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2つのリーダーを活かすカギは「分離」と「連携」
経営陣のDX責任者と現場のDX執行者。
2人のリーダーがDX推進の両軸として機能することは、企業のDX導入を円滑に進めていくための必須条件です。
しかし、当然ながら、単にこの2人のリーダーを任命しただけでDX推進が上手くいくわけではありません。
2人のリーダーがそのポジンションを互いに理解し、それぞれの担う役割をまっとうする事が求められます。
そのためのキーワードが「分離」と「連携」です。
責任者と執行者を「分離」する
DX責任者は、経営者や外部ステークホルダーと調整しながら、 DXビジョンとゴールを示し、必要な予算を確保する。DX執行者は、そのビジョンやゴールの実現に向けて、人材リソースの確保を含めたDX推進の実務を担当する。
DX推進を成功させるためには、それぞれが互いの役割を分離して考える事が大切であり、互いの領分を侵さないことが求められます。
典型的な失敗例を見ていきましょう。
多くの場合、DX執行者には信頼のおけるプロパー(生え抜き)なスタッフやデジタルビジネスへの知見を持った人材がアサインされるはずです。しかし、DXを進めていける人材を執行者に選んだにも関わらず、DX責任者がDX執行者の役割であるDX推進のための組織設計に介入しようとする事例は枚挙にいとまがありません。そして、多くの場合、そのような企業のDX推進は遅滞し、最悪の場合は失敗に終わってしまいます。
逆に、DX責任者が設定したゴールに現場が異を唱えたりしていては、DX推進が円滑に進むはずがありません。もちろん、DXの専門的な知見を活かした建設的な提案は歓迎されるべきでしょうが、企業の目指すビジョンやゴールを決めるのは経営陣の役割であり、現場のリーダーがそこに介入するべきではないでしょう。
経営層のマネジメントと現場のマネジメント。この違いをしっかりと認識し、互いの領分を理解しながら役割を分離し、それぞれの領分には独立した権限を持たせる事が、DX推進を円滑に行うための1つ目のキーワード「分離」が意味するところです。
経営陣と現場が「連携」する
それぞれのマネジメントスコープを分離して、独立した権限を持たせる事が重要だとはいっても、DXという大きなプロジェクトを滞りなく推進するためには、両者の連携は欠かせません。
DX責任者が掲げるビジョンやゴール、経営計画は社内に浸透していなければならず、それを浸透させるのを助けるのはDX推進者の役割でもあります。
例えば、IR(Investor Relations/企業が株主や投資家向けに行う広報活動)などを通じて、DX責任者が外部に向けて発信したメッセージが社内に浸透していなければ、社員が営業先などでちぐはぐな発言をして自社のビジョンやブランディングを傷つける事態が起こってしまうかもしれません。
経営者や株主・銀行など外部ステークホルダーへの、いわば「上へのマネジメント」がDX責任者の役割だとすれば、社内スタッフに対する「下へのマネジメント」はDX執行者の役割です。
役割を「分離」した2人が、互いの領分を尊重しながらも、DX推進というゴールに向かう一つのチームとして「連携」していくことが求められます。
まとめ
中小企業がDX推進を目指す場合、経営陣側のリーダー「DX責任者」と現場側のリーダー「DX執行者」という、2つのリーダーシップが求められることはご理解いただけたでしょうか。
この2つのポジションは、互いに独立していながら、しっかりと連携を取る必要性があります。
また、DX推進においては、2つのリーダーシップはどちらが上でも下でもありません。
どちらのポジションも重要な役割を担いますので、それぞれのポジションは決して侵さず、それでいて共通のゴールに向かって、互いに手を取り合い邁進する。
そうした組織としての柔軟な体制づくりが肝心であり、それなくしてDX推進は成功しないでしょう。