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不動産業界に足りないDX推進への課題
テレワークへの対応を始め、少しずつデジタル化の道を歩み始めている不動産業界ですが、他業界に比べてDX推進が遅れている背景には、前述の業界に根強く残るアナログ文化だけでなく、不動産業界が抱える様々な課題があります。
その中でも不動産業界が直面している主な課題は、以下の3点挙げられます。
- 変わらない業界の体質
- DXに関する知識や情報の不足
- DX人材の不足
変わらない業界の体質
不動産業界のDXを妨げる最大の要因は、先述したように良くも悪くも「昔からの慣習を大事にする」業界の体質そのものです。
実際に、古くからのやり方を続けている現在においても、一定の成果を上げられているが故に、「昔からの慣習は変えられない、変える必要がない」と経営陣も現場の従業員も信じているのです。
例えば、不動産会社間で資料のやり取りをする際は、現在でもFAXを用いる企業がほとんどです。
「売主や貸主に申込書を送る場合」や「銀行に住宅ローンの審査用紙を送る場合」などでも同様であり、対個人・対企業の区別はありません。
また、「追客の際はメールよりも電話をかけろ」、「効率よりも最初はとにかく量をこなせ」など、昔ながらの気合・根性論から抜け出せない企業も多いようです。
これらはほんの一例であり、DX推進に積極的な不動産会社がある一方で、これまで通りのアナログ的な考え方を変えられない企業がほとんどだというのが業界の実情です。
特に、中小規模の会社や「昔からある街の不動産屋さん」のような企業では、このアナログ文化への依存度が一層強くなっています。
こうした業界の体質そのものが変わらない、あるいは変わりづらいことこそが、不動産業界のDXが遅々として進まない最大の要因です。
DXに関する知識や情報の不足
DX推進を検討している企業であっても、「前例が少なく、何から始めたら良いかすら分からない」という場合もあり、特に中小の不動産会社経営者にとっては共通の悩みでしょう。
実際、現時点ですでにDX推進に取り組んでいる不動産会社は、大手や外資系企業がほとんどです。
そもそも大手や外資のDX導入事例を学ぶ機会は限られており、仮に学んだとしても事例となる企業規模が大きいため、「かけられる予算がまるで違うため、参考にならない」と感じる経営者も多いのでしょう。
そのため、不動産業界ではDXやデジタル化推進について、しばしば次のような悩みが聞かれます。
- そもそもどんなメリットがあるかピンとこない
- 外注を検討したいが、選び方や基準がわからない
- 予算をかけただけの成果があるのか不安
DXを推進するには、それ相応の費用と時間が必要です。いざ、取り組むのにしても「うまくいかなかったら……」と考えるとなかなか踏み出せないこともあるでしょう。
そのため、まずはDXのメリットをしっかりと理解した上で、どのように課題を見つけ出し、それを解決していくのかといったDXの基本を学ぶことが重要です。
中小の不動産会社にまず求められるDX推進の第一歩は、闇雲にツールを導入することではなく、基本を学ぶことだと言えます。
DX人材の不足
不動産業界に限らず、業界を問わず多くの企業が感じている課題として、社内のDX人材不足があります。
いざDXに取り組もうと思っても、なかなか適した人材を確保できないという事は、残念ながら珍しくありません。
DX推進のためには、専門の知見や経験を有する企業と協業することも重要ですが、外注先に丸投げするようなやり方では満足いく成果を得ることはできません。
最低限の知識やスキルを持ったDX人材が、少なくとも社内に1人必要だと言われています。
専門的な分野は外注するとしても、DX推進のイニシアティブは社内で取ることが理想的です。
DX推進の成否を分ける重要なポイントであるため、社内でDX推進を中心的に進められる適切な人材の確保は、DX推進を目指す企業の経営者が責任を持って行う必要があります。
そのためには、まずは経営者自身がDXについてしっかりと学び、どのような人材が必要なのかを明確にする必要があります。
その上で必要に応じて、新しい人材の採用や育成を行うことが求められます。
企業としてのより良い未来を掴むために、今こそ経営者自身の覚悟が不可欠なのです。
まとめ
「不動産DX」と題してお送りする本シリーズの第1回目として、現在の不動産業界DXの進行度合いと課題について解説しました。
不動産業界のDXは、他業界に比して遅れています。そして、この遅れはこのまま放置しておいて良い問題ではありません。
「今がいいからとりあえずは問題ない」という発想ではなく、先行きに危機感を持ちながら日々の業務に向き合う姿勢は、目まぐるしく変化する現代社会のビジネスでは必須です。
社会が急速にデジタル化している中、いつまでも従来型のスタイルで現状維持ができると考えているとしたら、それはあまりにも楽観的すぎると言わざるを得ません。
大手や外資企業を始め、いち早くDXに取り組んでいる企業にこれ以上遅れをとらないためにも、早急にDX推進を検討することが求められます。
もちろん、DX推進にはそれ相応の痛みが伴います。ツールの導入などにコストがかかるだけでなく、新しいシステムに切り替える際には人的なリソースも割かれます。慣れ親しんだ仕組みを変更することで、混乱が生じるリスクもあるでしょう。DX推進に着手しても、一時的に売上や利益が減少するリスクもゼロではありません。
しかし、それらの課題を乗り越えた先にしか、真のDXは成しえないのです。
次回は、DXが不動産業界にもたらすメリットと、期待されるソリューションについて更に詳しく解説してまいります。
なぜコストや人的リソースを割いてまで、DX推進をするべきなのかを理解するためにも、ぜひご覧ください。