゴールにたどり着くための重要な鍵です。
まとめ
多くの企業が勘違いしがちな「デジタル化とDXの違い」について、改めて解説致しました。
既存の業務やシステムを自動化したり、データをデジタルに置き換えたりといったデジタル化は、業務の効率化や生産性向上を目的としたDX推進のための手段に過ぎません。
それに対してDXはデジタル技術でビジネスモデルを変革する事により新たな企業価値を生み出し、企業の競争力を高めることが目的です。
手段と目的。スタートとゴールというように、混同されがちなデジタル化とDXの本質は、まるで正反対と言うぐらいに違います。
この違いをしっかりと理解した上で、ぜひとも「真のDX推進」という企業としての価値創出のゴールを目指して下さい。