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時代とともに電子帳簿保存法は改善されている
インタビューからも明らかな通り、電子帳簿保存法は、帳簿のデジタル化などを見据えた未来志向の法制度でしたが、当時は実務上の要件が厳しかったため導入のハードルが高く、日本企業にはアンマッチであり浸透しなかったという側面があります。
そこに日本企業経営者のリスクを取りたがらない保守的な態度が重なってしまった結果、この使いにくい制度の変革を求める声も大きなものにはなりませんでした。
つまり、日本において経理や会計のDXが進まなかった理由は、改善・改革に消極的な企業側と、改ざんリスクの排除を重視するあまり実用可能な制度を構築できなかった、国税庁側の両者によるものだと言えます。
ただし国税庁側も頑なにルールを変えなかったわけではなく、少しずつ改善は続けてきたことは間違いありません。
(石井氏)
一般的にはあまり知られていないのですが、電子帳簿保存法も時代に合わせて何度か改正を行っています。
これまで行われてきた改正としては、大きくわけて5回ありました。
- 2005年:スキャナ保存制度の開始
- 2015年:スキャナ保存要件の緩和
- 2016年:デジタルカメラやスマートフォン撮影の緩和
- 2019年:スキャナ保存の期間制限緩和
- 2021年:税務署長への事前承認廃止、タイムスタンプ要件緩和など
特に大きく変化したのは新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年頃ですね。
企業や国税庁の意識や対応が、一気に変わったことを肌で感じました。
2022年度に公表された税制改正大綱では、より実務に即した改正となっているので、これは企業側にとってもペーパーレス化の大きな転機だと思います。
ただしこの場合でも、DX担当者や経理担当者1人だけに任せるのではなく、企業の経営者やフロント側も一丸となって取り組まないと、DX推進は成功しないでしょう。
まとめ
今回のインタビューでは、「過去」に時間を巻き戻し、なぜいままで経理DXが推進されてこなかったのかや、経理DXにおいて重要な「電子帳簿保存法」に関して、その問題点や改正の歴史についてお聞きしました。
今回のインタビューでも指摘されたように、経理部門におけるDX推進には、法律上の制約がある場合も少なくないため、企業側の努力だけでは乗り越えられないことも往々にしてあります。
帳簿のデジタル化はまさにその好例であり、国側の体制も整っていないことが企業のDXを阻む要因になってしまっていることもあるのです。
ただし、近年では政府は国を挙げてDXに取り組んでおり、法律・制度面においても以前よりかなり規制が緩和され、使いやすい仕組み作りが進んできています。
それにもかかわらず、未だに多くの企業が経理DXに取り組めていない現状があります。
その大きな要因の1つは、平氏が指摘する通り、DX推進に積極的でない経営者の存在です。
また、経営者が関心を持っていても、DXについての理解が不十分なままトップダウンで進めてしまったことによる現場の従業員の反発も要因として挙げられます。
では、これまで消極的だった経営者が重い腰を上げて、現場の反発も乗り越えて経理DXを進めるためにはどうすれば良いのでしょうか。
この問いは、「DX推進により企業のビジネスを大きく発展させていくためには何をすべきか」というより大きな問いにも繋がっています。
次回の記事では、令和5年に改正された電子帳簿保存法の内容を改めて精査しながら、新たな政府の施策を上手く活用して、経理部門がDX推進を成功させる秘訣について3人のプロフェッショナルに詳しくお話を伺っていきます。
代表の小林氏が語る、「DXを推進してデジタルを活用するには『知恵と経験とスピード』が重要」という言葉の真意はどこにあるのか。
ぜひ、本連載の展開にご期待ください。
>>中編へ続く
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