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【業界インタビュー】建設土木業界のDX推進の先がけをめざして|山陽ロード工業(株)

「橋梁・トンネルメンテナンス事業」「交通安全事業」の二本柱で地域インフラの整備メンテナンスを手がける、創立55周年を迎える岡山県の山陽ロード工業株式会社(以下:同社)。

2019年の国土交通省橋梁補修工事においては、中国地整からの受注で1位の実績を持ち、行政からの依頼による公共事業を中心に大小様々なインフラ工事・整備などの仕事を手がけている同社は、土木業界の中でも先進的にDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)を推進する企業としても注目を集めています

しかし、そもそもDX推進に舵を切ったきっかけや現在の施策はどのようなものなのか。そして、DXを使って今後どのような展望を持っているのか。

業界別のDX推進事例紹介の一環として、今回は同社代表取締役社長の秋田英次氏にインタビューを行い、DX推進にかける想いや実情を聞いてみました。

土木業界のみならず、DX導入を検討する企業経営者・担当者にとっては参考となる、実践的な現場の声をお届けします。

【業界インタビュー】土木業界のDX推進の先がけをめざして|山陽ロード工業(株)

DX導入のきっかけ

DX導入のきっかけ

昨今は経済産業省主導で企業へのDX導入が推進されているのはご承知のとおりでしょうが、建築・土木業界を管轄する国土交通省も同様に関係各所へのDX推進を啓蒙していました。

しかし、他業界の例にもれず建設・土木業界の場合も、一部のゼネコンなど大手企業を除いては、なかなかDXといった概念までたどり着かないのが実情。

その状況は特に中小企業においては顕著だったのですが、従業員数わずか55名(令和3年3月現在)という決して大きいとはいえない同社は、なぜ競合他社に先んじてDXの導入を決めたのでしょう

「建設・土木業界は長らく続いた不況をようやく脱し、受注環境は好転しつつあるといわれています。

しかし、それでも業界を取り巻く環境は決して軽んじられるものでは無く、特に少子高齢化による人手不足は深刻で、業務の広がりに人的コストが追いつかない状況でした」と語る秋田氏。

それに加え、2020年より特に問題となり始めた感染症対策の側面からも、主に対面型のビジネスから非対面型のビジネスへの転換が求められる時代の流れもありました。

それらの解決策としてIT技術の導入が不可欠と考え、2020年3月にたまたま出会った弊社(株式会社MU)代表の山田と組んで1つのツールを開発したことが、全社を上げてDX推進へと舵を切るきっかけだったといいます。

株式会社MUと組んで開発したITツール

株式会社MUと組んで開発したITツール

地域インフラ整備・メンテナンスを中心に手がける同社の商圏範囲は、おおむね半径100km圏内だといいます。

「中国地方が中心で全国を相手にした商売でないとはいえ、当然ながら手がける現場や取引先は本社からは離れていて、そこへの往復だけで1日を取られるなどということは日常茶飯事です。

これは、ただでさえ人手不足の現状においては見過ごすことのできない負担で、人手と時間の両方の効率を上げる必要性を感じていた所、たまたまWebの勉強会で株式会社MUの山田さんとの出会いがあり、現代のビジネスにおいてはDX推進が不可欠だということを改めて知らされました」

MUの山田氏との出会いがきっかけでDX推進を意識し、そこからは持ち前のアグレッシブさで早急に社内の意識改革も行っていったといいます。

「そこからWeb会議システム「SRiChat(スリィチャット)」を開発するに至ったんです。

これはインターネットブラウザだけを使ってWeb会議ができるシステムで、アプリなどのインストールが不要ですから、クライアントがパソコンさえ使っていれば互いにユーザー登録をするだけで利用してもらうことができます。

これまでのWeb会議システムの多くは、専用アプリやソフトのダウンロードが不可欠で、それが原因でITに苦手意識を持った企業(案外土木業界には多いのです)には使ってもらうこともできず、直接顔を合わせた打ち合わせのほうがいいという声も多かったんです。」

