大企業のマネでは進まない!中小企業のDX推進プラン【後編】

大企業のマネでは進まない!中小企業のDX推進プラン【後編】

中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)プラン・前編の記事では、経営者が持つべきマインドと従業員の規模別に取るべき策を紹介いたしました。

後編の記事では、中小企業の経営戦略における大切な考え方を4つの項目に分けて紹介してまいります。

  • IT化はDXを実現するためのプロセス
  • 中小企業のDXはスモールステップから始まる
  • コストをかけなくともDXは可能
  • やめることを決める

中小企業の経営者の方はDXを推進する際の参考にしていただき、自社の戦略に落とし込んでいってください。

IT化とDXの違い

IT化とDXの違い

DXを進める際に「IT化に取り組めばいい」と考えている経営者やスタッフは少なくありません。

IT化とは、企業の共有フォルダに入っているデータのクラウドへの移行、テレワーク環境の構築などが挙げられます。

これらは決して間違いではなく、紛れもなくDXを進めるにあたって必要な項目ですが、あくまでもプロセスの1つに過ぎません。

大切なことは、IT化とDXを混同してはいけないということであり、両者には以下のような違いがあります。

  • IT化:人の手で行っている業務の自動化、ペーパーレス化など
  • DX:デジタル技術を駆使して売上や経営力向上へ繋げること

ビジネスを変えていく最初のステップとして、従来の業務にかけている時間を短縮したり人手不足を補ったりすることが必要で、それを解決するためにデジタルツールの導入などIT化による既存業務の効率化を行っていくのです。

対してDXの目的は自社の売上や経営力を向上することであり、新しいビジネスモデルの構築もしくは既存のビジネス変革など、イノベーションを成功させるためにあります。

まずはIT化とDXの違いを理解したうえで、DXを実現するための順序を正しく踏むことを意識してくだだい。

中小企業のDXはスモールステップから始まる

中小企業のDXはスモールステップから始まる

DXは非常に幅広い概念であり、自動運転だけでなく空に道路が出来て車が走るようなイメージのごとく、壮大なスケールを思い描いている人もいるかもしれません。

たしかに大企業では、会社全体を上げて社会の仕組みそのものを変えるDXに取り組んでいるところもあり、映画に見られるような世界が実現する未来も近いのかもしれないと思うでしょう。

しかし、中小企業におけるDXはそのような大きな概念として考える必要はなく、スモールステップで始めることが大切です。

たとえば、毎週水曜日をテレワークDayにするといった試みも立派なDXの一歩であり、テレワークを試した日に出てきた課題を1つずつ解決すれば、連日テレワークを行うことが可能になります。

テレワークの体制を定着させることで事業継続計画も安定性を増し、ニューノーマルにおいて出勤せずとも一定の成果を出し続けられるでしょう。

DXがなかなか進まないと考えている中小企業では、自社の施策のスケールが大きすぎるケースが往々にしてあります。

自社の規模・予算に合っているかどうか確認して、戦略が規模に合っていない場合はまず身近な事柄から取り組んでみてください。

長期的な視点を持ってスモールステップを積み重ねることが、中小企業のDX推進にあたっては大切です。

コストをかけなくともDXは可能

コストをかけなくともDXは可能

DXというと、IT投資に莫大な予算を投資しなければならないイメージがあるかもしれませんが、コストをかけずともDXを推進することは可能です。

たとえば、クラウドサービスなら月額1万円程度で始められるものもあり、優先度の高い部署から少しずつ導入していって効果を観測することもできます。

CRM(Customer Realationship Management=クライアントとの親和性最適化ツール) もクラウド上のシステムのため、数百万などの経費をかけずに導入できて、営業進捗の報告などの手間を削減できます。

ここで重要なのは「DXをするにはお金がかかる」というマインドを捨てて、少額でもできることから始めてみることです。

大企業においては、最初から莫大なIT投資をすることが可能かもしれませんが、中小企業においては現実的ではありませんので、捻出できる金額で最大限パフォーマンスを発揮できるデジタルツールを見つけてください。

やらないことを決める

やらないことを決める

DXを導入するために、片っ端からソフトウェアなどのツールを活用している企業もあるかもしれませんが、中小企業が全てのツールを使いこなそうとするのには無理があります。

複数のツールを導入したにもかかわらず使いこなされていない場合や、成果が上がらない場合は「やらないこと」を決めてください

たとえば書面の電子化、提供しているサービスにデジタル機能の追加、DXを活用した新サービスの開発などを同時並行で行おうとしても、どれも中途半端に終わってしまう可能性が高いです。

自社にとって今一番必要なものや成功率が高いものから始めていくことが、DXを諦めず継続するために必要なマインドとなります。

仮に業務を電子化して効率化するのであれば、まず全部門から始めるのではなく営業事務や経理など、ルーティンワークが多い部門から試験的に導入する方がシステムに業務を移行しやすいでしょう。

「やらないことを決める」とはつまり、そうした「一部の業務に絞る」「特定の部門のみに導入する」といった優先順位を意識しながらDXを導入することに他ならず、それがひいては全社的なデジタル改革につながっていきます。

まとめ

中小企業のDXプランについて前編・後編に分けて規模別の施策の目安や戦略の立て方を紹介いたしました。

DXを成功させているのは大企業が多いのが実情ですが、日本全体で見ると中小企業の割合は非常に高く、一概に大企業のやり方がすべての企業に通じるとも言えません

まずは自社の企業規模に合った戦略になっているかどうかを見直していただき、成功率の高いものから着実に実行していってください。

1つひとつの施策を進めていくことで、業務効率化や自動化が実現しDX戦略のスケールが広がっていくはずです。

経営者の方は「DXには戦略ありき」ということを意識していただき、自分たちなりのDXの進め方を見つけていただければと思います。

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この記事の執筆者

中小企業診断士 / 法政大学経営大学院特任講師

福田 大真

DXに関する研究、論文の発表などを行う。 デジタルトランスフォーメーション(DX)の第一人者。 趣味は酵母の発酵についての話を肴に美味しいお酒を飲むこと。

中小企業診断士 / 法政大学経営大学院特任講師

福田 大真

DXに関する研究、論文の発表などを行う。 デジタルトランスフォーメーション(DX)の第一人者。 趣味は酵母の発酵についての話を肴に美味しいお酒を飲むこと。

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