デジタル資産(売買可能なデータ単位)に唯一無二の価値を与えるNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン/以下:NFT)。
本特集では、NFTに焦点を当ててその基礎知識から具体的な事例までをまとめてご紹介します。後編となる今回は、「NFTの将来性と実際の事業例」について解説しながら、DXにおけるNFT活用の意義を考察していきます。
>>【DXトレンドワード/NFT:前編】理解してる?ネット上に持つ唯一無二のデジタル資産
NFTはデジタル資産のコレクションや投機の対象としてだけではなく、より大きな可能性を秘めています。実際に、DXを推進している企業においては「新世代のデジタル技術」として注目を集め始めているのです。
既存のオンライン市場は、巨大なプラットフォームを運営する大手企業の独占になりがちでした。しかし、中央集権的な仕組みを必要としない、分散管理体のブロックチェーン技術を応用したNFTは、中小企業に大きな飛躍の機会を与えてくれる技術と言えるでしょう。
今後、さらなる市場拡大が見込まれるNFTへの理解を深めて、自社に効果的に導入するためにはどのような準備が必要かを探ってみてください。
目次
DX推進におけるNFTの将来性
NFTについては、デジタルアートを始めとするデジタル資産が驚くような値段で売買されたというニュースなどを目にすることが多いため、「投機ブーム」というイメージを持っている方は少なくありません。しかし、NFTの本質は「デジタル資産の価値を保存すること」です。
その本質を見出している企業を中心に、NFT市場は次のステージに向けて新たな商品やサービスを展開し始めています。
NFTが起こすイノベーションがどのようにDX推進につながるかをみていきましょう。
無形のデジタル資産への投資
NFTはデジタル資産に価値を付けられる技術であるため、今までの物理的な投資ではなく、新たに生まれた無形のデジタル資産への投資が注目され始めています。
例えば、NFT市場で売買する土地や建物などの不動産が挙げられます。
具体的な事例として、ブロックチェーン技術を活用したNFTゲームである「The Sandbox」は、仮想空間内において土地や建物などを販売しています。
従来のゲームであれば、購入したキャラクター、アイテム、土地等はゲーム内の通貨により、ゲーム内でしか売買出来ませんでした。
しかし、Sandboxで購入した土地などは、NFTとして外部のマーケットプレイスに出品して販売ができます。
更に購入した土地は売買だけではなく、実際に貸し出して賃貸収入を得ることも可能です。つまり、現実世界の土地と同じように売買や賃貸ができるのです。
先見の明がある世界の個人投資家や投資会社の間では、デジタルな土地への投資ブームが既に始まっており、2021年においては1週間で約100億円もの土地が売買されるほど注目が集まっています。
土地などインフラが整った次には、建築物や家具のデザイン制作・広告・IPビジネス販売など新たな産業も生まれるでしょう。
この先の未来に、当たり前のように仮想空間内で生活や経済活動を送る日が到来した場合、このデジタルな土地の価値は現実世界の土地と同等の存在になるかもしれません。
NFTが産み出す新たな市場
現在、NFT市場はデジタル特有のデータのコレクティブな取引が中心となっています。
しかし、今後は既存の市場のNFT化が加速するでしょう。
例えば、今まで物理的にアナログで管理していた不動産の権利書や、ダイヤモンドの真贋鑑定書などもNFT技術を活用することによって、所有権の所在やその価値を保証できるようになると考えられています。
これにより、従来の煩雑な管理や手続きから解放され、権利や資産の売買が容易になります。
さらに技術が発展していけば、権利書や真贋鑑定に限らず、リアルの物理的な『モノ』の保証がデジタルで行われ、ネットワーク上ではプラットフォームを問わないシームレスな売買も可能となるでしょう。
未来のNFTではあらゆる国家間、プラットフォーム間といった物理的・仮想的な壁だけでなく、デジタルとリアルの壁さえも飛び越えたデジタルデータ活用が可能となり、シームレスなデジタル市場が開拓されるのは間違いありません。
現実とメタバース(3次元の仮想空間)の世界が融合し、現実世界の公的手続きを仮想空間で行えるようになるなど、新たな社会が創造される未来はすぐそこにあります。
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