現代のビジネスにおいて、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)は避けて通れない重大な施策です。
とはいえ、中小企業や小規模事業者にとっては、資金や人材、知識といった様々なリソースが障壁となり、取り組もうにも取り組めないといった現実もあるでしょう。
中でも、多くの企業においてDX推進を阻む最大の問題になっているのが予算の確保です。
人材や知識の不足は、外部企業に協力を得ることなどで解決できる場合もありますが、外部の力を得るためにも予算が必要となります。
しかし、予算不足を理由にDXを諦めることはありません。国の補助金や助成金を利用することができれば、中小企業や小規模事業者にとって大きなDX戦略の助けとなるでしょう。
そこで今回は、国の補助金制度のうち、DX推進に活用できるものを3つご紹介します。
補助金利用の際の注意点も解説しますので、予算の課題を克服し、貴社のDX推進を大幅に促進させる戦略の一助として、どうぞご活用ください。
目次
IT導入補助金|DX推進の強力なパートナー
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者などが自社の課題解決やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を負担してくれる補助金です。
クラウドサービスやITツールの導入、新たなシステム開発などが対象となり、業績向上やサービス品質の改善など、企業の競争力強化を後押しする一方で、デジタル化による働き方改革の推進をサポートすることを目的としています。
*以下/参考・引用:IT導入補助金2024公式サイト
対象となる企業・事業者と対象となる事業
IT導入補助金の対象となる条件は、3つに分かれた枠ごとに違いがあります。ただし、その対象事業者は、中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)や小規模事業者(商業・サービス業、製造業その他)に限定されています。
補助対象となる事業は、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は左記に加えハードウェア購入費入など、広範にわたります。
ただし、導入するITツールは、IT導入補助金の公式サイトで公開されるITツールが対象です(一部のハードウェアを除く)。
2024年の事業概要
2024年度のIT補助金は、次の5つの枠に分かれています。
- 通常枠(A・B類型):ITツールを導入する経費の一部を国が負担することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的とする。
補助金額:5~450万円、補助率:1/2以内(必要経費総額の内/以下:同) - インボイス枠(インボイス対応類型):インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトの導入により、労働生産性向上のサポートを目的とする。PCやハードウェアなどの購入費用も含む。
補助金額:10~350万円、補助率:1/2~4/5以内 - インボイス枠(電子取引類型):インボイス制度に対応した受発注システムを、商流単位で導入する企業を支援することを目的とする。
補助金額:~350万円以下、補助率:1/2~2/3以内 - セキュリティ対策推進枠:サイバーインシデント(情報セキュリティに関する事故や事件)が原因で事業継続が困難となる事態の回避と、サイバー攻撃被害が供給制約・価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクの低減するためのITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービス)を導入する事業を対象とする。
補助金額:5~100万円、補助率:1/2以内 - 複数社連携IT導入枠:サプライチェーンや商業集積地に属する複数の中小企業や小規模事業者等が、連携してITツールを導入して生産性の向上を図る取り組みを支援することを目的とする。
補助金額:10~3,000万円以下、補助率:1/2~4/5以内
注意点:交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払いを行った場合は、補助金の交付を受けることができません。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金|DXによる生産性向上の支援
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者が今後数年間にわたって相次いで直面する各種の制度変更に対応するために、設備資金等を支援するための補助金です。
働き方改革や被雇用者保険の適応拡大、賃上げ、インボイス導入などへの対応を目的としています。
以下/参考・引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式サイト
対象となる企業・事業者と対象となる事業
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の対象は、中小企業や小規模事業者で、生産性向上に取り組む事業者、再生事業者が該当します。
