目次
NFTアートを出品する
ウォレット(財布)とイーサリアム(お金)が準備できたら、OpenSeaにNFTアートを出品します。
MetaMaskと接続(コネクト)する
OpenSeaトップページにアクセスし、「Create」を押します。
ウォレットに接続する必要があるので、さきほど開設したMetaMaskを選択します。
MetaMaskのパスワードを入力して、「接続」→「署名」と順番にクリックすると、OpenSeaとウォレットのコネクトが完了します。
ちなみに、こうしたWeb3.0系のサービスでは、「ログイン」ではなく「コネクト(ウォレットの接続)」という用語が用いられています。
従来のサービスでログインするのと同じように、コネクトすることで自分のアカウントが紐付けられる仕組みです。
作品を出品する
ウォレットがコネクトできたら、実際にOpenSeaに出品します。
OpenSeaの場合、作品を1点ずつ独立した状態でアップロードして販売するのではなく、各クリエイターが「コレクション」というカテゴリーを作成して、その中に作品をアップしていく形が取られています。
まず、アカウントのメニューから「my collection」を選択します。
設定項目がたくさんありますが、出品のための入力が必須な項目は2点だけです。
- Logo image:コレクションのアイコンとなるロゴ画像
- Name:コレクション名
自分の「コレクション」の看板となるようなロゴ画像を選び、名前をつけましょう。
上記の2つ以外に、必ず押さえておくべき項目は「Creator Earnings」です。
NFT作品の購入者は、その作品を転売することができます。
唯一無二のオリジナルであることが証明可能なNFTであるからこそ、データ作品に資産価値が生まれ、それゆえコレクターの間で取引が発生するのです。
NFTの最大の特徴は、転売されるごとにクリエイターに対して利益の何%かが還元される仕組みになっていることです。
Creator Earningsはその還元率を設定する項目で、デフォルトは2.5%、最大で10%まで設定可能です。リアル作品で言うところの「印税」をクリエイター自身が決定できるような仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。
Creator Earningsをいくらにするかは、クリエイターのビジネスセンスが問われる部分です。
ちなみに、OpenSeaで作品を売れやすくする施策として、同じコレクションにアップロードする作品には、なるべく統一性を持たせた方が良いと言われています。
例えば「動物のコレクションなら動物のイラストだけに統一する」、「かわいい女の子のコレクションなら男性のイラストはアップしない」などです。
NFTに限らず、マーケティングの世界では、「雑多な要素を取り扱うより、一つのジャンルに特化した方が売れやすい」ということをデータが示しています。
NFTの世界では、自分の作品が売れるための施策もクリエイター次第です。
今後、NFTコレクションの運営を考えている方は、今回紹介したようなマーケティング手法も頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
なお、さらに詳しいNFTコレクションのマーケティングに関しては、後ほど解説します。
コレクションを作成したら作品をアップロードします。
トップページで「Create」を選択し、必要な情報を入力していきます。
作品のアップロードの際の、必須事項は作品(画像、動画、音声、3Dモデルなど)のアップロードと「Name」の設定のみです。
これらの他に、「Blockchain」という項目には注意が必要です。
Blockchainを簡単に説明すると「NFTの売り場」のようなもので、2022年7月時点では以下の4種類から選択できます。
- Ethereum(イーサリアム)
- Polygon(ポリゴン)
- Klaytn(クレイトン)
- Solana(ソラナ)
なお、1つの作品を複数のBlockchainをまたいで出品をする(複数のBlockchainを選択する)ことは出来ません。
出品数が圧倒的に多いのはEthereumですが、ガス代が他のチェーンに比べると高いという特徴があります。
そのため、NFT販売の経費を抑えるためにガス代の安いBlockchainを選ぶなど、ここもクリエイターが判断しなければならないポイントです。
