コロナウイルスが蔓延したことで、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)の重要性が広く認知されるようになりました。
そんな中で「DXがもっと推進していたら、コロナは広がらなかったのでは?」と思う人もいるはずです。
たしかにDXが発展していれば、コロナの感染拡大はある程度防げたと考えれますが、現在までに勃発したパンデミックについては、各業界における「人々のDXに対する意識の差」が起因したという方が正しいのではないでしょうか。
今回の記事では、DXとコロナの関係性について、人々の意識という点にフォーカスして読み解いてまいります。
目次
DXが進んでいたら起こらなかったパンデミック
結論から言えば、DXが進んでいたらコロナウイルスがここまで広がらなかった可能性は高いといえます。
なぜなら、コロナウイルスの主な感染源は咳などから来る飛沫接触であり、日常における交流のオンライン化が普及していれば、コロナ禍での感染者増は抑えられるからです。
たとえば
- 在宅で業務を行うテレワーク
- オンラインで実施するズーム会議
- 紙の資料のPDF化
などが一般的になっていたなら、現時点で起こっているようなオフィスなどの事業所におけるクラスターは発生しなかったと考えられます。
SARSから学ぶ、医療業界におけるDXの発展
ただ、昨今は医療業界でのDXが発展しており、2003年に流行したSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome=重症急性呼吸器症候群)と比較すると、コロナウイルスの感染防止策は大きく進歩してきました。
たとえば、現在は2003年にはなかった、アプリを使ってかかりつけの医師の診断を受けられる、オンライン診療システムを活用できます。
病院ではコロナに感染するリスクがありますから、人との接触を避けたいと考える人や、基礎疾患を持っている人などは、ウイルスをもらうリスクを防ぎつつ、遠隔で医師の診断を受けることが可能です。
医療業界はSARSの例を受けて、次なる壁に立ち向かうためのDXを進めており、結果としてコロナウイルスの感染拡大は大規模にならず、現時点の程度に留まっていたと考えられます。
人々の意識からみる、DXとコロナの関係性
医療業界ではDXが進んでいたことから、コロナウイルスのさらなる感染拡大を防げたことは容易に予想がつきます。
しかしながら他の業界に焦点を当ててみると、SARSの件に限らずいち早くDXに乗り出したようなところは少なく、今回のコロナ禍でスタートを切った企業が多いように見受けられるのです。
一般社団法人電子情報技術産業協会の調査によると、コロナウイルスの拡大が始まり、最初の緊急事態宣言以前は、企業のテレワーク率が最大57%だったのに対して、宣言後の数値は最大95%にまで上がっています。
企業がテレワークを開始したことは喜ばしいことではありますが、いまだにオフィスにおけるクラスター感染事例は多く、医療現場と同程度の規模で、複数の感染者が出たという調査結果もあるほどです。
2003年以降、SARSの例を受けて、医療業がDXを積極的に進め、オンラインでのサービスが一般的となったように、他の業界においても、DXに意識を向けて改革をしていれば、クラスターの起こる可能性を抑えられたのではないでしょうか。
このように、業界によっては人々の「DXに対する意識の差」が生じており、コロナ禍における今後のさらなる壁を乗り越えるにあたって、埋めていく必要のあるギャップだともいえるのです。
DXの活用による正しい情報取得の必要性
コロナウイルスの予防策や感染の原因に関しては、さまざまな情報が飛び交い、どれが正しいものなのか困惑した人もいるはずです。
この事象をDXの観点から見ると、さまざまな手法で取得できる膨大なデータを整理して、正しい情報をいち早く届けることができれば、感染拡大が広がるのを抑えられたと考えられます。
たとえば、一時はコロナにうがい薬が効く、という報道が流れ、人々は「我先に」と薬局に駆け込み、うがい薬は店頭から一時的に姿を消すことになりました。
たしかにうがい薬を使ったことで、実験の数値は改善されたのかもしれませんが、公的にうがい薬が感染を予防できるという発表があったわけではありません。
コロナウイルス感染を避けるための正しい予防法は、なによりも人との飛沫感染を避けて「密」にならない程度の距離を保ち、手洗いうがいを励行することです。
今でこそ、大半の人が意識していることかもしれませんが、最初にもっとも大切な予防法を報道できていれば、うがい薬の一件に見られるような混乱を招くようなことはなかったといえます。
この他にも、飲み会やカラオケ、バスツアーを実施したことによって、クラスターが発生した事例は、正しい情報を取得しにくい、現在の仕組みが招いた結果だといえるでしょう。
メディアやSNSで拡散された数ある情報の中には、正しい予防法もあったはずですが、これらをうまく整理して、正しい情報をいち早く届ける仕組みづくりが、今後のDX推進には求められているのです。
まとめ
「人々の意識の差」というテーマから、コロナとDXの関連性について解説してまいりました。
SARSの蔓延時と比べると、医療業界においてDXは格段に進んでおり、コロナ禍においても効果が出ていることが見て取れ、感染者拡大を水際で食い止められています。
しかし、テレワークなどのオンライン化やスピーディーな情報伝達手段は、十分に進展しているとはいえず、まだまだ発展途上の段階です。
現在は、コロナウイルスが発生したことで、奇しくもDX推進に拍車がかかることとなり、各々がデジタル化の重要性を認知できています。
引き続きこのスピード感でDXを推進できれば、コロナウイルスのさらなる拡大や、次のクラスター発生を抑えることはできるはずです。
しかし、それらすべてを支えているのは、どこまでいっても「人々の意識」です。
DXを推進させようという意識、密を避けようという意識。
それらがなくして、DXの推進もコロナウイルスの拡大阻止も、とうてい実現することはできません。
もちろん誤解のないようお断りしておきますが、人と触れ合うなというわけではなく、コロナ禍においても人と人との関係は親密なものであるべきと考えます。
社会全体で真のユーザーファーストなDX化を実現し、心の距離の近さは維持したまま、必要時以外はソーシャルディスタンスを取ることができれば、コロナウイルスにも立ち向かっていけるはずです。