個人事業主や創業間もないスタートアップ企業やベンチャー企業なども利用しやすい補助金です。
革新的製品・サービスの開発又は生産プロセス等の改善に必要な設備投資等、あるいはDXなどへの前向きな投資や海外展開を目指す企業を支援しています。
特に、大幅な賃上げに取り組む事業者と、海外でのブランド確立などを試みる事業者への支援が強化されています。
2024年の事業概要
2024年(17次締切分以降)のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、次の枠に分類されています。
- 省力化(オーダーメイド)枠:人手不足の解消を目的にデジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入で、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援。
補助金額:100~8,000万円、補助率:1/2~2/3 - 製品・サービス高付加価値枠(通常類型):革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援。
補助金額:100~1,250万円、補助率:1/2~2/3 - 製品・サービス高付加価値枠(成長分野進出類型/DX・GX):今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発※の取組みに必要な設備・システム投資等を支援。
補助金額:100~2,500万円、補助率:2/3 - グローバル枠:海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに必要な設備・システム投資等を支援。
補助金額:100~3,000万円、補助率:1/2~2/3
6月、9月、12月、3月の四半期ごとに採択発表が行われます。
注意点:申請は全て電子申請システムで行われ、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
事業再構築補助金|ビジネスモデルのDXに対する支援
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上回復が期待しづらい中、ポストコロナ/ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために設立された補助金です。
中小企業や中堅企業の新分野への転換や業種転換、あるいは事業再構築といった思い切った事業再構築に意欲的な企業の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
以下/参考・引用:事業再構築補助金公式サイト
対象となる企業・事業者と対象となる事業
日本国内に本社を有する中小企業および中堅企業に限ります。
補助対象となる事業は、新市場への進出、新たなサービスや商品の開発、ビジネスプロセスの再構築、業務のデジタル化など、企業のビジネスモデルの変革を目指すものです。
また、補助対象となる経費は、「本事業の対象として明確に区分できるもの」と定められています。
2024年の事業概要
事業再構築補助金は、2024年度の場合、次の枠に分かれています。
- 成長枠:成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者が対象。
補助金額:最大7,000万円、補助率:1/3~2/3 - グリーン成長枠:グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とした「グリーン成長枠」に要件を緩和した類型(エントリー)。
補助金額:最大1.5億円、補助率:1/3~2/3 - 卒業促進枠:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対し、補助金額を上乗せして支援(大規模賃金引上促進枠との併用は不可)。
補助金額:グリーン成長枠に準ずる、補助率:1/2~1/3 - 大規模賃金引上促進枠:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対し、補助金額を上乗せして支援(卒業促進枠との併用は不可)。
補助金額:3,000万円、補助率:1/2~1/3 - 産業構造転換枠:国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を対象として補助率を引き上げ重点的に支援。対象経費に廃業費を追加し、廃業費がある場合は補助上限額を上乗せ。
補助金額:最大7,000万円、補助率:1/2~2/3 - 物価高騰対策・回復再生応援枠:コロナショックや物価高等により業況が厳しい事業者に対して支援を継続するための枠。
補助金額:最大3,000万円、補助率1/2~3/4 - 最低賃金枠:最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象として補助率を引き上げ。加点措置を行い、物価高騰対策・回復再生応援枠に比べて採択率において優遇される。
補助金額:最大1,500万円、補助率:2/3および3/4。
