DXportal - 【印刷業界のDX事例】紙媒体が衰退する時代における印刷業の生き残り戦略

【印刷業界のDX事例】紙媒体が衰退する時代における印刷業の生き残り戦略

【印刷業界のDX事例】紙媒体の衰退における印刷業の生き残り戦略

DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)の前段階であるデジタイゼーション(Digitization)により、以前は紙で管理されていた様々な情報のデジタル化が進んでいます。

さらに、現代の社会課題を解決するためのSDGs(サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ:持続可能な開発目標/以下:SDGs)への取り組みの一環でもあるペーパーレス化の推進により、紙の消費は減少しています。

このような紙媒体の衰退を予感させる事態の影響を如実に受けているのが印刷業界です。

今回は、紙媒体衰退の影響を打破するために印刷会社が行ったDX事例を2つ紹介します。生き残りのために、自社の変革に取り組んだ印刷会社の戦略を参考にしてください。

紙媒体の印刷業は斜陽産業なのか

紙媒体の印刷業は斜陽産業なのか
参考:経済産業省「工業統計調査」

グーテンベルクが活版印刷を発明してから500年以上経った現在でも、紙の印刷物は時間や距離を超えて情報を伝える大きな役割を担っています。しかし、インターネットの普及によりその役割はデジタルメディアへと移行しつつあります。

経産省が行った「工業統計調査」によると、日本の印刷業の製造品出荷額は20年程度の間に約40%も減少していることからも、紙媒体の衰退傾向は明らかです。

印刷業は、関連企業も含めて20年以上前から斜陽産業と化していたのです。

印刷業界の現状

印刷業界の現状

印刷物は身近に溢れているのに、印刷業界が斜陽産業化しているのは前述した「紙媒体の衰退」の影響が原因です。

印刷自体は紙以外のもの(金属、プラスチックなど)でも行われますが、紙と比べると少なく、紙の割合が非常に多いため。印刷業界は紙媒体の衰退の影響を受けざるを得ません。

紙媒体の衰退について正しく理解するためには、次の3つのポイントに注目する必要があります。

  1. 加速する印刷物のデジタル化への移行
  2. 印刷市場の寡占化
  3. SDGsへの取り組みとしてのペーパーレス化の浸透

1.加速する印刷物のデジタル化への移行

新聞や雑誌などの出版物は「電子書籍化」が進み、大型ポスターは「デジタルサイネージ」へと代わり、小売店の値札までもがデジタル化しています。今後も、様々な分野で印刷物のデジタル化が進行していくでしょう。

2.印刷業界市場の寡占化

印刷業界の市場は、最大手である大日本印刷と凸版印刷の2社が売上占有率6割に達するほどの寡占状態にあり、中小企業が対抗するのは困難な状況です。一般に、競争が発生しにくい業界は衰退が進行する傾向が見られますが、印刷業界においてはこの寡占状態が常態化しています。

3.SDGsへの取り組みとしてのペーパーレス化の浸透

近年、世界的に注目されているSDGsに取り組むことは企業イメージの向上につながり、「新たな人材確保」「優良顧客の創出」「信頼度の向上」など企業としても多くのメリットが得られます。さらに環境保護の観点からも、ペーパーレス化を採用する企業が増加しており、紙の需要は今後も減少し続けるでしょう。

求められる新しいビジネスモデル

求められる新しいビジネスモデル

このように、従来型の紙媒体の商品群は、デジタルメディアへの移行やペーパーレス化の進行により、需要が減り続けているのが現状です。デジタル技術の革新的な進歩は印刷業界、特に中小企業にとっては大きな逆風となっています。

しかし、その一方でデジタル技術は印刷業界に新たなビジネスチャンスをもたらしました。

紙媒体の需要を著しく低下させ、印刷業界を斜陽産業に追い込んだデジタル技術が生み出した新しいユーザーニーズや新たなビジネスモデルが、奇しくも印刷業界に恩恵をもたらす実例が出てきています。

まさに、DXによる新たな価値の創出です。

DXを進める印刷業界の事例2選

DXを進める印刷業界の2事例

今回は、DXによるビジネスモデルの創出に成功した2社の印刷会社の事例を紹介します。

両社は 創業80年以上の老舗ですが、長年培った商品・サービスの個性や経営理念を活かしながら、最新技術の導入により、時代の変化へ対応して見事新たなビジネスモデルを創出しました。