とはいえ、より多くの人に作品をリーチさせたいのであればEthereumの一択でしょう。
少なくとも、NFTでの作品の販売経験・実績を積む段階では、ガス代を節約するよりも、より多くの人が集まるEthereumを利用するのがおすすめです。私もEthereumに出品しています。
Blockchainを選択して、画面最下部「Create」を押すと作品の登録が完了します。
しかし、まだ作品を登録しただけで出品はしていません。
作品の詳細ページに進み、「Sell」を押して出品の設定画面に進みます。
この画面で設定する項目は、以下の通りです。
- Type:販売形式(「Fixed Price(料金固定)」/「Timed Auction(オークション)」形式のいずれかを選択)
- Price:価格
- Duration:販売期間
上記の3項目をそれぞれ設定して、画面の最下部「Complete listing」を押すと、ついに出品完了です。
NFT販売のマーケティング
ついにNFT作品が市場に出たわけですが、当然ながら、単に出品しただけではなかなかコレクターの目に留まることはありません。
すでにある程度ファンがついているクリエイターでない限り、作者自らが動いてコレクターに自分の作品をみてもらう機会を作っていく必要があります。
作品を売るためには、SNSなどでのマーケティング(宣伝・集客)が必要です。
特にNFT関連の情報は、現在はTwitterに集中していますので、Twitterを有効活用したマーケティングが最もおすすめです。
例えば、Twitterを使ったマーケティング手法として以下のような方法が挙げられます。
- 「#NFT宣伝枠」を利用して宣伝する
- giveaway企画で認知を増やす
「#NFT宣伝枠」の利用
まず、初めに「#NFT宣伝枠」を利用しての宣伝です。
Twitterのハッシュタグ(#)で「#NFT宣伝枠」と検索すれば、該当ツイートがたくさん見つかります。
この宣伝枠ツイートのリプライで自分の作品をアピールすれば、コレクターの目に留まりやすくなります。
無料で自分の作品をアピールできますので、NFT作品を出品したらすぐに利用することをおすすめします。
「giveway」企画
もう1つの「giveaway」というのは、プレゼントのことです。
Twitterでgiveaway企画を実施し、応募者の中から抽選で作品を贈る相手を選びます。
giveaway企画の応募条件として、以下の3点を提示することが一般的です。
- いいね
- リツイート
- フォロー
giveawayはプレゼント企画なので直接的に利益を得ることはできませんが、一気にフォロワーが増える可能性があり、NFT作品の認知拡大にはもってこいの施策です。
私も、NFTの販売のためにgiveaway企画を実施したところ、それまではひと桁だったフォロワー数が、実施後に200人くらいまで一気に増えました。
作品コンセプトの統一
giveaway企画でTwitterのフォロワーが一気に増えたことで、私は「この絵には需要がある」と確信を持ち、このキャラクターを中心に据えたコレクションを展開することを決めました。
先述の通り、OpenSeaで作品を売れやすくする施策として、同じコレクションにアップロードする作品にはなるべく統一性を持たせた方が良いと言われています。
雑多な作風の作品を訴求するよりも、テーマを統一したコレクションとしたほうがよりユーザーに対する訴求力が上がり、作品の世界観自体にファンが付くことで、より売れやすくなるのです。
そこで、giveway企画でTwitterフォロワー数が急増したのを受け、私は改めてキャラクターのコンセプトを次のように定めました。
- キャラクター名「桃子」
- ポーズや表情は統一
- コスチュームを変更しつつ作品をリリースしていく
婦警、ナース、メイド…など、同じキャラクターがコスチュームを変更していくことで面白みを感じてもらえるようなコレクションを構想したのです。
キャラクター「桃子」のファンになってくれた人は、「様々なコスチュームの彼女のNFTを集めたい」という作品をコレクションしてくれるのではないかと考えました。
この考えも、先述の「コレクション内における作品のテイストは統一すべき」というマーケティング手法を踏襲しています。
次にリリースしたのが、婦警コスチュームバージョンです。
