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銭湯のDX活用事例
銭湯を次世代以降にも継続していくにあたり、持ち上がる課題。
その課題解決に向けて、DX推進を行っている銭湯や関連サービスの事例を紹介します。
顧客データを最大限有効活用|金春湯
品川区大崎に所在する「金春湯」は、1950年に創業。
長年家族経営により運営されてきており、地元住民に愛されている銭湯です。
今後も金春湯を存続させていくため、家族の高齢化を機にメーカーにエンジニアとして勤めていた4代目が金春湯を継ぎ、DXに取り組みました。
金春湯が導入したのは、4代目が開発した「1日の来店者数と売上を管理するシステム」。
これにより、当該システムに入力したデータがグラフ化されたうえで経営陣のグループLINEに転送され、経営陣の間で来店者数と売上に関する情報共有が出来るようになりました。
また何曜日に来店者数が多いのかなど、従来であれば感覚的に捉えていたものが、システム導入により正確に把握できるようになったのです。
これにより、火曜日の来店者数が少ないことが判明したため、定休日を月曜日から火曜日に変更。
さらに金春湯ではサウナを利用する顧客も多いことから、システムで得られるデータを元にサウナの混雑状況に関する情報発信をホームページ上で行ったところ、新型コロナウイルスへの感染を心配する顧客から「混雑状況が分かりやすい」と好評を得ました。
経営の効率化とユーザビリティの向上を両立した好事例といえます。
安心・快適に来店してもらうためのデータ活用|小杉湯
杉並区高円寺に所在する「小杉湯」は、1933年に創業。
多い日には1,000人もの来店者数を誇り、20代~80代といった幅広い年代に愛されている銭湯です。
小杉湯がDX推進を行うこととなったきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大。
日々感染拡大に関する情報が飛び交う中、感染を恐れながらも銭湯を利用したいという顧客から、混雑状況の問合せが毎日のように入るようになりました。
しかしスタッフも銭湯の換気や消毒、銭湯の運営に対応しなければならない状況下で、ずっと電話対応に時間を割く訳にもいきません。
そこで小杉湯が導入したのが、クレジットカード決済や電子マネー決済等に対応し、会計を行うことで売上等の様々なデータを抽出することが可能な「Airレジ」というPOS(Point Of Sales」販売時点情報管理/以下POS)レジアプリです。
このPOSレジによって来店者数から混雑状況に関するデータを抽出しSNSで発信したところ、顧客からは「混雑状況が分かりやすい」と好評を得ました。
また、POSレジの売上データからアイスやドリンクといった店頭販売している商品の売上を分析し、商品ラインナップの充実化に活用しています。
従来は来店者数や商品販売に関するデータ取得を行っていなかったこともあり、スタッフの感覚がすべてでしたが、POSレジによる抽出データによって正確な数値の把握が可能となり、経営の効率化に繋がりました。
それ以外には、小杉湯関係者全員、正社員、勤務時間帯ごとなどの階層に分けたグループLINEを設けて、適宜情報共有を行うことにより、運営効率化を図っています。
温浴施設をデジタルでサポート|複合型温浴システム「湯~ランド」
NJC(日本事務機器株式会社)が提供するSPA施設向けソリューション「湯~ランド」は、SPAやスーパー銭湯、エステなどの機能を兼ね備えた複合施設向けに開発された複合型温浴システムであり、会計・バックオフィス・外部機器の情報をつなぎ合わせる機能が搭載されています。
具体的には、上図のような機能が搭載されており、これによって従来人が行っていた金額管理や商品販売対応といった業務をデジタル化することができ、売上情報等のデータ抽出や人的ミスの防止、機械的な事務業務の自動化についてシステム上で総合的に管理することが可能です。
また各種業務をデジタル化することにより、顧客の利便性も向上します。
本システムを導入した施設では、複数施設やサービスの情報連携が瞬時に行われることによって、正確かつスピーディーな対応が可能になったと好評です。
このようなシステムの導入は、これまで人の手ですべて対応してきた温浴施設の未来を変える要といえます。
まとめ
今回は銭湯のDX導入事例について解説しました。
銭湯を次世代にも継続させていくには、これまで人の感覚や勘に依存していた経営からの脱却が必要です。
紹介した銭湯のように業務をデジタル化することによって、経営者の高齢化や感覚的な家族経営からの脱却といった課題を解決することができます。
また業務のデジタル化によってナレッジマネジメントが進めば、業界同士の情報交換等も可能です。
さらには作り上げたシステムの販売等、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も秘めています。
デジタル技術で効率化できる部分は効率化し、人と人のふれあいなどアナログで残す部分は残すという、「ヒト」と「コト」のバランスを考慮したDX推進。
本事例を参考にどのようにデジタル化を行っていくことが最適であるかについて、ぜひ検討してみてください。