【SaaSアプリの利用状況】DX推進において顕在化する3つの課題

【SaaSアプリの利用状況】DX推進において顕在化する3つの課題

テレワークの導入率が高まると同時にSaaS(Software as a Service=Webを通じて利用できる外部のソフトウェア)アプリの普及率も上がっています。

多くのビジネスマンがSaaSアプリを使う中でどんな課題があり、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)推進にどのように影響するのか。

今回はSaaSアプリの利用状況や普及する中で出てきた課題、およびDXに活かすための考え方について紹介いたします。

自社の状況と照らし合わせていただいて、当てはまる課題や取り入れるべき思考を見つけていただければと思います。

ニューノーマルと連動するSaaSアプリの利用内訳

SaaSアプリの利用率はコロナ禍で高まっていますが、その内訳は人々の働き方やコミュニケーション方法が変わったことと連動しています。

キーマンズネットの調査によると、2021年度に一番利用率が高いSaaSアプリは「Web会議システム」であり、2019年度ではおよそ半数だったのに対して、約8割の利用率ともっとも多い数値となりました。

これは皆さんも実感されているとおり、テレワークが主流になりリモート会議をする回数が増えたためと予想できます。

一方で第2位にランクインしている「メール」に関しては、2019年度の時点で約8割と高い利用率になっていますが、2021年度は約6割と若干数値が減りました。

メールに関してはコロナウイルスの影響はほとんどないことと、テレワークでスムーズなコミュニケーションを図るためにチャットアプリが台頭してきたことが理由と考えられます。

また「Web会議システム」に加えて、特に大きく数字が変わったのは「勤怠管理」です。

2019年度の利用率は29%ですが2021年度には45%と2年間で10%以上伸びており、テレワークが主流になったことで、オフィスでの出退勤の処理をSaaSアプリに切り替えた企業が増えたと予想できます。

チャットツールやグループウェアも、在宅ワークにおいてタスクをSaaSアプリ上で共有したりやり取りを円滑にするために、わずかながら数字が増えています。

2年間で起きた変化

2年間で起きた変化

SaaSアプリの利用状況は、2019年から2021年の2年間にかけてコロナウイルスの影響をダイレクトに受けています。

これはニューノーマルにおいてソーシャルディスタンスの確保が叫ばれ「人との接し方」を変えることを余儀なくされたことが原因であり、DXありきではなくコロナありきでデジタル化が進んだことを示しています。

従来Web会議も勤怠管理システムも、SaaSアプリを導入して方法を切り替えることは可能だったはずですが、奇しくもコロナウイルスが蔓延したことにより働き方が急速に変化したのです。

そのために多くの企業が従来のオフィスにおける勤務からテレワークへ移行して、Web会議システムや勤怠管理システム、チャットツールなどの利用率が伸びたといえます。

「距離を保つこと」がコミュニケーションの在り方だけでなく働き方に影響し、社会の構造に変化をもたらしたことがSaaSアプリの利用状況調査にも顕著に表れています。

SaaSアプリを利用するうえでの3つの課題

SaaSアプリを利用するうえでの3つの課題

SaaSアプリを利用する人が増えているのはDXの観点から見て喜ばしいことですが、さらにビジネス変革を起こすためには解決しなければいけない課題が3つあります。

以下の事柄は多くの企業に共通するため、自社に似たようなことが起こっていないかチェックしながら読み進めてみてください。

  • 似た機能を持つツールとの使い分け
  • 利用者のITリテラシー向上
  • ライセンス費用に見合った価値の創出

似た機能を持つツールとの使い分け

似た機能を持つツールとの使い分け

SaaSアプリの利用者の一部からは「導入して効率化になったとは感じられない」という声もよく聞きます。

これは新しいツールを導入しても実際にうまく使いこなせず、旧ツールとの使い分けがうまくできていないことが原因です。

たとえば社内のコミュニケーションを円滑にするためにチャットツールを導入したものの、メールの習慣が根付いているために、チャットツールでメッセージを送った後にEメールで念押しの連絡をするケースがあります。

せっかくチャットツールを導入しても、連絡の手間は2倍になっているため結果として非効率になってしまい、DXを進めるために必要な「業務効率化」を実現できていません

こうした状況を打破するためには、各ツールを使用する目的を明確化する必要があります。

たとえば社内のスタッフ同士のやり取りは効率化のためにチャットツールに統一し、メールは取引先など社外の人とのやり取りに使うなど、それぞれの使い方を区別すれば二重に同じ内容を伝える必要はありません。

「何を達成するためにSaaSアプリを使っているのか」を各自が理解し、その先にある効率化などの目的を把握できれば、こうした事象が起こるのを防げます。

利用者のITリテラシー向上

利用者のITリテラシー向上

SaaSアプリの利用者が不便に感じる点の1つとして「利用者側のITリテラシーの向上」があげられます。

アプリは頻繁にバグ修正のためのバージョンアップが行われ、それに合わせてデザインや操作方法が変化することもしばしばあります。

アプリの利用になれていないビジネスパーソンは、見た目が変わったことにより使いづらさを覚えてしまい、頻繁に変化するSaaSアプリよりもオンプレミスのツールを好むこともあるのです。

