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OMOの活用事例:小売店DXの可能性
フーマー・フレッシュ(中国)
OMO先進国と言われる中国。大手ECサイトのアリババは、オンラインとオフラインの融合したニューリテール戦略を提唱しており、それを体現した店舗として次世代型生鮮スーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」をオープンしました。
中国都市部で生活する顧客をターゲットとしたOMOの代表的な活用事例です。
フーマー・フレッシュでは店舗とオンラインの在庫がリアルタイムで同一管理されており、オンラインから注文が入るとすぐに店舗の売場スタッフが商品をピックアップする仕組みになっています。
半径3km圏内であれば30分以内に無料配送するというサービスが話題となり、日本でも大々的にニュース番組などで取り上げられました。
リアル店舗の店内は、従業員が商品をピックアップしやすいように通路が広く取られており、頭上にはピックアップされた商品がベルトで運ばれているという、店舗というよりも食品工場のような造りになっています。
「食品工場のようなスーパーマーケット」と聞くと顧客に敬遠されてしまいそうですが、フーマー・フレッシュはそれを逆手に取り、「食品工場で買い物ができる」という顧客体験をコンセプトに打ち出して、顧客サービスを展開しています。
ミニストップポケット
コンビニエンスストアチェーンとして有名なミニストップは、「コンビニの無人マイクロマーケット」という新スタイルのビジネスモデル「ミニストップポケット」を展開しています。
ミニストップポケットは、小型の商品棚とセルフレジをパッケージとした新たな販売形態で、オフィスや工場、病院やビジネスホテルなどを中心に導入が進んでいます。
オフィスビルや病院等が従来型のコンビニを誘致する場合、店舗オーナーや運営スタッフの確保が大きな課題となっていました。
しかし、ミニストップポケットの場合、オフィスや病院側は初期費用0円、ランニングコストも光熱費の負担だけで、24時間体制のコンビニ機能を利用することができます。
商品補充は代理店が請け負い、決済に関わる人手も不要なため、オフィスや病院側は最低限のコスト・人的負担で自社内にコンビニを設置することができ、従業員や来院者、利用客の利便性を高めることができるのです。
もちろん、ミニストップ側には効率的に自社商品の販売チャネルを増やせるというメリットがあり、ミニストップ側・受け入れ企業側・エンドユーザーと三方良しのビジネスモデルとなっています。
ビジョンメガネ
メガネ・コンタクトレンズ・補聴器を専門扱う小売チェーンとして、大阪に本社を構える株式会社ビジョンメガネ。
同社は、ブランドサイトと実店舗の融合を理想的な形で実現した事例です。
ビジョンメガネは、ブランドサイトを「実店舗来店のためのフック」として定義しています。
これだけだとO2Oマーケティングのように見えますが、実は違います。
ビジョンメガネの場合、ブランドサイトやアプリ上で、メガネのバーチャルな試着体験が行えるようになっているのです。
顧客は、まずオンラインでお気に入りのメガネを選んだ上で、Web上から来店予約を行う流れになっています。さらにビジョンメガネ独自の「マエストロカード」という顧客カードを作成してから来店すると、オンラインで選んだメガネに加えて、顧客に好みに合った商品を店舗側が用意しておいてくれます。このように、オンラインとオンラインの良い部分を見事に融合させた顧客体験を提供しています。
OMOの導入により同社は、店頭での商品購入率(成約率)が格段にアップ。さらに、予約システムの導入によってあらかじめ適切なスタッフ数を把握することが可能になり、店舗が人手不足にならないビジネスモデルを作り上げています。
まとめ
前後編の2回にわたって、小売店DXに有効なOMOマーケティングの手法について解説してまいりました。
OMOマーケティングは小売店のDXを進める上で、欠かすことはできません。
「顧客視点」が最も重要なカギとなるOMOマーケティング。顧客体験の向上を目指し、新たなビジネスモデルを確立していくことがこれからの世界では求められています。
今回の連載記事をきっかけに、OMOマーケティングについての理解を深めた上で、優秀なプロジェクトチームを立ち上げて、OMOに取り組んでください。