事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けることが条件となります。
また、補助金額が3,000万円を超える案件は、金融機関の確認も必要となります(金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみでも可)。
補助金の申請にあたっての注意点
紹介した補助金は、制度によっては対象事業者や事業内容、条件などが異なりますが、いずれにしてもDX推進施策を実施するための費用の一部を国が補助する仕組みであり、企業にとっては魅力的な制度です。
億単位の補助事業もありますが、事業目的などに応じて、数十万~数百万の規模から補助が受けられるため、中小企業や小規模事業者であっても、取り組みやすい点も魅力です。
ただし、補助金の申請は競争率が高いため、事前の準備と計画が必要不可欠なのは言うまでもありません。
具体的な事業計画や成果予測、それらをどのように実行するかを明確に示す資料が揃っていなければ、当然ながら審査には通らないでしょう。
ここでは、補助金の申請にあたって注意すべきポイントについて解説します。
いずれも基本的な事項ではありますが、DX推進施策という目新しい挑戦に目を奪われてしまうためか、基礎的な部分を疎かにしてしまう企業は少なくありません。
補助金申請で失敗しないためにも、必ず押さえておくべきポイントですので、この機会にご確認ください。
適用性と申請期限の確認
大前提として、補助金ごとに対象となる企業や事業内容、条件などが異なるため、企業規模やプロジェクトによって、申請すべき補助金や、適用条件は変わります。
また、補助金の申請には期限があります。期限を逃すと次の募集まで待つことになってしまうため、各種補助金の申請期限を把握し、自社の状況に照らして適切なタイミングで申請を行うことが重要です。
自社の事業が補助金の対象になるか、その申請期限はいつなのかを正確に把握するためには、公式のWEBサイトを定期的にチェックして、最新情報を確認するようにしましょう。
申請書類の正確性
補助金の申請では、具体的な事業計画や目標を設定し、それを達成するための戦略を明確にすることが求められます。
計画は現実的で、かつ明確な成果を上げることが可能なものでなければなりません。
DXという新しいプロジェクトであっても、この点を疎かにしては補助金を得ることはできないでしょう。
さらに、その他の申請書類も完全かつ正確である必要があります。
これらの申請書類に不備があると、仮に優れた計画であっても申請が却下される可能性もあります。
また、虚偽の申告は法的な問題を引き起こす可能性があるため、絶対に避けなければなりません。
「虚偽の申請による不正受給」などが判明した場合は、交付規定に基づいて交付決定取り消しになるだけでなく、補助金交付済みの場合は加算金を課した上での当該補助金の返還義務が生じる場合もあります。
「ITはよくわからないけどとりあえず出すだけ出してみよう」という姿勢で取り組むことは、時間とリソースの無駄遣いにしかなりませんし、最悪の場合は、マイナスの結果を生む危険性もあります。
必要があれば、専門家の手を借りて正確な書類を用意するようにしましょう。
補助金の使用状況の報告
ほとんどの補助金制度では、申請が通った場合、補助金の使用状況の報告が求められます。
何に補助金を使い、どのような結果が得られたかを明確に報告することが必要になるのです。
万が一、「補助金の目的外利用」や「補助金受給額を不当に釣り上げ、関係者へ報酬を配賦する」といった不正な行為が発覚した場合は、法的にも罰せられる可能性があります。
補助金を受け取った後もしっかりとした運用を心がけることは当たり前ですが、計画時点でどのような報告が求められるのかなどをきちんと確認しておくことも重要です。
また、具体的な数値などを示す必要がある場合は、測定方法なども含めて、計画段階で練り込んでおきましょう。
十分に検討しないまま補助金を申請してしまうと、万が一、補助金を得られたとしてしっかりと活かすことができないばかりか、場合によっては報告書を作成するための業務が膨れ上がってしまうなどの懸念もあります。
申請段階から、報告に関しても意識しておくことは非常に重要なポイントです。
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DX推進に利用できる3つの補助金について、その概要とともに補助金申請時の注意点を解説しました。
これらの注意点を見てもわかるように、補助金の申請は一筋縄ではいかないプロセスです。
申請期限内に、補助金の適用性を把握し、申請書類を正確に準備するためには、一定の専門知識と経験を必要とします。
また、補助金の申請はその場だけ書類を用意すれば良いというわけではなく、受け取った後も報告義務があります。
これらの複雑さを踏まえると、自社だけで補助金の申請を行うのは難しいと感じる企業様も少なくないでしょう。
そこで、補助金申請の際には外部の専門家による支援を受けることをおすすめします。
専門的な支援により、補助金申請の手続きがスムーズに進み、最大限の効果を得られる可能性も高まるでしょう。
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