度重なるシステム障害が発生し、2021年9月には金融庁から実質的にシステム運営を当局の管理下に置く業務改善命令を受けた、みずほ銀行とみずほファイナンシャルグループ(以下:みずほFG)。
しかし、その後トップの交代劇を経てもシステム障害などのエラーは止まらず、出口の見えないトンネルを進み続けています。
みずほ銀行とみずほFGの抱える問題は一体どこにあるのでしょう。
この難題解決のヒントは、実は経済産業省(以下:経産省)が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(以下:DXレポート)」で語られている「2025年の崖」問題にあります。
「レガシーシステムの刷新」という言葉だけに踊らされず、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)の本質を理解するためにも、このみずほ銀行とみずほFGの一連の騒動を対岸の火事とせず、真摯に受け止めひもとく必要があるのです。
目次
みずほシステム障害のあらまし
みずほ銀行とみずほFGの度重なるドタバタ劇は、どのように引き起こされ、また現状はどのような状態にあるのか。
まずは、その経緯を俯瞰してみるところから始めます。
トラブル多発からの業務改善命令
2021年2月、みずほ銀行ATMにカードや通帳が吸い込まれるトラブルが続発。それ以降7度にわたりシステム障害が起きました。
繰り返されるシステム障害により利用者の不安は高まっており、同グループのみならず、金融システムに対する不信感の広まりなど業界全体に悪影響を及ぼす可能性が危惧されています。
そこで金融庁はみずほ銀行、及び持株会社のみずほFGに対して、業務改善命令の発出を決定。
これは、システム運営を実質上当局が管理するという、異例の措置でした。
勘定系システムMINORI(みのり)
こうしたトラブル続出の原因は、みずほ銀行及びみずほFGの基幹システム「MINORI(みのり)」に問題があると考えられています。
MINORIはみずほの新たな勘定系システムとして位置付けられ、システム基盤から預金、外為管理まで、みずほのすべての礎ともいえるシステムです。
過去、2002年4月、2011年3月と2度にわたる大きなシステム障害を起こしたみずほ銀行・みずほFGは、今後このような事が起こらないよう新時代のDXに対応するために、2020年「MINORIプロジェクト」への取り組みを発表しました。
その本丸となるシステムがMINORIだったのです。
発表時点で、MINORIの導入によって次の4つのメリットがあるとされていました。
- メンテナンス性の向上
- 外部システムとの容易な連携
- 顧客管理と事務処理の効率化
- 安全性・安定性の向上
トップ交代
このように鳴り物入りで生まれたMINORIでしたが、蓋を開けてみると前出のように新たなトラブルが続発する結果となってしまいました。
金融庁の業務改善命令を受けた後もエラーは止まらないまま、2022年2月1日付けでみずほFGの社長が交代。
さらに、4月1日付けで会長、またみずほ銀行頭取も交代することが決まっています。
金融庁業務改善命令|4つの指摘
トップ交代劇の最中にもみずほのトラブルは止まらず、社会全体にとって看過できないほどの影響を与えています。
そもそも金融庁が業務改善命令で指摘した問題点は、次の4つです。
- リスクと専門性の軽視
- IT現場の実態軽視
- 顧客影響に対する感度の欠如、営業現場の実態軽視
- 言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢
この4つの指摘を踏まえた上で、現在のみずほ銀行及びみずほFGが抱えるシステム、そしてMINORIの問題点について次章で解説します。