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DXとSXの関連性とは
2020年以降、急速に注目を集め始めたSXですが、これまでの企業経営で求められていたDXとはどのような関連性があるのでしょう。
本章では、DXとSX双方の相違点と共通点について解説致します。
DXとSXの相違点
ご存じの通り、DXはデジタル技術を用いて、企業のビジネスに変革を起こして競争優位性を確保することを目的としています。
DX推進は全社的に取り組むべき課題ですが、効果的に運用していくためには部署・部門や業務パートごとに細かく分けたシステム開発なども必要です。
また、DX推進のプロジェクトに関しては、出来る限りスピーディに成果を得られることが重要であり、多くの場合はスモールステップのアジャイルな開発手法を取る事が多いでしょう。
つまり、DXの目的はビジネスの変革や新たな価値を生み出すという大きなものですが、現場レベルのプロジェクトに目を向けると、まずは比較的短期的な目線での業務変革が求められているのです。
それに対してSXは、その名の通り、「持続可能であること」が重要であるため、必然的に中長期な目線で見た業務変革を求める発想です。
SXの考え方で重要視されるのは、目先の小さなイノベーションではなく、持続可能な「企業の未来」を創り出すこととにあります。
どちらも企業の未来のために必要な施策ですが、その考え方は目標達成までのタイムスパンにおいて大きな違いがあるのです。
ダイナミック・ケイパビリティの強化
DXとSX、どちらもビジネスに変革をもたらす考え方であることは変わりません。
そのため、「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」を強化していくことが期待されます。
これまで企業競争力の源となっていたのは、「同じ顧客に同じ製品・サービスを提供するために、同じ技術を使い、同じ規模で企業が活動する能力」、つまり現状を維持していく能力を示す「オーディナリティー・ケイパビリティ」という概念が一般的でした。
しかし、社会状況・情勢の変化のスピードが加速する現代社会においては、今と同じ条件下で同じことを継続していくという「オーディナリティー・ケイパビリティ」の考え方だけでは、対応が出来なくなっています。
そこで、変化を知る「感知力」、変化の意味を理解する「補足力」、あるべき姿に向けて対応・適応・改革する「変容力」の3つの力を要素とした自己を変革する能力。すなわち「ダイナミック・ケイパビリティ」が求められるようになったのです。
DX推進はまさに自己を変革するために企業が取るべき対策であり、同時に企業経営にSXの考え方を持ち込むためには、まずこの「ダイナミック・ケイパビリティ」の概念が根底になければ向かうべき方向すら分かりません。
DXとSXの関連性をひもとくためにどうしても避けて通れないものが、この「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」を強化するという考え方なのです。
>>参考:Harvard Business Review/ダイナミック・ケイパビリティ論をめぐる2つの問題
求められるサステナブルなデジタルトランスフォーメーション
DXとSXの関係は決して対立的なものではなく、むしろ相互補完的な関係にあります。
いくらDXを推し進めても、中長期的かつ持続可能なSXの視点が欠けていれば、それは一時的な業務の効率化に過ぎません。
逆に、SXの視点だけで企業を変革しようとしても、DXによる大幅なイノベーション(ビジネスの変革)が起こらなければ、変革速度の早い社会の中で競争力を持ち続けることは難しいと言わざるを得ないでしょう。
また、社会全体のサステナビリティへの貢献というこれからの企業活動に求められる責務を果たしていることを、ステークホルダーに示していくためには、データの可視化が必須であり、こういった場面においても様々なデジタル技術の活用は避けては通れません。
そのため、デジタル技術による変革を目指すDXと、中長期的な視点に立って持続可能な企業に変革していくSXの両者を同時に考えていくことが、今後のビジネスに必要な視点となってくるのです。
サステナブルな事業展開を目指すSXとDX推進は、単にスパンの視点が違うというだけでなく、今後の企業経営においてはどちらが欠けても成立しない、まさに両輪の関係にあると言っていいでしょう。
まとめ
近年のビジネスで注目を集める、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)について解説してまいりました。
震災やコロナ禍といった災害や、紛争を始めとする政治的・社会的に引き起こされる予測不可能な出来事が続く現代において、SX視点を伴わないDX推進による業務のデジタル化だけでは、企業が競争力を持ち続けることは出来ません。
サステナブル(持続可能性)なデジタルトランスフォーメーションという、短期だけでない中長期の変革を目指す企業経営こそが、これからのDX推進に求められる視点なのでは無いでしょうか。