【デジタル庁発】ライフイベント行政サービスは真に国民のためになるのか?

【デジタル庁発】ライフイベント行政サービスは真に国民のためになるのか?

日本のデジタル化推進と行政サービスの改革を目的として2021年に設立されたデジタル庁。そのデジタル庁から、行政サービスの未来を示す重要な計画が発表されました。

デジタル庁が2024年6月に発表した「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画」は、日本の行政サービスが大きく変革する可能性を秘めています。

この計画は、出生から死亡まで、人生の主要なライフイベントに関わる行政手続きをデジタル化し、国民の利便性を向上させることを目指しています。

ただし、このような大規模な変革を考える際には、良い面だけではなくボトルネックになる課題も見逃してはいけません。本記事では、この計画の概要を紹介しつつ、ユーザーの視点から見た実効性と課題を検証します。

果たして、この計画は真に国民のためになるのか、ご自身の視点からも考えてみてください。

国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画とは

「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画(国民向け行政サービスロードマップ)」は、日々の生活や人生の様々な出来事(ライフイベント)に関わる新たな行政サービスの一覧です。

国民の視点に立ち、生まれてから亡くなるまでの人生の重要な局面において、デジタル技術を活用してより便利で効率的な行政サービスを提供することを目指しています。

この計画の特徴は以下の通りです。

  • ユーザー中心の設計:国民の生活に即した11の主要なライフイベントに焦点を当て、各イベントにおける行政手続きの簡素化と効率化を図る
  • デジタル技術の活用:マイナンバーカードやオンラインサービスを積極的に活用し、従来の対面や紙ベースの手続きをデジタル化することで、利便性の向上を目指す
  • 段階的な導入:2024年度から2027年度にかけて、段階的にサービスを導入・拡充する計画
  • 省庁横断的な取り組み:従来の縦割り行政の壁を越えて、関係省庁が連携してサービスの向上に取り組む姿勢を示す
  • 透明性の確保:計画の進捗状況や今後の予定を公開することで、国民への説明責任を果たす

この計画は、制度、業務、システムの三位一体の改革を政府全体で取り組むことで、デジタルを活用した便利な行政サービスの実現を目指すものです。

ライフイベント別サービス計画の概要 

ライフイベント別サービス計画の概要 

国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画」は、具体的にどのような計画なのでしょうか。本章では、計画策定済みであるライフイベント別サービスの概要は次の通りです。

  • 出生・こども分野:出生届のオンライン提出や、予防接種・健診記録のデジタル管理など、子育て世代の負担軽減を目指す施策が盛り込まれている。2026年度以降には、出生証明書の受け取りや提出が不要になるなど、さらなる簡素化を計画
  • 引越し分野:転出・転入手続きのオンライン化や、マイナンバーカードを用いた各種住所変更手続きの簡素化が進められる2024年度には、転入時に必要な手続きを含めた完全オンライン化を目指す
  • 結婚・離婚分野:婚姻届・離婚届提出時の戸籍謄本の添付の省略や、マイナンバーカードと運転免許証の一体化による手続きの簡素化を計画。2025年度中にはウェブ会議での離婚和解・調停成立を可能にする制度の導入も予定されている
  • 医療・介護分野:マイナ保険証の基本化や、訪問看護でのオンライン資格確認の導入など、医療・介護サービスの利便性向上が図られている2025年度以降には、救急搬送時の傷病人情報連携も計画
  • 死亡分野:相続人による預貯金口座の確認簡易化や、死亡届と死亡診断書のオンライン提出の検討など、遺族の負担軽減を目指す。
  • 税・年金分野:確定申告の自動入力化や、年金関連手続きのオンライン化など、煩雑な手続きの簡素化が進められている。

デジタル庁の目的と思惑

デジタル庁の目的と思惑

デジタル庁の「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画」の背後には、単なる行政サービスの改善を超えた、より大きな構想が隠されているようです。

ここでは、デジタル庁の表向きの目的とともに、その裏に潜む思惑や描いている未来像について考察します。

デジタル庁の目的と効果

デジタル庁が「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画」を推進する目的は、行政サービスのデジタル化を通じて、国民生活の利便性向上と行政の効率化を同時に実現することにあります。

