TikTok規制法から学ぶ:米国VS中国のIT戦略と中小企業のSNS活用法

TikTok規制法から学ぶ:米国VS中国のIT戦略と中小企業のSNS活用法

世界中で爆発的な人気を誇る動画共有アプリ「TikTok」。しかし、アメリカでは国家安全保障上のリスクを理由に、運営会社である中国企業ByteDanceに対し、米国内事業の売却などを求める「TikTok規制法」が成立しました。

これは単なる一企業の問題ではありません。米中対立を背景に、IT分野における覇権争いが激化していることを象徴する出来事であり、世界的なIT戦略の潮流を読み解く上で重要な意味を持つのです。

本記事では、TikTok規制法を題材に、

  • 米国と中国のIT戦略の違い
  • 中小企業がSNSを活用する際の注意点
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためのヒント

について詳しく解説していきます。

TikTok規制法とは?何が問題視されているのか?

TikTok規制法とは?何が問題視されているのか?

「TikTok規制法」は、TikTokがユーザーから収集した膨大なデータが中国政府に渡り、国家安全保障上の脅威となる可能性を懸念して制定されました。正式名称は「外国敵対勢力に支配されたアプリより米国人を保護する法律」といい、2024年4月26日に成立した法律です。

この法律は、外国敵対勢力(foreign adversary)によって運営(支配)されるSNSを禁止するもので、特にTikTokについては条文で名指しし、中国資本下にある限りは米国での活動を許さないという強い姿勢を示しています。

具体的には、TikTokは270日以内(大統領の認定により90日間延長が可能)に、現在の運営会社であるByteDanceなどの中国企業から、外国敵対勢力と関係のない第三者へ売却されなければなりません。また、ByteDanceとの提携などもすべて解消する必要があります。

アメリカが問題視している点

  • 個人情報の流出リスク:位置情報、閲覧履歴、連絡先情報など、TikTokが収集するユーザーデータが中国政府に利用される可能性
  • 情報操作:TikTokのアルゴリズムが、中国政府によって操作され、世論誘導や偽情報拡散に利用される可能性
  • サイバー攻撃:TikTokが、中国政府によるサイバー攻撃に利用され、重要インフラへの攻撃や機密情報窃取に繋がる可能性

これらのリスクを重く見たアメリカ政府は、TikTokの米国内事業を中国企業から切り離すよう求めているのです。

TikTok側の動き

TikTokは、この法律がアメリカ合衆国憲法修正第1条の表現の自由に反するなどとして、違憲性を主張し、米国を相手に訴訟を開始しています。

このように、TikTok規制法は、米中のIT戦略、データセキュリティ、そして表現の自由といった重要な問題が絡み合った、複雑な様相を呈しています。1月20日のトランプ大統領就任後も、TikTok規制法に関連するニュースがいくつも出ており、今後の動向に注目する必要があります。

今回は、この事案を題材にしながら、そこから学べるSNSを利用する際の注意点やDX成功のためのヒントをひも解きます。

アメリカVS中国:IT戦略の対立

TikTok規制法は、米国と中国のIT戦略の違いを浮き彫りにしました。

  • アメリカ:自由主義経済を基盤としつつ、国家安全保障を重視する姿勢。GAFAをはじめとする巨大IT企業を育成しながらも、安全保障上のリスクに対しては厳格な規制を課す
  • 中国:国家主導でデジタル技術の開発・普及を推進。国内市場を保護しつつ、海外への進出も積極的に支援する。データの収集・活用に重点を置く

TikTok問題は、既存の米中の対立に加えて、この両国のIT戦略が衝突した結果とも言えるでしょう。

TikTok規制法にみる中小企業が知っておくべきリスク

「うちはTikTokを使っていないし、海外とも関係ないから大丈夫」

このニュースを見て、このように思っている中小企業の経営者の方もいるかもしれません。しかし、グローバル化が加速する現代において、海外のIT規制やデジタル化の波は、日本の中小企業にも大きな影響を与える可能性があります。

TikTok規制法は、まさにそのことを象徴する出来事です。TikTokを使っていなくとも、決して他人事ではいられない話なのです。

この法律は、一見するとTikTokという特定のアプリに関する規制のように見えますが、その背景には、データセキュリティ、プライバシー保護、そして国際的な政治・経済の動向が複雑に絡み合っています。

中小企業こそ、TikTok規制法から以下の点を学び、今後のビジネス戦略に活かす必要があります。抑えておくべきポイントは次の3つです。

  • グローバルな規制動向:海外で導入された規制は、日本にも波及する可能性がある
  • データセキュリティの重要性:顧客情報の保護は、企業の信頼に関わる重要な課題
  • デジタル化への対応:デジタル化はリスクとチャンスの両面を持つ
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