アフターコロナでは非接触の重要性が高まり、電子サイン・電子署名を導入する企業が増えています。
DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)の観点から見ると、サインや印鑑の電子化はデジタイゼーションの一環であると考えられますが、実際のところDX推進のカギでもあり足かせにもなり得ます。
今回はそんな電子サイン・電子署名について日本人の利用状況と、メリット・デメリットを読み解いてまいります。
電子サイン・電子署名を導入している企業担当者や、これから活用しようと考えている方は参考にしてください。
目次
電子サイン・電子署名のメリット・デメリット
電子サイン・電子署名はDXの観点から見るとプラスになるのか、それともマイナスに働くのか。
改めて述べるまでもなく、電子化自体はDX推進の一助となりますが、導入までの壁が高いと感じる人が多いように思います。
それぞれの面を踏まえてDXを推進するために、電子サイン・電子署名のメリット・デメリットを解説いたします。
メリット
電子サイン・電子署名がDX推進にどのように寄与するのか、メリットを2つに分けて紹介してまいります。
- 即効性の高いコスト削減
- 大幅な業務効率化
即効性の高いコスト削減
実印を使って取引をする場合は書類に使われる用紙代や印刷代がかかり、特にインク・トナー代、機材のメンテナンス費用も軽視できません。
直接会う手間の削減やコロナ感染予防のために書類を郵送すれば、それに対する郵送料などもかかります。
しかし、電子サイン・電子署名を導入すればそれらのランニングコストを即時削減でき、経営状態の改善を図ることが可能です。
電子サインサービスの導入にあたって初期コストはかかりますが、毎月大量に書類を印刷している場合、複合機のランニング代と比較するとどちらのコストパフォーマンスがいいかは一目瞭然でしょう。
電子化によって浮いた予算を活用し、さらなるIT投資にまわすことで業務効率化を促進できるはずです。
大幅な業務効率化
電子サイン・電子署名を活用すれば、以下の業務はすべて省略可能です。
- 押印のためだけに出勤する
- 書面を印刷する
- 関係者に書面を渡す
- 認印・実印を押印する
- 書面を郵送する
1つの書面に押印するまでにはこれらの手順が必要であり、関係者が増えればそれだけ手続きの数も多くなります。
また、書類の場合は原本を保管しておく必要があり、何かあった際には原本を保管庫の中から見つけ出す作業が必要です。
電子契約であればデータをクラウドから検索して見つけ出すだけで済み、押印後にかかる手間も簡略化されるメリットがあります。
1つの電子化ツールを導入するだけで、従来書面の押印にかけていた全ての時間を顧客の新規開拓やサービス開発にまわすことが可能になるのです。
デメリット
電子サイン・電子署名のデメリットを2つの観点から紹介いたします。
- 導入までのハードルが高い
- セキュリティの不安
導入するハードルの高さ
電子サイン・電子署名の便利さは理解していても、導入までのハードルが高いと感じる企業担当者は多いはずです。
というのも、電子サイン・電子署名の利用には社内だけでなく社外の関係者との調整作業が必要です。
社内の押印ルールを一から変更し、マニュアルを整え、取引先にも電子契約ツールを利用してもらうよう相談しなければいけません。
ただでさえ日々の業務をこなすのに忙しいビジネスパーソンにとっては、新しいツールの導入やルールの変更、関係者との調整は億劫に感じられるはずです。
しかしこうしたハードルはDX推進のために越えるべきものであり、自社を成長させるステップの一つと捉え実行を試みなければ、デジタル時代で生き残ることは難しいといえます。
セキュリティの不安
もう1つのデメリットは、電子サイン・電子署名に対してセキュリティの不安があることです。
たしかに電子サイン・電子署名は簡単に書き換えられるようなイメージがあり、実印と比べるとセキュリティ面は脆弱であると考えられがちです。
しかし電子サイン・電子署名サービスの提供会社は、既にデータを改ざんされないための対策を取っており、デジタルツールだから危険と考える必要はありません。
たとえば電子サイン・電子署名をする際はIDやパスワードを使ったログインが必要となり、押印者と押印日時を記載することで本人が押印したとわかる仕組みを設けています。
また一度押印されたデータはあとから第三者によって変更することはできず、改ざんしようとした際は警告が出るのです。
電子サイン・電子署名を導入していない企業においては、情報が改ざんされることを恐れるスタッフも多いかもしれませんが、仕組みを理解すればセキュリティの問題は解決できると考えられます。
日本における電子サイン、電子署名に対する考え方
アドビによる世界的な電子サイン・電子署名の調査結果を見てみると、主要国と比べて「アフターコロナで電子サインを使い続けない」と選択した人の割合は日本が一番高く、電子化に対する保守的な姿勢が顕著に見られます。
さらに電子サイン・電子署名に対するセキュリティの懸念も日本が一番高く、逆に言うと「安心して利用できない」と考えている人が多数いるのです。
この背景としては、デメリットの項で説明したような問題に対しての苦手意識が強く、DXに対して保守的な考えを持っているスタッフが多いことが考えられます。
電子サイン・電子署名に対して「これまで書面でやり取りをして問題がなかったので、従来のやり方で十分」と考えている間は、DX推進どころかIT化を成功させることすら難しいと言わざるを得ません。
なぜDXが必要なのか、電子サイン・電子署名を導入することでどんな未来が得られるのかを明確にして、経営者発信で社内スタッフのマインドを変えていく必要があります。
さらに変化のスピードが早くなっているデジタル時代において、電子サイン・電子署名の導入は「DXにつながる業務効率化」という面においてもっとも身近で有効な手段です。
書類を郵送すると手間や時間がかかるのは必然ですが、電子サイン・電子署名を導入すればそれらを効率化できるのは明らかでしょう。
印刷代や郵送費などのコストも抑えられるため、DX推進の一環として進めるには十分価値がある内容といえます。
まとめ
電子サイン・電子署名に対する日本の考え方と、DXの観点から見たメリット・デメリットを紹介いたしました。
電子サイン・電子署名自体は単なるシステムの1つですが、使いようによっては自社のDX推進に大きく影響します。
導入すればコスト削減、業務効率化を助長しますが、うまく活用できない場合は最初の導入の段階で挫折し、社内スタッフの考えが変わらずDX推進もできないといった事態になりかねません。
システムを導入する際に障壁にぶつかるのは至極当たり前のことで、壁を超え続けることが、DXを成功させる現実的な手段です。
自社の電子サイン・電子署名の導入状況から、解決できそうな課題はないか検討いただき、DXを進める手段としてうまくご活用ください。