この計画には、以下のような具体的な目的と期待される効果があります。

行政手続きの簡素化と効率化

多くの行政手続きをオンラインで完結させることで、窓口での待ち時間や書類作成の手間を大幅に削減されるでしょう。

これにより、国民の時間的・物理的負担を軽減するとともに、行政側の業務効率も向上することが期待できます。

ワンストップサービスの実現

マイナンバーカードを活用したワンストップサービスにより、複数の手続きを一度に済ませることも可能になるでしょう。

これは、特に引越しや結婚など、複数の手続きが必要なライフイベントにおいて大きな効果を発揮すると期待されます。

特定層へのきめ細やかなサポート

子育て世代や高齢者など、行政サービスを頻繁に利用する層に対しては、手続きの負担軽減に加え、よりきめ細やかなサポートを提供する必要があります。

例えば、子育て世代には、保育施設の案内や育児に関する相談窓口へのアクセスを容易にするためのオンラインサービスを提供したり、高齢者には、デジタル機器の操作方法に関するサポートや、自宅への訪問サポートなどを提供したりすることが考えられます。

これにより、社会全体の生産性向上や生活の質の改善につながることが期待できます。

アクセシビリティの向上

オンライン申請の拡大により、地理的な制約や身体的な制限がある方々にとって、行政サービスへのアクセスが容易になります。

これは、行政サービスの公平性と包括性を高めることにつながるのでしょう。

デジタル庁の思惑と目指す未来像

デジタル庁が推進するこの計画は、単なる行政サービスのデジタル化にとどまらず、日本社会全体の変革を見据えた壮大なビジョンを内包していると考えられます。

その背景には、現代社会が直面する様々な課題への対応と、未来に向けた新たな社会システムの構築という大きな野心が垣間見えます。

以下に、デジタル庁が描いていると思われる未来像とその思惑を考察してみます。

デジタル社会の実現

この計画を通じて、デジタル庁は日本社会全体のデジタル化を加速させ、より効率的で革新的な社会の実現を目指しているようです。

行政サービスのデジタル化は、民間企業にとってもデジタル化の重要性を認識させる契機となり、結果として社会全体のDX推進につながる可能性があります。

例えば、行政手続きのオンライン化が進めば、企業も顧客とのやり取りをオンライン化する動機が高まるでしょう。

国際競争力の向上

行政のデジタル化は、国家の効率性と透明性を高めます。効率的な行政システムは、企業活動をサポートし、海外からの投資を呼び込む上で重要な要素となるでしょう。

また、透明性の向上は国際的な信頼度を高め、外交や経済交渉において有利に働く可能性があります。これらの要因が相まって、日本の国際的な競争力向上につながると考えられます。

デジタル庁は、この計画を通じて日本の国際的な地位を向上させ、海外からの投資や人材を惹きつける魅力的な国づくりを目指しているのではないでしょうか。

少子高齢化対策

行政手続きの簡素化は、特に子育て世代や高齢者の負担を軽減します。

例えば、子育て関連の手続きがオンラインで完結すれば、働く親の負担が減少し、仕事と育児の両立がしやすくなるでしょう。高齢者にとっても、複雑な手続きが簡素化されることで、社会参加の障壁が低くなるかもしれません。

これらの効果は、少子高齢化が進む日本社会において、出生率の向上や高齢者の活躍促進につながり、日本社会が抱える人口動態の課題に対応する一助となることが期待されるでしょう。

データ駆動型社会の構築

行政サービスのデジタル化は、大量のデータ収集を可能にします。

例えば、各種申請や利用状況のデータを分析することで、市民ニーズをより正確に把握できるようになるでしょう。

デジタル庁は、このデータを活用して、より精度の高い政策立案や社会課題の解決につなげる、データ駆動型の社会を構築することを目指していると考えられます。

これを有効に活用できれば、限られた資源をより効果的に配分し、社会全体の最適化を図ることができるでしょう。

災害に強い社会インフラの構築

デジタル化された行政サービスは、クラウド技術などを活用することで、災害時にも機能し続けられることが期待されます。

例えば、重要な行政データがクラウド上に保存されていれば、地域の庁舎が被災しても情報が失われることはありません。

また、オンラインシステムを通じて迅速に被災状況を把握し、適切な支援を行うことも可能になるでしょう。

デジタル庁は、この計画を通じて、災害に強い社会インフラを構築し、柔軟で回復力がある社会の実現を目指していると推測されます。

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