【業界インタビュー】ITの力で世の中を変えるDX推進|TIS株式会社(前編)

【業界インタビュー】ITの力で世の中を変えるDX推進|TIS株式会社(前編)

世の中のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)が進み、生活の多くの場面がデジタル化されている現代。特にその変化を感じる日常的な場面といえば、飲食店などで支払いをするシーンではないでしょうか。

キャッシュレス決済の普及は、確実に現代人の生活様式に変化を与えました。現金を持ち歩く必要がなくなっただけでなく、キャッシュレス決済にはさまざまなメリットがあります。

そこで今回は、長年銀行やクレジットカード会社の基幹システムを支えてきたTISインテックグループ「TIS株式会社」から、DXサービスコンサルティング部の鈴木剛氏をお迎えして、決済のDXについて様々なお話をお伺いしました。

鈴木氏は、銀行勤務を皮切りに、さまざまな企業で決済代行の裏側をはじめとする金融サービスに長年携わってきたプロフェッショナルです。

その豊富な知見からお聞かせいただいた興味深いお話を前後編に分けてお届けしますので、どうぞご参考にしてください。

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さまざまな企業を裏方から支えてきた「TIS」

TIS株式会社DXサービスコンサルティング部の鈴木剛氏1
TIS株式会社DXサービスコンサルティング部の鈴木剛氏(以下同)

まずはTIS様(以下:TIS)の大まかな業務内容と、その中で鈴木様がご担当されているお仕事について教えてください。

鈴木氏

「私たちのお客様は金融・非金融と幅広く関わらせて頂いておりますが、一番のコアサービスは、金融機関向けに金融システムを裏から支えるプロセッシングの部分です。クレジットカードやブランドデビットカード、あるいはブランドプリベイトカードなどが該当します。

一般のユーザーからすると『なにそれ?』という部分にはなってしまうかもしれません。」

エンドユーザーが直接触れるところを手掛けている企業ではない、ということですね。

鈴木氏

「そうですね。目には見えない部分のサービスに強みがあります。

例えば、プロセッシングサービス、特に国内クレジットカード基幹システムのシェアやブランドデビットカードシステム開発実績・関連サービス提供のシェアは非常に高い状況です。」

まさに今の御社の広告コピーにある『ここにもいたのか』というお話になるというわけですね。御社の業務は裏方的な業務ということで、一般ユーザーにはあまり名前が知られることはないのかもしれませんが、その実、普段我々が触れているさまざまなサービスの裏側にはTIS製システムが使われている、というような。

鈴木氏

「一般的なTISのイメージと言えば、いわゆるSIer、システムを作って収めるシステムインテグレーションをやっている会社という認識かと思います。私も入社以前はそう思っていました。

しかし、最近は自分たちでプロダクトを作ってフロントに出ていったり、システムを開発したりするだけでなく、その前の業務課題を解決するコンサルティング部分からお客様にかかわるような業務にも進出しています。

その中で、私の役割は決済及び決済に関連する業界情報や各業界の有識者の方と会話し、こうした情報を集めて社内外に発信、共有していくことです。」

決済システムの現状と課題

TIS株式会社DXサービスコンサルティング部の鈴木剛氏2

現在、決済システムが世の中に出回りはじめて20~30年ほどになるかと思うのですが、その後DXという言葉がビジネス界でも浸透しはじめました。

決済とDXの歩みや現状について、どのような印象をお持ちですか?

鈴木氏

「私がEC決済の代行会社に初めて携わったのが、2002年~2003年頃でした。それ以降、ネットの決済はどちらかというとベンチャー主導で進んできたと思っています。

最初はクレジットカード決済のみだったものに、コンビニ決済が加わり、その後いわゆる◯◯Payみたいなものが加わってきました。『1つの決済会社と契約しておけば、ある程度の決済方法は全て使えますし、入金も一本化できますよ』という流れが生まれてきた形ですね。

特に、ネット上の決済の場合はそんな世界観が比較的早く出来上がっており、少しずつ進化してきて今に至っています。

ところが、店頭などでの対面決済の場合は、多くの決済手段に対応できるシステムが広がっていないというのが現状です。

ようやく最近では、政府が進めたキャッシュレス施策もあったので少しは広がりましたが、2~3年前まではコンビニとかスーパー、あるいは飲食店などに行くとレジに決済用の端末がいくつもおいてある、なんていう情景が当たり前で、ネットに比べてすごく遅れていました。

お客様の決済方法に合わせて、それぞれの端末で決済し、売上も別々に入金されるという状態は、業務の効率化には程遠いです。また、店頭でいくつもの端末を扱うのは、UI的にもあまりよろしくないなと思っていました。

それがごく最近になって、ようやくオールインワンで処理できるサービスが対面決済でも提供されはじめ、ネットに追いついてき始めたとは思います。ですが、特に対面決済ではDXの余地は非常に多く残されていると思います。」

「日本はDX後進国だ」という指摘がしばしばありますが、日本のキャッシュレス決済の状況は、世界と比較してまだまだ遅れているのでしょうか。

鈴木氏

「そうですね。日本では政府が『2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度にする』と目標を掲げており、2022年の段階で36%といい感じに目標に近づいてきてはいます。

しかし、例えば韓国。おそらく韓国がキャッシュレス決済の普及では世界一だと思うのですが、その数値は90%を越えています。中国でも80%越えです。アメリカはグッと下がって50数%ですが、それでも日本よりはかなり高い数値なんですよ。

そのあたりから考えても、日本はまだまだキャッシュレス拡大の余地はあるのではないかと思っています。」

確かに個人営業の飲食店などでは、今でも現金しか使えないようなお店はたくさんありますよね。

鈴木氏

「その背景は色々あると思うのですが、やはり手数料がかかるという点は、粗利が高くない飲食店などにとっては負担になってしまうのだと思います。」

最近はクレジットカードの手数料なども少しは安くなりましたが、それでも飲食店にとっては負担が大きいですよね。

手数料以外に考えられる課題はありますか?

鈴木氏

「例えば、韓国がこの分野で世界トップである背景には、政府のリーダーシップで行われたキャッシュレス推進の企画が功を奏したというのはあるかと思います。

韓国では『キャッシュレス決済を導入したら所得控除する』という実利のある施策がありました。あるいは、台湾などではキャッシュレス決済のレシートに宝くじの番号が書いてあって、2ヶ月に1回宝くじに参加できる。その当選金額もかなりの高額だったので導入が進んだなど、国主導の多種多様な仕掛けがあったのだと思います。

あとは韓国の場合は、それこそ一定以上の売上規模の店舗には、クレジットカード決済端末を設置することを義務化したということも大きいですね。一方、日本ではこうした取り組みは行われてきませんでした」

キャッシュレス決済の進んでいる国が国主導のトップダウンで行われているのですね。それに対して、日本ではネット決済もベンチャー主導で、政府主導ではなく草の根から広まったということが、現在のキャッシュレス決済の普及率の差を生んでいるということですか?

鈴木氏

「そうですね。ここ2~3年の間で、日本でも政府主導の機運も上がってはきています。

ただ、日本はやはり紙幣など現金の信頼感が高いということもあります。手数料のことも踏まえて、そこまで現場が必要性を感じていないということもあるでしょう。そこを突破できればキャシュレス化がさらに進むと思います。」

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この記事の執筆者

DXportal®運営チーム

DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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