しかしSaaSアプリの利用率に見られるように、今の時代はシステム全体がクラウドへ移行しつつあるため、新しいツールに適応できないままではDX推進を飛躍させることは難しいでしょう。

こうした「アプリ側の変化に対処できないこと」はクラウドが主流になってきたからこそ起こり得ることであり、新しいものを使いこなせるか、使うのをあきらめてDXの波においていかれるかは利用者のITリテラシーの有無にかかっています。

今後クラウドが主流になっていくことを踏まえると、運営側の変化に合わせて利用者もITリテラシーを向上させて、デジタル技術についていけるスキルを身につけることは必須になるのです。

ライセンス費用に見合った価値の創出

ライセンス費用に見合った価値の創出

3つ目の課題は、SaaSアプリを使うための高いライセンス費用に見合った成果が出ないことです。

たとえばMicrosoftが提供しているオフィス専用のSaaSアプリを統合したプラン「Microsoft 365 Business Standard」は、1アカウントあたり毎月1,360円かかります。

1人あたりに換算するとそこまで高い金額には感じられないかもしれませんが、全社員に1アカウントずつ付与するとランニングコストとしては大きな金額になります。

したがって、SaaSアプリを使ううえでは高いライセンスに対して本当に成果が出ているのか?ということを意識しなければいけません。

ライセンス費用以上の売上を見込める、もしくは売上に匹敵するほどの価値が出ていなければ、ただ支出が増えるだけになってしまいます。

SaaSアプリを使うことで自社が得られる価値は何なのか、また導入したことで得られた成果を分析して次に活かすことが、ツールを使うと同時に考えなければいけない項目です。

DX推進に必要なSaaSアプリとデジタル技術のコラボ

【SaaSアプリの利用状況】DX推進において顕在化する3つの課題

会議の在り方をはじめとして、人々の働き方を変えているSaaSアプリをDXに最大限活かすためには何をするべきなのか。

SaaSアプリの機能を活かすためには、単体で使うのではなく他のデジタル技術とコラボさせることが必要です。

たとえば財務経理業務のSaaSアプリへの移行を例にとってみると、移行した段階のメリットとしては端末を問わず入力できることや、自宅から作業できることがあげられます。

ここからさらにDXを進めるためには、利用者が抱えている課題を明確にしてデジタル技術を使って解決することが鍵になります。

例えば経理作業をリモートワークにした際、受発注に伴う仕訳作業が煩雑となることも考えられますが、その場合はRPA(Robotic Process Automation=人に変わり業務プロセスや作業を自動化する技術)の導入が有効的です。

Excelなどのデータを会計システムに読み込ませてRPAにより自動入力できるようになれば、従来膨大な時間をかけて作成していた書類を短時間で作成できます。

さらに受発注システムとの連動を試みれば、受発注業務がクラウド上で行えるだけでなく、それらを帳簿に起こし自動仕訳をした上で、納品書や請求書、はては決算書まで難なく作成できるのです。

この例からは、SaaSアプリとRPAを組み合わせることでリモートワークを促進するだけでなく、作業の効率化や誤入力防止につながり複数のメリットを享受できることがわかります。

まずはSaaSアプリの導入でDX推進のスタートを切り、使用する中でスタッフが抱える悩みを見つけてデジタル技術を解決手段としてかけ合わせること。

こうした流れにすることで、SaaSアプリとデジタル技術の相乗効果が生まれ、自社のDX推進が目覚ましい成長を遂げるきっかけを作り出せるのです。

まとめ

SaaSアプリの利用状況や普及に伴って顕在化する課題、DXへの活かし方を解説してまいりました。

コロナ禍でSaaSアプリは業務効率化のきっかけとなり、利用状況は人々のコミュニケーションの在り方や働き方と連動して大きく変わってきています。

しかし一方で利用者が上手く使い切れていない、ライセンス費用が高いなどの課題も残されており、各自がITリテラシーの向上のために自助努力をして価値創出のために試行錯誤することが求められます。

またSaaSアプリの利用と並行して業務を進める中で見えてきた課題を明確にし、問題の解決手段となるデジタル技術を組み合わせることがDX推進を飛躍させる秘訣です。

日頃から利用しているSaaSアプリはテレワークのツールだけでなく、DXの効果を高めるきっかけの1つにもなり得ます。

自社の利用状況や課題を今一度見直していただき、メリットを最大化できる方法はないか、価値を創出できる源はないか探してみてください。

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この記事の執筆者

株式会社MU チーフエンジニア / ディレクター

中野 太賀

エンジニアセクションのトップとして、株式会社MUにジョイン。 サーバーサイドエンジニア出身の安定感を生かした、リソースマネジメント、プログラム実装を行う。趣味はサウナと美味しいものを食べること。

株式会社MU チーフエンジニア / ディレクター

中野 太賀

エンジニアセクションのトップとして、株式会社MUにジョイン。 サーバーサイドエンジニア出身の安定感を生かした、リソースマネジメント、プログラム実装を行う。趣味はサウナと美味しいものを食べること。

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