今度はgiveawayではなく、0.01ETH(約3,000円)という値段を設定して出品しました。
Twitterで「#nft買います」というタグをつけたツイート何件かにリプライを送ってアピールしたところ、数件目ですんなりと「お迎え頂く*」ことができました。
*「お迎え頂く」とはNFT界の専門用語で「お買い上げ頂く」という意味の俗語です。
パラダイムシフトを感じたNFT販売体験
NFT販売を通じて率直に感じたのは、時代のパラダイムシフトでした。
パラダイムシフトとは、「それまで当たり前だと思っていたことが劇的に変化する」ということを意味しますが、まさに自分の中で当たり前だと思っていたことが根本から覆されたような感覚でした。
NFTクリエイターの可能性
私は、今回実際に作品を出品してみて、「個人でもNFTにきちんと取り組めば、かなりの収益を得られるのではないか」という感触を得ました。
実際、個人クリエイターが運営するコレクションが、数十万〜百万円以上の規模で利益を上げているケースはすでに珍しくなくなってきています。
例として、著名な国内のNFTクリエイターを3名紹介します。どのクリエイターもNFT市場に参入してから数か月ですが、すでに大きな収益を挙げています。
アマネ・メイ(2022年1月デビューの子育てママNFTクリエイター):あまねめい/総取引額:9.8ETH(約225万円)
KAS(2021年9月デビューでメンコをモチーフにした作品を作るNFTクリエイター):Menko_JapaneseGirls/総取引額:4.9ETH(約112万円)
Ayaka(2022年1月にデビューした高校生NFTクリエイター):Teen’s collection SWEET/総取引額:2.1ETH(約48万円)
※上記3コレクションの総取引額とレートは2022年8月6日現在
参考図書:「NFT名鑑2022_5 月号 和風特集 (DAOだお文庫)」大海樹鈴 (著)
現時点では「NFTクリエイター」が一般的な職業として認知される段階には至っていませんが、これから市場が成長していく可能性が高いことを踏まえると、今後はさらに大きな収益を得られる環境が整っていくと考えられます。
クリエイターにとっての未来
これまで、クリエイターが収益を得る一般的な方法は、企業などのクライアントから案件を獲得する方法でした。
しかし、この方法で生み出された「作品」は、クライアントが自社のメディアや商品などに使用するために創作するものです。
クライアントの意向やコンセプトに沿った創作物を求められることも多く、そのためクリエイターが「本当に作りたい作品」ではない場合も少なくありません。
「自分の好きな作品で収益を得たい」、ひいては「自分の作品を人に届けることで、生計を立てていきたい」というのはクリエイターであれば誰しもが憧れることですが、このようなビジネスモデルを成立させることは非常に困難でした。
一定数のファンがいるごく限られたイラストレーターや画家でも無い限り、ほぼ実現不可能だったといっても過言ではないでしょう。
しかし、NFTの登場によって状況は一変しました。
NFTを利用した収益化の方法では、自分の好きなように作品を創作して収益化できます。
もちろん、需要のリサーチやマーケティングなど創作以外の部分でも努力が必要にはなりますが、この喜びは何ものにも代え難いと言って良いでしょう。
「自分の好きなように作品を創り上げ、それで利益を得られる可能性がある」
クリエイターにとってこれほど魅力的な話はなく、それこそが私を含め多くのクリエイターがNFTの世界に魅入られる理由なのではないでしょうか。
さいごに
NFTの歴史や一般層への浸透度はまだ浅く、まだまだ発展途上です。そのため、また今後も間違いなく様々なパラダイムシフトが起きるでしょう。
現在は生まれたばかりの市場であるため、NFTクリエイターとして活動していく上でのノウハウも確立されておらず、業界自体も曖昧模糊(あいまいもこ)とした状態です。
そのため、市場への参入は増え続けているものの、社会全体で見ればまだまだ一部に留まっています。
しかし、全ての状況が整った後から始めたのでは既に遅いかもしれません。
Web3.0、そしてNFTという新たな開発分野だからこそ、自ら現場に飛び込み身をもって体験しながら時代の変化を楽しむことが、新しい「作品」を創出する「クリエイター」らしい思考とも言えるのではないでしょうか。
【Web3.0体験記】第1弾