「『2025年の崖』を乗り越えるために、そしてより高度にデジタル化された社会の中で企業が戦闘力を持ち続けるために、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)推進が必要」というのは、DXportal®読者の方であれば当然ご存知かと思います。
しかしながら、多くのステークホルダーにとって魅力的な企業であり続け、社会的にも自社の持続可能性を確保していくためにはそれだけでは足りません。
近年ではDXに加えて、サステナビリティ・トランスフォーメーション(以下:SX)という視点も併せて持つことが必要だと考えられています。
今回は、DX推進のためにも必要な「SX」について、SXとはなんなのか?DXとはどう違うのか?更に、DXとSXはどう並び立つのかといった点を解説します。
中長期の経営戦略を策定し、社会のサステナビリティ(持続性)を念頭に置いた経営を目指す経営者様はどうぞ参考にしてください。
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目次
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは、一言で言えば「企業が持続可能性を重視した経営方針へと切り替えること」といった考え方です。
SXは、企業価値を中長期的に向上させる事を目的としており、各企業が持つ強みやビジネスモデルを持続化、あるいは強化し、社会情勢の急激な変化などにも柔軟に対処出来る企業基盤の確率を目指します。
現代社会のようにコロナ禍や戦争など目まぐるしく移り変わる世界の不確かな情勢を踏まえれば、サステナビリティな視点の重要性は誰の目にも明らかでしょう。
まさに、SXは現代のビジネスシーンで重要なキーワードになっています。
とはいえ、この概念が提唱されたのは比較的最近のことであり、まだ日本のビジネス界に浸透しているとまでは言えない状況です。
SXが注目を集めるきっかけの1つに、2020年8月28日に経済産業省経済産業政策局が発行した【サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~】がありました。
グローバルサプライチェーンにおける企業経営を取り巻く環境の不確実性が一段と増す中では、「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」を同期化させた上で、企業と投資家の対話において双方が前提としている時間軸を長期に引き延ばすことの重要性(こうした経営の在り方や対話の在り方を「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と呼ぶ。)
引用:経済産業省/【サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~】
その中では、これから解説する3つの観点が重要であると述べられており、そうした経営の在り方、対話の在り方を「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX))」と呼ぶと定義されています。
以下、3つの重要な観点に関して詳しく解説致します。
① 企業としての稼ぐ力を中長期で持続化・強化する
1つ目の観点は、事業のポートフォリオ(事業構成)のマネジメントや、イノベーション創出に向けた種植えなどの取り組みを通じて、「企業としての稼ぐ力」を中長期で持続化・強化していくといった点です。
現時点で企業が保有している、いわゆる「ヒト、モノ、カネ」といった有限のリソースではなく、「強み・競争優位性・ビジネスモデル」といった目に見えないけれど重要な財産、つまり「企業としての稼ぐ力」を使いこなし、将来を見据えた中長期的視点で経営することが重要とされています。
② 中長期的なリスクとオポチュニティの双方を把握し経営に反映する
2つ目の観点としては、社会的サステナビリティ(持続性)を念頭においた経営を目指すことが挙げられます。
近年のコロナショックや米中対立、更にはロシアのウクライナ侵攻など、市場やサプライチェーンの状況には常に予測不可能なリスクが潜んでいます。
これだけ市場がグローバル化している以上、国内の政治的・社会的な変化だけでなく、距離的には遠く離れた他国で起こった出来事であっても、時として企業は大きな影響を受けてしまうでしょう。
これからの企業は、そのような問題に直面したとしても、持続的に稼ぎ続ける力を持っていなければなりません。
そのためには、将来の社会の姿から逆算した中長期的なオポチュニティ(事業機会)を把握し、経営に反映していくことが求められるのです。
③ ①と②を経営の軸として都度アップデートを行う
3つ目の観点として挙げられるのは、一度立てたプランに固執せず、常に①と②に意識を向けて、状況の変化に応じてプランをアップデートしていく姿勢です。
企業のサステナビリティを高めていくためには、ますます不確実性が高まっている社会でビジネスを継続していく以上、シナリオ変更の可能性があることを念頭におく必要があります。
むしろ、それを前提とした上で、企業と投資家の双方が前述の①と②の観点を踏まえた対話やエンゲージメントを繰り返す必要があるのです。
そうして都度アップデートを行いながら、企業の中長期な価値創造ストーリーを磨き上げ、企業経営のレジリエンス(回復力、しなやかさ)を高めていくことが求められます。