沖縄の絶景に囲まれた「タップホスピタリティラボ沖縄（以下：THL）」は、ホテル業界の未来を象徴するような、革新的な取り組みを展開する実証実験施設です。
この施設は、DX（デジタルトランスフォーメーション／以下：DX）を軸に、従来の観光・宿泊産業の体験を根底から変革し、生産性向上、経営の高度化、旅行客の利便性向上などを実現するための試みを行っており、その成功は他のホテル業界にも大きな影響を与えています。
DXは、単に最新技術を取り入れること以上の意味を持ちます。顧客の期待やニーズをデジタル化によって満たし、業界全体のサービス品質と効率の向上を実現すること。これは、ホテル業界以外の方にとっても、競争力を維持し成長するための重要なカギとなるでしょう。
そこでこの記事では、THLがどのようにしてこれらの革新を実現しているのか、そしてその取り組みがホテル業界、さらには地域経済にどのようなプラスの影響をもたらしているのかを深掘りしていきます。
目次
ホテル業界DXにおける「タップホスピタリティラボ沖縄」の役割
DX推進がビジネス界に浸透する中、ホテル業界もこの変革の波に乗り始めています。その先駆けとして注目されているのがTHLです。
THLは、ホテル専門のソリューションベンダー「タップ（本社：東京都）」が、2023年6月30日に沖縄県うるま市にある「沖縄IT津梁パーク」の敷地内に、日本初のDXで観光・宿泊産業の生産性向上を実現するための実証実験施設として開設しました。
沖縄県のリーディング産業である観光産業の要となる宿泊施設を、従来のホテル運営の枠を超え、デジタル技術を駆使して顧客体験を根本から刷新することを目指しています。
宿泊施設の生産性向上、人手不足問題の解決、顧客の利便性向上など、業界が抱える様々な課題を、DXテクノロジーの利活用により解決することは、沖縄県のみならず観光産業に携わる全ての企業にとって飛躍のための大きなカギとなるはずです。
ホテル業界におけるDX推進の役割
ホテル業界におけるDXの現状は、多様なデジタル技術の導入により、従来のサービス提供方法と顧客とのコミュニケーションが変化し始めた段階にあります。
オンライン予約システムや自動チェックイン機、アプリを通じたサービス提供などの普及はその一例です。
これらの技術は顧客体験を向上させるだけでなく、運営側の業務効率化とコスト削減にも貢献します。
このような取り組みが進んでいる一方で、ホテル業界におけるDX推進にはいくつかの課題も存在します。特に中小規模のホテルでは、デジタル化への投資コストや適応の難しさが挙げられるでしょう。
また、単に新しい技術を取り入れれば良いというものではなく、持続可能な運営を目指す上で、エネルギー効率の良い技術の導入や、地域社会との調和を図ることも今後の課題の1つです。
将来的には、ホテル業界におけるDXは、これまでのサービスの延長線上にある利便性の向上や効率化だけでなく、顧客の期待に応える新しいサービスモデルの創出をもたらすことが期待されます。
例えば、ビッグデータの分析を活用してパーソナライズされたサービスを提供したり、AIやロボット技術を利用したこれまでにない効率的な運営したり、あるいはバーチャルリアリティ（VR）や拡張現実（AR）を活用した新しい体験の提供などが、この分野の将来を形作る技術として注目されています。
このような背景の中、いち早く画期的なDX施策に取り組んでいるのがTHLです。THLの事例は、今後のホテル業界におけるDXを引っ張る先進的なモデルとして大きな意義を持っているのです。
ホテル業界のDXの課題に対する具体的な解決策を提供し、業界全体の変革を促しているTHLの取り組みを見ていきます。
THLとは
THLは、沖縄の美しい自然に囲まれた場所に位置し、ホテル業界におけるデジタルイノベーションの先駆けとして注目を集めている施設です。この施設は、最新のデジタル技術を駆使して、従来の宿泊施設の概念を超えた独自の宿泊体験を提供しています。
THLでは、単に顧客体験の向上を目指すだけでなく、ホテル業界における新しいサービスモデルの開発と実践にも力を入れているのです。
THLの存在は、ホテル業界におけるDXの具体的なモデルを示しており、技術革新と顧客中心のサービス設計を融合させることで、業界に新たな視点を提供しています。
ミッション：新しい宿泊体験の提供
THLが掲げるミッションは、DXを通じて、これまでとは一線を画す新しい宿泊体験を提供することです。
THLが目指す体験とは、単に多くの人にとって快適な滞在環境を整えるというだけではありません。予約の段階から、顧客が直面する可能性のある問題を予測し、事前に解決することに重点を置いています。
例えば、チェックインや部屋選びプロセスの簡素化、それぞれに合わせてカスタマイズされた滞在オプションの提供、またはデジタルコンシェルジュサービスなどにより、これまでの宿泊を超えた顧客体験を生み出そうとしています。
このミッションを叶えるために、デジタル技術を活用しているのです。
他にも、アプリを通じたインタラクティブなサービス提供や、AIを活用したパーソナライズされたサービスや情報の推薦なども含まれます。
同時に、顧客側の利点だけでなく、運営効率の最大化も目指しており、効率的な管理システムや自動化されたサービスプロセスを導入してコストを削減しています。こうした取り組みにより、無駄な人件費などを削減しつつ、サービス品質を高めているのです。
さらに、環境への配慮もTHLの重要な柱の1つです。エネルギー効率の高い設備の使用、廃棄物の削減、地域社会との持続可能な関係の構築など、環境に優しい宿泊体験の提供に力を入れています。
利益を追及するだけでなく、ホテルの周りの自然環境や地域社会との共存にも重きを置くことで、これまでの宿泊施設とは一線を画するホテルの未来像を模索することをミッションとしているのです。
目標：ホテル業界に新たな価値を創出
THLの目標は、革新的な技術を用いてホテル業界に新たな価値を創出することです。これは、ホテル運営のあり方を根本から見直し、業界全体のサービスと運営の質を向上させることを意味します。
この目標を達成するために、THLは顧客のニーズを深く理解し、それに応じたデジタルソリューションを開発し導入しています。
具体的には、ビッグデータの分析を活用して顧客行動を理解し、それにもとづいたサービスを設計すること。顧客とのコミュニケーションを強化するためのデジタルツールの導入や、よりパーソナライズされたサービス提供を目指すことなどが挙げられます。
また、施設内で実際にホテルとして運営されている『HOTEL THL』を通して、ホテルの新しいサービスの創出や新しい旅のスタイルの提案などの実証実験を行っています。
他にも、館内随所で利用されるロボットとの共生による障害者の自立支援など幅広い視点で、顧客体験の向上のために取り組んでいるのも大きな特徴です。
さらに、THLは高度観光人材の育成拠点としての役割も担っています。未来の観光をリードするホスピタリティサービス工学の視点を持った「ホテルエンジニア」の人材育成にも力を注ぎ、ホテル業界における新たなスタンダードを確立することを目指しているのです。
