DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで、売上改善と業務フロー改善を目指す企業は多いでしょう。
とはいえ売上改善と業務フロー改善、どちらから始めればいいか悩んでいる担当者もいるかもしれません。
結論から申し上げると、売上改善と業務フロー改善は同時に進めることが理想です。
しかし、それは当然のことながら、実際のビジネス現場ではそのとおりにいかないことがほとんどです。
売上改善と業務フロー改善、そのどちらもが片手間とならないよう、本記事ではDX(デジタルトランスフォーメーション)におけるそれぞれの進め方の違いと、成功の秘訣について解説します。
目次
DXにおける売上改善と業務フロー改善
まず、この記事で述べる売上改善と業務フロー改善の定義について、お伝えしておきます。
- 売上改善:DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により収益を生み出すこと
- 業務フロー改善:DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、既存のサービスや業務を改善すること
売上改善と業務フロー改善は両軸で動く
先に述べたように、売上改善と業務フロー改善は、同時進行、もしくは交互に実施することが理想です。
これは例えば、売上が好調な企業は業務フロー改善に乗り出すべきといった、単純な考えではありません。
業務状況やたどり着きたい目標によって、適切なタイミングを選ぶ必要があるのです。
さらに、売上改善と業務フロー改善は、進め方も配置するべき人材も異なります。
つまり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるには、自社の状況や人材の適正を見極めながら、同時並行で進めることが理想ということなのです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)における売上改善
それではまず、売上改善の成功の秘訣を考えてみます。
売上改善の手段
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで重要な、売上改善の手段は主として次の3つです。
- 新しい技術の導入によるビジネスモデル改革
- 既存事業の刷新
- 新規サービスの開発
成功事例に見るDXによる売上改善
業界大手の服飾販売店では、店舗ごとに大型のタッチパネルを設置し、他店舗やオンラインで扱う商品を実物大で見られるシステムを導入。
その結果、スタッフの商品を探す手間が省け接客に時間がかけられるようになり、前期に比べ2.5倍の売上増となっています。
これは、新技術導入でビジネスモデルを改革した好例でしょう。
こうした技術改革により既存技術の刷新が行われ、はじめて新規サービス開発へと舵を切ることができるのです。
自社の課題解決にあたり、デジタルツールを導入するだけで満足してしまう企業も少なくありません。
しかしそれだけでは片手間といわざるを得ず、そこで蓄積されたデータをいかにして活用するかを検討し、ビジネスの変革に活かすことが、売上改善を成功に導くためには重要なのです。
売上改善の進め方
売上改善を進めるうえで、プロジェクトの立案や遂行に時間をかけるべきではありません。
なぜなら情報技術の発達により、社会が変化するスピードは上がり続けているからです。
したがって、売上改善においては失敗してもすぐ次に切り替え、検証を繰り返す企業体質が肝要といえます。
また新しいビジネスモデルの開発段階では、それまで実施してこなかったような斬新な考えを取り入れなければなりません。
そのためボトムアップで意見を吸い上げ、企業のトップ層が現場の声を取り入れつつ、意思決定することが理想的と考えられます。
売上改善に必要な人材
売上改善には、ツールの導入と情報の有効活用が欠かせません。
それらをうまく活用するためには、
- システム全体の設計に長けたITアーキテクト
- データ分析が得意なデータサイエンティスト
などの人材を確保する必要があります。
これまでにないやり方を模索していく必要があるので、場合によっては社内スタッフだけでなく、ベンダーやコンサルなど外部の協力を得ることを推奨します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)における業務フロー改善
業務フロー改善は、既存のサービスや業務に基づくため、従来通りの手法でプロジェクトを進めること自体に問題はありません。
ただ、中身を伴ったDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現のためには、綿密な計画性と確実なプロジェクト遂行がカギになります。
売上改善と比較しながら、手段や進め方の違いを解説します。
業務フロー改善の手段
DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務フロー改善の手段は、主として次の2つが挙げられます。
- ツール導入による業務効率化やコスト削減
- 働き方改革の推進
成功事例による業務フロー改善
とある世界的な食品グループ企業では、オンプレミス(on-premises=情報システムのハードウェアを、使用者のデータセンタなどに保有し、リソースを主体的に管理する運用形態)のシステムをクラウド化したことで、無駄な業務をそぎ落とし、安定したシステム稼働を実現。
さらに冒頭で要件定義を明確にしたことで、ユーザーが求めるレガシーシステム刷新後のイメージが具体化されています。
その上で、実装前には綿密なリハーサルを行うなど、業務フロー改善のためのプログラムを成功へ導くため、徹底的なリスク排除が行われ、見事DX(デジタルトランスフォーメーション)導入に成功しました。
このようにDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するにあたって、業務効率化や働き方改革は避けて通れない道です。
経産省のDXレポート2でも、アフターコロナのDX(デジタルトランスフォーメーション)では、働き方改革に意識を向けない企業は、DXへの推進が遅れ、デジタル時代の敗者になると懸念しています。
したがって、この食品グループの例のように綿密なスケジュール立案と、手堅くプロジェクトを進める姿勢が業務フロー改善の成功要因となるのです。
業務フロー改善の進め方
業務フロー改善は経営戦略の一巻として、トップダウンで手堅く進めていくのが得策です。
その際に納期や削減するコストを評価軸に置くと、よりプロジェクト推進のロードマップが明確なものになるはずです。
売上改善は失敗を繰り返しながらも、スピーディーに進めることが成功のカギでした。
しかし業務フロー改善では、実験と検証を繰り返すよりも、1回の実施の成功率をあげることに注力する必要があります。
適切な人材配置
業務フロー改善においては、社内の情報システム担当やIT関連の人材配置が適しています。
なぜなら業務効率化に必要となるシステムの刷新では「現行機能の維持」が求められ、該当システムに精通している人材が向いているからです。
社内にめぼしい人材もがいなければ、インフラまわりやアプリ開発などに長けたエンジニアを雇用するのも一つの手です。
このようにDX(デジタルトランスフォーメーション)に対して、
- どちらかというと保守的なスタッフは業務フロー改善
- 積極的な考えのスタッフは売上改善
といった具合で人材を使い分けることも、DX推進を成功させるためには必要な考え方です。
まとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)における売上改善と、業務フロー改善の違いを解説しました。
デジタル競争の中で勝ち抜くためには、売上改善と業務フロー改善のどちらも必要です。
交互に行うべきか、同時に行うべきかは、自社の状況や経営戦略によって総合的に見極めてください。
また、売上改善はスピーディーに実験と検証を繰り返し、業務フロー改善はプロジェクトを着実に進めていくという進め方の違いがあります。
それに伴い、社内スタッフの担当している業務やスキル、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する考え方に合わせて、配置する人材を決めることが肝心です。
売上善と業務フロー改善、それぞれの特徴を抑えて適材適所の采配をすれば、自ずとDX(デジタルトランスフォーメーション)への成功の道は拓けていくのです。