今やAmazon.com創業者ジェフ・ベゾス氏に次いで、世界第2位の資産家となったイーロン・マスク氏(参考/フォーブス誌発表2021年版世界長者番付:2021.4.16)。
新時代の電気自動車会社テスラ・モーターズ(以下:テスラ社)や航空宇宙事業スペースXを創業したイーロン・マスク氏(以下:マスク氏)ですが、彼の起こした様々なアクションは、デジタル社会のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)の未来を見通す上で、非常に興味深いものです。
そこで今回は、時代の寵児マスク氏を改めて紹介するとともに、テスラの経営戦略を通してDX推進に必要ないくつかの事柄をご紹介します。
現在の企業経営において何らかのイノベーションを起こしたい経営者は、是非とも参考にしてみてください。
目次
時代の寵児イーロン・マスク
まずは、彼の生い立ちから現在へ至るまでの道筋を、人物紹介を交えて解説します。
現在まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのマスク氏のアクションを理解する上でも、重要な彼の経歴は次のようなものです。
幼少期~少年時代
1971年6月28日、南アフリカ共和国の首都の1つ(行政府)であるアフリカ有数の大都市プレトニアで生まれたマスク氏。
何か分からないことがあると「なぜ?なんで?」という疑問を、エンジニアであった父エロルにぶつけたマスク氏ですが、父もまたそれに毎回丁寧に答えを返していました。
また、幼少の頃から読書が好きでファンタジーやSF小説をたくさん読みまくり、そのせいかいつしか「世界を救う」という夢を抱くようになっていた、とマスク氏は語ります。
コンピュータにも人一倍の関心を寄せ、10歳でプログラミングを独学でマスター。
さらに12歳の時には自作の対戦ゲームソフトを制作し、それを売って500ドルを手にしたという経歴からも分かるように、現在のように様々な革新的IT戦略で巨額の財を成す素養は幼少時から備わっていたといえるでしょう。
天才起業家の誕生
18歳の時には母親の出身地カナダへ単身移住。その後紆余曲折を経ながら彼にとっても「やる気さえあれば何でもでき、最新テクノロジーにあふれた」米国にあるペンシルバニア大学ウォートン校に進学しました。
そこで物理学と経済学の学士号を取得したマスク氏は、さらに応用物理学を学ぶため名門スタンフォード大学の大学院物理学課程へ進学。
いわば前途洋々たるエリートコースをひた走るかに見えました。
しかし「新聞などのメディア向けWEBサイトの開発を支援するソフトウェアを提供する」というアイデアを思いつき、わずか2日間で名門を退学。
この時の考えを後に語っていますが、これが実に興味深いものです。
大学生の時、将来人類にとって最も重要になるものは何かを考えた。答えはインターネット、持続可能エネルギー、そして複数の惑星での生活の3つだった。
引用:週刊東洋経済(2013.1.12)
当時20代半ばのマスク氏ですが、50歳になる現在にも通づる考え方は既にこの時から出来上がっていたようです。
その後弟のキンバル氏と共に自身初の起業を経験しますが、資金も無く貧しい生活を送っていたものの、IT戦略でブームが到来し順調に成長。
1999年にはコンパックへ企業売却を行うことで巨額の資金を手にし、それを元手にオンライン金融サービスと電子メール支払いサービスを行う会社「Xドットコム/X.com」を立ち上げました。
この「Xドットコム/X.com」こそ、後の「ペイパル/PayPal社」の元となる企業です。
夢を体現するイーロン・マスク
2002年には宇宙事業に乗り出しロケットを製造開発する「スペースX」を起業、2004年には電気自動車ベンチャーの「テスラ社」に出資し、会長(後に第4代CEO)に就任しました。
その後も様々な「世界を救うため」の夢を描き、実現のために多くのアクションを起こしてはいるものの、その総てが彼の言葉通り実現に至っているわけではありません。
また、私生活ではSNSなどでも彼の度を越した発言が舌禍となることもあり、その奇行が取り沙汰される事も多い等、夢を体現する天才起業家と奇行家という2つの顔としても、世界中で現在最も注目を集めている人物。
それが時代の寵児イーロン・マスクなのです。
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