そうした業界内の意見にも真摯に耳を傾け、セキュリティも担保しながら誰でもかんたんに接続が可能なWeb会議システム「SRiChat」をMUとともに開発し、少しずつ業務に導入するようになっていったといいますが、それによりどのような環境の変化があったのでしょう。

「SRiChat」開発の効果

「SRiChat」開発の効果

「私どもとしては、まずちょっとしたミーティングのためだけに1日がかりで遠方まで出かけるという行為がなくなり、圧倒的な人的・時間的なコスト削減が図れました。

それだけでも適切な部署に人を配置できたり、別の生産性な作業に時間をあてる事ができるようになったというのが、何より大きな成果だったと言えます。」

1つのシステムを開発するだけで明確な成果を上げた同社ですが、そもそもDX推進は自社のメリットだけでは成立せず、相手ありきのものであり顧客のメリットを無視しては成り立ちません。

それらを考え合わせて、取引先にはどのように受け入れられたのでしょう。

「そうしたITツールに慣れ親しんでいない取引先担当者などもいらっしゃいましたが、ちょうどコロナウイルス感染症による県外への移動が制限されていた時期に重なったというのもあり、導入は比較的スムーズに行えたと思います。

さらに、実際に使ってみたら時間効率は圧倒的に実感できるものですし、電話よりははるかに画面越しでも顔を合わせた打ち合わせのほうが互いの意図を組みやすいと、おおむね好意的に受け止めてくださっているようです。」

現状のDX導入実績

現状のDX導入実績

実際に1つのツールを開発したことで、圧倒的なコスト削減が図れDXの足がかりとしては申し分ないスタートを切った同社ですが、その後どのようなことをDXで変革していっているのでしょう。

遠隔地と仕事をやり取りする

遠隔地と仕事をやり取りする

「弊社がDXを用いて現在行っていることは、主に3つあります。

1つは「SRiChat」に代表されるような、オンラインで自社と取引先をつなぐシステムの開発です。

これは圧倒的な時短につながり、人手不足解消の糸口となってくれました。」

この1つ目の実績を元に、同社ではさらにWeb会議システムだけでなく、事務所にいながら建設現場の臨場確認が行える遠隔臨場システム「SRiChatPRO(シリィチャットプロ)」をも開発するに至っています。

SRiChatPRO

「こうした遠隔地とのオンラインでつながるシステムというのは、国土交通省から発表された「建設現場の遠隔臨場に関する施工要項(案)」などにみられるように業界全体で求められているものでもありますので、当社としても積極的に推進していきたい事案です」

遠隔臨場

業務プロセスを効率化

業務プロセスを効率化

「次にSFA(Sales Force Automation:セールス・フォース・オートメーション=営業支援システム)による営業活動や、CRM(Customer Relationship Management:カスタマー・リレーションシップ・マネジメント=顧客管理)により業務プロセスを一元化することです。

これにより社員間で受注状況・顧客情報をリアルタイムで共有することができるようになりました。」

これまではそうした取り組みがなされておらず、誰か担当者が1人休むだけでその仕事の進行状況がわからず、工事への指示系統自体がストップしてしまうなど、あまり好ましくない状況に陥っていたといいます。

しかしこうしたことは土木業界ではよくあることだったと語る秋田氏。

「これらの取り組みは自社の利益だけでなく業界全体の利益を生み出すように、業界の意識そのものを変えていきたいと思い、今後ますます進めていきたい分野です。」

Webによるマーケティング

Webによるマーケティング

「3つ目はMUさんと組んで今後さらに力を入れていきたい分野として、Webによるマーケティングやプロモーション、それと連動した広報活動全般を進めていきたいと思っています。」

こうした3つの項目をスラスラとよどみなく語る秋田氏の顔からは、明確な目的意識を持ってトップダウンでDX推進を進めようとする、中小企業経営者のあるべき姿を見てとることができました。

