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デジタル改革はIT化と混同してはいけない
DXとは、正確には「Digital Transformation」の事であり、「Transformation」は「変容」を意味します。
つまり、DXの直訳は「デジタルによる変容」です。
デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容し革新していく事がDXの真の意味であって、デジタル改革を引き起こすことがDXの真の目的となります。
しかしIT化やIT活用というものは、ある種の業務やサービスなどを効率化・強化するためにデジタル技術やデータを活用するものであって、それ自体は手段の1つにしか過ぎません。
つまり、「DX=デジタル改革」は目的であり、「IT化」は手段という明確な違いがあるのです。
ITは機械をつなげ、デジタルは人をつなげる
「ITというのは機械をつなげるもの、デジタルというのは人をつなげるもの、という大きな違いがあり、これが重要なポイントです。」
オードリー氏はさらに次のようにつなげます。
「特にデジタル改革というのは、このITと混同させてはいけません。みなさんのお仕事は人に声を与え、声を持たなかった人に声を与えて参画を促し、一方的ではなく多方的な形で多くの人を巻き込むことです。」
デジタルとはなにか、そしてITとデジタルの違いを一言で表したオードリー氏。
台湾のデジタル政務大臣として新型コロナウイルスが蔓延した際に、世界に先駆けてマスクマップを開発するなどしてウイルスを水際で押し留めたのは、まさに台湾政府が市民を巻き込んでデジタルの力でDXを成功させた好例です。
DX、つまりデジタル改革のためには企業からユーザーに一方通行の情報やサービスの伝達が行われるだけでなく、双方向でユーザーのみならず企業を取り巻くステークホルダー、ひいては社会全体を巻き込んだアクションを起こさなければなりません。
つまり、性別や世代を越えて、人をつなぐことがデジタル改革なのです。
これに対して、IT化とは機械と機械をつなげシステムを効率化していくことです。様々なデータを電子化するだけでは、デジタイゼーションでしかなく、真の意味でのDXではありません。
台湾の政治家として、単に効率的なシステムを作り上げるだけではなく、人々の声を拾い上げより良い社会を作る。
そうした信念を持っているからこそ、オードリー氏は「私はデジタル担当大臣であってIT担当大臣ではありません。」と声を大にするのです。
DXとはIT活用ではなくデジタル改革である
DXという大きな目的を達成するためには、企業からの一方的なサービスや製品の提供ではなく、ユーザーのニーズを明確に汲み取り、よりユーザーサイドに寄り添った変革を行わなければ、それは単に独りよがりな企業戦略です。
ITというデジタルツールを活用して業務プロセスを効率化し、人々を巻き込んでデジタルの力でビジネス全体に改革を起こす。
それこそがDXの真の目的であり、デジタルによる改革です。
この2つの意味の違いを理解すれば、数多(あまた)ある情報の中から自社に適した情報をピックアップする際にも有益です。効率化するためにIT化したいのか、それとも目指しているのはDXなのか。それを整理した上で、必要な情報を探してみてください。
まとめ
ITとデジタル。
時に混同しがちな2つの用語について、台湾のデジタル政務大臣オードリー・タン氏の言葉を借りながらその意味と違いについて解説しました。
- ITとは機械と機械をつなぐもの
- デジタルとは人と人をつなぐもの
- そして、DXとはITを活用しデジタル改革を起こすもの
「私はデジタル担当大臣であってIT担当大臣ではありません。」というオードリー氏の発言は、こうした違いを日本企業に明確に理解して欲しいがために出たものであり、デジタルによって様々な改革を起こしてきた先駆者からの大いなるメッセージです。
このメッセージの意味をよく理解して、真のDX推進を成功へと導いてください。
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