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DXのキーワードは「顧客体験」と「ヒトの活用」
このようにオンラインからオフラインへと集客導線を設計することにより、経営状態のV字回復に伴いDXを推進してきた同社ですが、今後の展望はどのように考えているのでしょう。
「正直な所、現状では弊社が行っている施策はDXというほど大げさなものではなく、あくまでもウェブサイトなどパーツとしてのIT化に過ぎません。
しかし今後は、さらなるオンラインの有効活用と並行してもっと社内業務へもIT施策を進め、真のDXへと進化させていきたいと考えています。」
そう語る安東氏ですが、同社のDX推進のテーマは大きく分けて2つあると言います。
「1つにはブランドサイトで展開している、実店舗への来店導線の認知をさらに高めたいということです。
そのためには現在展開しているメガネの試着体験だけでなく、サイト上で視力測定まで可能とすることを目指すなど、もっと広範囲な『顧客体験』をウェブ上で体験できるようなブランドサイトへと育てていきたいのです。」
「そしてもう1つは弊社の持つ『人的価値の有効活用』です。
弊社のスタッフ1人ひとりは単なる販売員ではなく、すべてお客様のメガネや補聴器に対する問題を解決するプロフェッショナルで無ければならず、それを推し進めるため弊社では『メガネのマエストロ』と称した資格制度を導入しています。
今後は、そうした人材育成分野へもIT技術を用いて、さらなる発展をもたらせられないかと模索中です。」
今後のDX推進のキーワードとして「顧客体験」と「ヒトの活用」を挙げてくれた安東氏。
安売り路線からの脱却を図り、真に顧客にとっての価値あるサービスを模索し続けた同社だからこそ行き着いた、新しいビジネスで顧客の価値を創出するDXの本質的な目標が見えているのではないでしょうか。
「メガネとはお客様に『最高の見える』を提供するためのアイテムです。お客様にとって最高の状態を常にキープし続けるために、我々メガネのプロがお世話をさせていただく。そのために販売員1人ひとりの知識や技術を最高の頂へと導くことが、今も昔も変わらぬ弊社が目指す姿です。」
その目的のために、今以上にDXという漠然とした目標をうまく取り入れていきたいと語る安東氏の目線は、確かにDXの未来像を見据えていると感じられました。
まとめ
実店舗で顧客と対面した接客が求められるため、コロナ禍で苦戦を続ける店舗型ビジネスですが、この時代の流れを乗り越えていくためにはDX導入というIT技術と既存サービスとの融合は欠かせない考え方です。
多くの店舗型ビジネス経営者が抱える難問を解決するためのヒントが、今回の安東氏のお話には含まれているのではないでしょうか。
【ビジョンメガネのブランドサイトに対する考え方】
- ブランド認知を上げて、ユーザーとの良き関係を築く。それによりロイヤルティ(信頼・愛情)を高める
- ユーザーが欲している情報を提供する
- リアル店舗への送客誘導
このような明確な目的を持ってブランドサイトを構築する同社では、あえてウェブサイトと実店舗との棲み分けは考えていないと言います。
実店舗でもECサイトでも商品販売を行う店舗型ビジネスでは、そうした棲み分けを意識せざるを得ないこともありますが、こうした割り切った考え方もあるのです。
それよりも自社のあるべき姿や目標が明確になっていることにより、現時点でDXというモノが曖昧模糊としてはっきりとは分かっていなくとも、DXの導入であるデジタライゼーションを見事に成功させているという点は注目に値します。
「IT技術を使って自社の業務を効率化し、新しいビジネスを創出する」というDX本来の目的をうまく活用するためには「自社の業務の足元を見つめ、道筋を明確にする」ことが何より大切で、同社が取ってきた施策はそれが成功への近道だということを端的に表す好例と言えるでしょう。
店舗型ビジネスのDX推進策として、もちろんこれが唯一の最適解というわけではありませんが、コロナ禍で悪戦苦闘するすべての経営者にとって、安東氏の明確な視点は大いに参考になるはずです。
ぜひともこうした事例から自社にも当てはまる点を学び取り、激動の時代を乗り切る一助としてください。
株式会社ビジョンメガネ
お客様1人ひとりにとって「最高の見える」を提供するビジョンメガネ
創業:昭和51年10月31日
設立:平成21年8月10日
本社所在地:大阪府大阪市西区
事業内容:メガネ・コンタクトレンズ・補聴器およびその関連商品を取り扱う小売専門店チェーン
>>ビジョンメガネ公式ホームページ(文中画像引用先共)