DXを利用した今後の事業拡張構想

DXを利用した今後の事業拡張構想

そんな明確な意思を持った秋田氏の目線からは、単に「IT技術を導入すればそれでいい」といったよくあるDXに対する勘違いも見られません。

そもそもDXというのは、IT技術を使って業務効率化や作業性をアップさせるのだけが目的ではなく、それにより新しいビジネスを創出するのが真の目的です。

秋田氏は例えば、「SRiChat」や「SRiChatPRO」を自社の便利なシステムとして利用するだけでなく、広く一般に利用できるサービスとして販売・提供にも取り組まれています。

それだけで満足すること無く、さらなるブラッシュアップを目指しながら新しいビジネスチャンスへと結びつけようとしています。

「今後は完全防水のカメラと連動させるなど、実際の土木の現場でのタフな利用にも耐えうるシステムとしていきたいと思っています。

それにより、より土木業界に特化したシステムを作り上げ、業界全体の意識改革や生産性向上を促すと同時に、他社さんに対しても堂々と販売できる大きなビジネスの柱としていきたいです。」

SRiChatPRO画像

DXの本質を理解し、着実に推進させる秋田氏の目的意識は明確です。

「これまでは半径100kmを超えると(移動時間の関係で)商売にならないとされていた建設・土木業界の常識を、遠隔システムによってくつがえし新たなビジネスチャンスとしたいと思っています。

また、メーカーとしての材料販売や技術指導といった業務の場合でも、Webによるシステムで距離による制限や問題の相当数にあたる部分が解決でき、サービスの分野にも進出する事ができると期待しています。

これができるようになれば国内のみならず、海外からの需要にも答えることができますので、ますます大きなビジネスへと発展していける可能性があるでしょう。」

現在もベトナムを始めとするアジア各国から技術指導の打診を受けているという同社。

今後ますますの発展を期待させる何かが、秋田氏の自信にあふれた様子からはうかがえます。

土木業界のDX先がけ・技術の架け橋となりたい

土木業界のDX先がけ・技術の架け橋となりたい

最後にどのようなメッセージをこの記事によって伝えたいですか?

そんな質問を投げかけた所、秋田氏からは次のような答えが返ってきました。

「現在、建設・土木業界全体が国土交通省の旗振りのもとで、DX推進が急務とされていますが、現実にはそううまくいってはいないというのが実情です。

そんな中当社は建設・土木業界の中でDXの先駆者として道を拓いて、DXへの糸口をつけていきたいと思っています。

国としてそうした施策に取り組んでいる以上、今後DXに対応できない業者は淘汰されていくことも予想されますので、対応しきれない業者さんの手助けができるツール開発などで、国と業者をつなぎ、さらにはアジアを始めとする国と国との技術の架け橋となりたい。」

それが目下の目標ですと語る秋田氏の口からは、実現を確信させる力強い響きがありました。

まとめ

建設・土木業界のDX推進事例として、今回は岡山の山陽ロード工業株式会社様をとりあえげ、社長の秋田氏にお話をうかがいました。

このインタビューから見えてくるのは、やはり「DXには明確な目的意識が必要」ということでしょう。

場当たり的にITツールを導入すればいいというのではなく、それをなんのために導入し、どのように活用してどういう成果を出していくのか。それを経営者から現場のスタッフまでが統一した理解を持って推し進めることが重要です。

これにより業務プロセスの改善や生産性の向上は生まれ、そこから新しいビジネスが創出されるという、まさに中小企業が目指すべきDX推進のお手本のような例ではないでしょうか。

山陽ロード工業株式会社

山陽ロード工業株式会社

インフラを守り、地域を守る【山陽ロード工業株式会社】

創業:昭和42年4月7日

本社所在地:岡山県津山市

【主な取扱商品】

  • 変位制限装置用「縦型緩衝アンカーピン」
  • 落橋防止システム「パワーチェーン」
  • 真砂土舗装材「ビゼンソイル」
  • 手動式交通遮断器
  • Web会議システム「SRiChat」
  • 遠隔臨場システム「SRiChatPRO」

>>山陽ロード工業株式会社公式ホームページ(文中画像引用共)

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DXportal®編集部

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