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変化が激しい時代における経理のあり方とは
最近では、対話型言語モデルであるテキスト生成AIが大きな話題を呼ぶなど、DX推進におけるAIの発達は大きな注目を集めています。
経理業務に関しても、AI-OCR(Artificial Intelligence – Optical Character Recognition:人工知能を活かした光学的文字認識処理)など、AIの発達により「経理業務そのものが必要なくなるのではないか」と一部では言われています。
そうしたテクノロジーの進化により、今後の経理部門はどう変化していくのでしょうか。
松岡氏のお考えをお伺いしてみました。
(松岡氏)
現時点で言えることは、「経理のやり方はテクノロジーの変化により大きく形を変えるけれど、人間でないと実施できないことはまだまだ多くある」ということです。
例えば、AI-OCRで請求書の処理をしたとします。
請求書に記載されている表面的なテキストは読み取れますが、表示されたテキストの内容にどのような意味があるかまでは、正確に認識できません。
例えば、どの部門が負担するのか、どのプロジェクトで使うのかといったことは請求書には書いていませんので、事業理解がないと正確に判断できないのです。
また、固定資産や投資有価証券の減損判定などにおいては、将来予測から得られた情報をもとに減損判定をする必要があります。
こうした将来予測は数字で計れる定量情報にくわえて、数値に置き換えることが困難な定性情報も多く含まれており、事業知識に基づく判断が必要となります。
また、現在のAI-OCRの性能は完全とは言えず、読み取りや変換のミスはまだまだある状態ですので、最後には人の目でのチェックが必要になります。
近年の会計基準は複雑になっています。
テクノロジーの進化を恐れるのではなく、むしろ任せられる部分はAI等に任せてしまい、人にしか出来ない業務に集中するなど、うまくテクノロジーを活用する思考が必要になるでしょう。
人とテクノロジーの融合、あるいは共存というテーマは、内閣府の提示する「Society5.0」構想などでも明示されていますが、それは経理部門のDXを進める上でも重要なのは間違いないようです。
では、松岡氏が考える人でなければ出来ない業務とは、具体的にはどのようなことを指しているのでしょう。
(松岡氏)
経理は新しいテクノロジーを積極的に活用し、単純な作業から脱却して今後いかに付加価値を生む存在になれるかが大事になると思います。
まず付加価値業務として、費用削減活動が考えられるでしょう。
継続改善により経理プロセスのコスト引き下げを追求するなど、企業全体の費用削減に寄与する提案は、経理部門が行う仕事として意味があります。
そうした積極的な提案をすることで、経営企画といった部門が実施する活動に幅を広げていくこともできるでしょう。
例えば当社はクラウド会計を売っている会社ですが、顧客に近い存在ということもあり、カスタマーサクセス部門、営業・マーケティング部門、広報部門、開発部門といった多くの部門と連携し、経理の枠組みを超えた活動を積極的に行っています。
DX推進前で経理作業に追われていた時期からしたら考えられませんが、今後もDX推進によりこのような付加価値を生めるよう、日々取り組んでいきます。
どれだけAIが進歩したとしても、人にしかできない領域が存在すること。これからも経理部門自体がなくなることはなく、むしろ付加価値を生み出す存在になり得るということは、DXが進んだ先の未来を不安視している経理担当者を勇気づけてくれる言葉ではないでしょうか。
松岡氏自身が同社内部のDX推進で留まることなく、その経験を新たに顧客先企業の経理DXに活かしているということは、まさに経理DXが生み出す「付加価値」を体現してくれていると言えます。
最後に、常にアクティブに動き続け、大きな成果を積み重ねてきた松岡氏に、経理部門がより付加価値を生み出せる部門に生まれ変わるために、必要となる「モノ」について訊ねてみました。
(松岡氏)
より変化が激しくなるこれからの時代を考えた場合、経理は「好奇心」を持ち続ける姿勢が大切だと考えます。
「攻めのDX」「攻めの経理」を実現するためには、好奇心をもって、より主体性のある行動が必要になってくるでしょう。
例えば私は、常々ChatGPTやCopilot(コパイロット)のような対話式AIなど新しい技術を活用して、経理業務を効率化できないかなど、常に新しいアンテナを高く張り、実験的な取り組みを自ら進んでやってみるようにしています。
もちろん、実際は上手くいかないことも多々ありますが(笑)
好奇心に駆られ主体的に行動を続けることで、時代の変化に左右されない真に価値ある経理パーソンになれるのではないのでしょうか。
まとめ
最前線のDXソリューションを提供する株式会社マネーフォワードの松岡氏をお迎えし、2回にわたり経理のDXに関するお話を伺いました。
同社が提供しているソリューションは、DXを推進させるための、クラウド会計やBPOなど、従来の経理をアップデートするサービスばかりです。
経理DXにおいて業界のトップランナーである同社の、経理部門の責任者と聞くと、「これまでのビジネスの常識には当てはまらない型破りな人物」と想像してしまいます。
もちろん、豊富な経験と知見に裏打ちされた実行力と飽くなき探求心は、同氏がこの分野のエキスパートであることを証明しています。
その一方で、インタビューの中でおっしゃっていた経理DXの推進方法や経理のあり方は、決して奇をてらったものではありませんでした。
それどころか、現場に寄り添い相手目線で物事を考えるなど、DX推進だけでなく仕事を進めるうえで普遍的に重要なことばかりです。
このことは、DX推進は限られた才能のある人にのみできる特別なことではなく、基礎的で地道なことを積み重ねていくことさえできれば、実現し得る現実的な目標だということを示してくれています。
また松岡氏は安易にソリューションサービスに飛びつくのではなく、実際に現場を見たうえで、何が課題で何を解決したいのか、現場のメンバーと対話を続けながら、ボトルネックとなる部分を数年単位で取り組む胆力も必要であるとも説いていました。
これからの時代はテクノロジーがより進化するとともに、経理業務の自動化も必然的に進んで行きます。
その中で経理の存在価値を示すためには、人ならではの「相手への思いやりや相手に寄り添う気持ち」を含めて、AIにはできない価値の提供が大切になるのではないでしょうか。
貴社におかれましても、時代の変化に焦るばかりではなく、まずは身近なところから着実に改善を続け、価値のある経理になれるよう取り組んでみてください。
株式会社マネーフォワード
お金を前へ。人生をもっと前へ。 設立:2012年5月 本社所在地:東京都港区芝浦 事業内容:PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供 >>株式会社マネーフォワード公式サイト |