DXの成功事例としてぜひ参考にしてください。

【事例①株式会社マツモト】紙をデジタルに変えた価値転換

株式会社マツモト/紙をデジタルに変えた価値転換
出典:株式会社マツモト公式ホームページ

「株式会社マツモト」は卒業アルバムの制作がメイン事業の印刷会社です。

コロナ禍の影響による学校行事の中止などは、卒業アルバム制作事業にも想定外の困難をもたらしました。

しかし、7,000校以上のアルバムの制作実績とノウハウをもち、 業界のオピニオンリーダーでもある株式会社マツモトは、すでにAIによるレイアウトの自動化や自動製本工場の稼働など、製造工程のオートメーション化に力を入れていました。

同業他社に先駆け「アルバム制作のフルデジタル化」を完了させていたため、コロナ禍においても、「圧倒的なコストパフォーマンス」と「思い出の『旬』を逃さない短納期」を実現することができました。結果として、同社は予測不可能だったパンデミックの中でも、卒業アルバムを数多く受注し続けることに成功しました。

さらに、デジタル技術を使って、アルバムのデザインをオーダーメイド対応可能とすることで、顧客の要望に合わせた商品のリッチ化の需要も掘り起こしました。

これにより、今までのような画一的な「いかにも卒業アルバム」といったデザインだけでなく、学校ごと、クラスごとに好みのデザインを選択できるようになりました。

印刷におけるデジタル化の役割は、新たに「印刷物をどのような形で受け取るか」の選択肢を提供する形で今後も進化し続けて行くでしょう。

紙媒体の需要が低下している中においても、卒業アルバムなど「思い出」を形にする印刷物の需要は依然としてあります。株式会社マツモトの新たな取り組みは、最新のデジタル技術を取り入れることで作業の効率化が可能になるだけでなく、紙媒体にしかできない「物理的に取得ができるという体験」をメインに希求することにより、印刷業が今後も十分にビジネスとして成立することを証明しています。

他にも、卒業アルバム作成においては、「ブロックチェーンのようなIT技術と組み合わせたDX化により、デジタルネイティブの世代の生徒たちが直接サイトにアクセスし、各々好みのデザインを選べるようにする」など、新たなアイディアが印刷業界の中で生まれています。デジタル技術を活用して、「印刷物をどのような形で受け取るか」の選択肢を多様化させていくことは、印刷業界における新たなる価値創出の鍵となるでしょう。

【事例②大洞印刷株式会社】2つの意識改革

大洞印刷/2つの意識改革
出典:大洞印刷公式ホームページ

「大洞印刷、営業やめます!」

顧客に向けて自社の活動やサービスを伝える情報誌「Winformation」において、大胆な宣言を行った大洞印刷株式会社。

この宣言には、未来を切り開くための決意が込められていました。

大洞印刷株式会社のDX実装に向けたターニングポイントは大きく二つ。

一つ目は「社内インフラの整備」として行った2004年の特殊印刷分野への参入です。

同社はドイツでの市場視察を行った際に、「印刷物をどのように使い、付加価値を提供するか」というマーケティング視点を学びました。その経験から、「特殊印刷を商業印刷に使う」という当時はまだどこも実現していなかった、販促品のノベルティやキャラクターグッズなどへの技術の応用に注力しました。

二つ目は2015年に「営業の意識改革」として行った「カスタマーサポートとスマーケティング(セールスとマーケティングを組み合わせた同社の造語)」による営業改革の推進です。

「カスタマーサポート」では、従来の足で稼ぐ営業スタイルを刷新し、インサイドセールス部門としてバックオフィスから営業、印刷の現場まで社内システムをクラウドに完全移行

商談や校正などの作業を、必ずしも対面で行わなくてもよい仕組みを確立させ、ビジネスプロセスをシンプル化し、顧客への提案を含めた作業効率化を図りました。

さらに、従来はなかった印刷物の付加価値を模索し、新しいビジネスやサービスを創出する「スマーケティング部」を新設。

最新のデジタル印刷機を活用した新しい印刷物の提供からさらに一歩踏み込み、その印刷物を使ってどのようなプロモーションができるのか、顧客にマーケティング施策全体を提案することにしたのです。

また、CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)も導入し、失注してしまった案件も含め、接点のあったすべての顧客のデータを蓄積。そのデータを分析して顧客の課題やニーズを可視化することにより、市場の動向予測もできるようになりました。

DXを推進することにより、社内の意識改革を実現し、それを社内外へ向けて発信したのが「大洞印刷、営業やめます!」宣言の真意だったのです。

まとめ

印刷業界の現状と2社のDXへの取り組みについて紹介をいたしました。

紙媒体からデジタルメディアの移行は今後ますます加速していきます。

しかし、紙とデジタルを相反するものとして捉えるのではなく、相互作用による新たな価値を創出する機会として見つめ直すことで、新たなビジネスを創出できる可能性があるのです。

その実現にはDXの推進が必須であり、印刷業界が斜陽産業から脱却する起爆剤になることは間違いないでしょう。

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