Microsoftは去る2021年6月24日(米国時間)に、世界一のシェアを誇るWindows10の後継にあたるWindows11を発表しました。
実際のリリースは2021年後半に予定されていますが、このタイミングで自社のPCをWindows10から11にアップグレードすべきか、悩んでいる企業も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新しいWindows11の特徴を確認するとともに、その注目すべき点を考えてみたいと思います。
Windows11へのアップデートをためらう企業は、参考としてみてください。
Windows11リリースの目的
かつてWindowsは95や98発売開始時のお祭り騒ぎのような深夜の騒動に象徴されるように、メジャーアップデートのたびに新バージョンのOSを有償で購入する必要があったものです。
しかし、Windows10が発表された時点でMicrosoftではWindowsを「サービス」と位置づけ、その機能とセキュリティは定期的に無償でアップデートされるようになり、ユーザーの利便性は格段に向上しました(「Windows as a Service(WaaS)」)。
これをして各種メディアでは「Windows10は最後のWindows」という報じられ方をして、それを信じていたユーザーも多いのではないでしょうか。
しかし、このタイミングでWindows11が発表されたということは、その報道自体が間違いであったのか、マイクロソフト社が方針を転換したのか真偽のほどは定かではありませんが、今後のWindowsも「新バージョン」としてリリースされるということでしょう。
しかし、Windows11も「最低システム要件を満たす」Windows10ユーザーには無償で提供され、Windowsを「サービス」と位置づけるMicrosoftの考え方は変わっていません。
つまりマイクロソフト社としてはWindows10の際に発表せれた、OSはサービスとして無償でアップデートするものであるという理念は継承しつつも、あくまでもサポートの際の説明が明確になるための記号として、11の名を冠してリリースしたというのが真相のようです。
Windows11の注目点
Windows10から11へのアップデートで改善された点は、次の6つのキーワードでその特徴でを表すことができます。
デザイン
Windows11では新しいユーザーインターフェイスが採用され、従来は左下にあったスタートボタン(Windowsのロゴ)がタスクバーの中央に寄せられました。
そしてタスクバーに表示されていた検索機能は、フローティング表示に変更されています。
タッチペンやボイス機能による操作も強化され、さらに操作性の向上に考慮したデザインが導入されました。
生産性
Windowsの強みであるマルチタスクでアプリを利用できる操作性はさらに強化。
オンライン会議ツールとメモ機能の同時利用など、複数アプリを利用する際にさらに便利になるよう、複数ウインドウを簡単に再配置できる機能が追加されました。
また、ドッキングステーションを利用した体験の改善も図られ、追加ディスプレイを接続した時などは、メイン以外のアプリが自動で外付けディスプレイ側に移動する機能などが追加されます。
接続製
新型コロナウイルスの蔓延により、PCのコミュニケーションツールとしての重要性が増し、マイクロソフト社でも、一般ユーザー向けMicrosoftアカウントで利用できるTeamsを提供するなど、時代の流れに呼応しています。
そうしたツール向けには、ホットキーを利用したユニバーサルミュートやアンミュート機能が実装。
Zoomなどのサードパーティソフトウェアベンダーのツールからも利用可能となりますが、Windowsのコミュニケーションツールとしては、今後Teamsへの統一が図られていくのでしょう。
ゲーミング
PCゲーミングの世界ではWindowsはスタンダードOSとして認知されていますが、そうした傾向はWindows11でますます加速します。
ゲーム周りの機能強化として、DierctX12 UltimateのサポートやDirectStorageのサポートなどが行われ、ゲーム起動時間の短縮が可能となるほか、以前から提供されてきたXbox Game PassやHDRサポートなども引き続き提供されます。
情報へのアクセス
デスクトップからの直接検索機能はWindows11からはフローティング表示になり、より操作性が向上。
タブレットなどでは画面左側からスワイプすることでウィジェットを呼び出すことで、スマートフォンのようなより直感的な操作が可能となっています。
さらにWebブラウザの性能強化も今回の注目ポイントの1つで、Chromiumをベースとした各種ブラウザ(Google Chrome、Microsoft Edge、Operaなど)が高速化されるという話です。
ストア機能
UWP(Universal Windows Platform)を配信するプラットフォームとして設計されたWindows10のアプリストア「Microsoft Store」ですが、開発者がUWPへの移行をしなかったということもあり、商業的にあまり成功していたとはいえません。
それを受けたWindows11のストア機能では、次のような思い切った施策を取りました。
- Win32アプリの標準サポート:ソフトウェアベンダーにとってMicrosoft Storeを利用するハードルが下がる
- ソフトウェアベンダー独自の決済システムを許可:Microsoft Store利用時の手数料は元々低いレートに抑えられましたが、Windows11ではベンダーが自社の決済プラットフォームを利用することを許可したため、マイクロソフト社へ手数料を支払うことなくMicrosoft Storeが利用でき、さらに多くの企業の参入が期待できる
- Windows11でAndroidアプリが利用可能:Windows11ではIntelの技術を使いAndroidアプリが動くようになり、さらにAmazonとの提携により「アマゾンストアにあるAndroidアプリ」がインストールできるなど、ブラウザとしての可能性が広がる
Windows11へのアップデートで懸念される問題点
こうした様々な点でWindows10よりも性能が向上し、ユーザーインターフェイスとしての利便性が高まったWindows11ですが、企業として11へとアップデートする際にはやはり幾つかの懸念される問題点は残ります。
その最たるものはインストールの際のPCスペックの問題で、要求されるスペックが高いという点です。
Windows11を利用するためのハードウェア要件は、1GHz以上で動作する2コア以上の64ビットCPU、SoC(System on Chip)、4GB以上のメモリー、64GB以上のストレージ、DirectX12以降(WDDM2.0)のグラフィックカード、9インチ以上のディスプレイ。
これに加えて、OSのセキュリティ性を高めるためTPM 2.0が必須となっています。
今後マイクロソフト社のWindows11公式サイトにおいて、現在利用しているPCがWindows11が動作するための必要な要件を満たしているかどうかをチェックする、無料アプリがリリースされる予定ですが、テストバージョンの提供が7月中に始まるため、企業で利用しているアプリケーションなどの互換性は、この時点でテストしていくほうが良いかもしれません。
また、Windows10からのアップグレードが無償とはいっても、古い10では対象外となることもあります。
そのため、そうした古いバージョンのWindows10がインストールされたPCでは、一旦最新バージョンの10へアップデートした後、11へのアップグレードを行うという手順が必要です。
Windows10は2021年後半に機能更新のプログラム提供が予定されているため、多くの企業においては一旦その最新バージョンWindows10へのアップデートを行い、その後Windows11のテストを行った上での判断をするのが最善ではないでしょうか。
まとめ
2021年後半に正式リリースが予定されているWindows11の期待点と懸念点について、いくつかの項目にわたってご紹介していまいりました。
これまでのメジャーアップデートの時と同様、多くの企業にとっては即座にWindows11へのアップグレードは、現状あまりメリットを感じる事はできないかもしれません。
今後Microsoftからリリースされるテストプログラムなどを適切に利用して、2021年後半から2022年にかけて自社内でテスト。
IT管理者の負担のないタイミングでのアップグレードを検討するのが現実的なスケジュールでしょう。
Windows10のサポートが2025年10月14日に予定されているため、2023~2024年内には自社のPCもすべてWindows11へアップグレード、もしくは対応するPCへの買い替えを終了させる必要がありますので、そこから逆算したアップグレードスケジュールを立て、それに基づく対応が求められます。