目次
テーマ8:DXが失敗する要因とは?
編集長
「ではテーマ8です。『こうすると絶対DX失敗するというポイントはありますか?』というものです。」
山田氏
「これはもう、『システムの側から作ってしまう』ですね。」
編集長
「もう少し具体的にご説明いただけますか?」
山田氏
「そうですね。皆さん『システム化』という言い方をよくすると思うんです。これが別に悪い言い方というわけではなく『システムにすることでバリューを増す』という言い方をされることもあるんです。でも、私としてはこの考え方は危険かなと思っています。
なんでかというと、ろくに設計もせずに闇雲にシステムを作っても、そのシステムが本当に自動で動くとは限りません。本当に効率化に貢献できるかはそう簡単ではないんですね。
だというのに、上手くいかなかったらその後もシステムにどんどん人材と予算を投入して修正を加えていって、結局なんの価値貢献もしなかったという『コスト的な失敗』というのはよくある話です。
そこでいうと最初に言った『目的を明確にする』『頭と尻尾を明確にする』というのが大切で、それがないDXというのは大抵失敗しています。」
編集長
「DXportal®でも、『DXとはゴールありき』という記事を書いていますね。」
山田氏
「ですので、DXに失敗しないためには『DXがなぜ必要なのか?DXで何をしたいのか?』ぐらいは最低限筋道立てておく必要があると思います。」
編集長
「福田先生はいかがでしょう?」
福田氏
「小さい企業、まさにお父さんとお母さんだけでやってる会社などに対して、先ほど私は『まずデジタル使ってみなさい』と言いました。しかし、それと相反するように思われるかもしれませんが、失敗する例としては『LINEぐらいだったらまだいいけれど、SNSで自分の会社をアピールしよう』などと考えて、Xやインスタを使い始めました。なんならThreadsやBlueskyなど、ありとあらゆるSNSを使ってみる、というのは危険だなと感じています。
こういう場合、大抵は色々手を出した割には全然効果が上がらないということが往々にしてあるものです。それこそ、例えば中小企業などでパッケージシステムを導入したけど、社員がついてこないとか、使いこなせないとかいった現象と似たような部分があるのではないでしょうか。
今はスマホに色々なアプリが標準で用意されてしまってるので、『なんなら使ってみたら効果上がるんじゃないか?』みたいに考えてしまう。そして、場合によってはスマホを活用することで生まれた余白時間を全部無駄にSNSに費やしてしまう、みたいなことは良くあるんです。
この場合は、DXなどに関する事情を分かった第三者が、優先順位付けしてあげるのも大事だと思います。
SNSというものは、ただ単に店の料理を載せるだけで効果があるものではありませんし、SNSマーケティングを成功させるためにはそれなりの戦略が必要なんです。このあたりは先ほどの話とは矛盾するように聞こえるかもしれませんが、何でもかんでも『まずはやってみよう』というだけでは失敗する可能性の高い施策かなと思います。」
テーマ9:DXに取り組む経営者へのメッセージ
編集長
「では、最後のテーマに行きたいと思います。企業を成長させるためにこれからDXに取り組もうと考えている経営者に向けたメッセージをそれぞれいただきたいなと。こちらは、山田社長からお願いできますか。」
山田氏
「そうですね『DXに取り組もうとしている』というところで考えると、やはり『何から取り組むか』が重要だと思います。そして、何から取り組むかと言えば、何度も言っているように『ゴールを決める』ということなんですね。
何をしたいのか?どうなりたいのか?こうしたことを、なんなら紙に書き出すことから始めてもいい。それぐらいアナログなことから始めても、それもDXだよということがお伝えできれば嬉しいです。
その紙を壁に貼って、常に考え続けるというのも、これからのDXでは大事なアクションになってくるのでは?と思いますね。」
編集長
「まさにイメージの力ですね。ありがとうございます。では、福田先生はいかがでしょう。」
福田氏
「そうですね。では、私は小さい企業向けの経営者さんに向けたメッセージを送りたいと思います。
町の中華屋さんでもそうですし、居酒屋のお父さんとお母さん、伝統工芸やってるお父さんでもいいんですけど、自分がデジタルが苦手で使いたくないのであれば、子どもとか孫に任せてしまうのもありだと思いますね。
本人ができなくても、先ほど言った第三者でお手伝いをしてくれる方がもしがいたら、多分SNSやろうとしたら『お父さんその写真やめた方がいいと思うよ』とか、『おじいちゃんそれは全然意味ないよ』みたいに、アドバイスくれるかもしれませんし、そうした高校生のお孫さんなどが手伝ってくれれば、そっちの方がもしかしたらよほど上手かもしれないし、効果があるかもしれない。
そして、手伝ってくれる子どもや孫がおらず、『デジタルなんか難しそうで、手を出すのはちょっと……』という人は、やる気が出るまで待ってみるのもありなんじゃないかな、と思いますね。」
編集長
「なるほどなるほど。もう無理はしない。」
福田氏
「ええ、放っておいてみる。でも気づいたら多分、何かが起こります。周りが全部デジタル化してると、例えば50代でもLINEを使っていないと、友人から声がかからなくなったりすると思います。
そうすると、ようやく本人も気付くわけなんですけど、その時になってはじめて『ちょっと嫌だな』とか思うんですね。そこでようやく『少しさわってみよう』となると思います。そういうやる気が出るまで少し待ってみる、でいいのではないかなと。
やることとやらないことを決めるのが第一優先なので、『デジタル化なんて俺にはムリだ』と感じるのであれば、とりあえずやめておけばいい。そうするうちにもしかしたら手助けしてくれる人が現れたり、やらざるを得なくなる状況が生じたりすることもあると思いますので、それまでは一旦待ってみるっていうのも、逆説的な答えになってしまいますが一つありなのかなと思います。」
編集長
「なるほど。今日は非常に考えさせられるお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。」
対談を終えて
中小企業診断士でありITコーディネータでもある福田氏と、DX推進企業でありDXportal®の運営会社でもある株式会社MU代表の山田氏という、DXに関する造詣の深いお二方のお話をお伺いして、筆者も改めてDXの奥深さに感じ入りました。
お二方が口を揃えるように、現代社会はデジタルなしでは考えられません。そんな世界で企業を経営していくことは、企業規模の大小に関わらず、今やデジタル活用なしには成立しないのです。
その一方で、「DX」と言ってもいきなり大上段に構えることなく、まずは「どうしたいのか」を明確にして、小さなところからでもデジタルを使ってみること。それが本当の意味でのDXの第一歩となるのではないでしょうか。
この記事が好評であれば、お二方との対談は今後もシリーズ化していきたいと考えておりますので、よろしければご感想などお寄せいただければ幸いです。
(DXportal®編集長:町田)