日本の古き良き文化である銭湯。
地元の銭湯に足を運んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
今回は現代の銭湯が抱える様々な課題と、それを解決するDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)導入事例について解説していきます。
目次
「地元で愛される銭湯」を継続するための課題
企業がDXを推進するためには、まずは自社の課題をリストアップすることが必要です。
銭湯の場合は、何より今、「地元で愛される銭湯」を継続しつつ、次世代編へ向けて経営を継承していくことが大きな課題となっています。
そのカギとなるのは次の4つです。
家族経営からの脱却
銭湯は、従来家族経営により引き継がれてきましたが、経営者の高齢化に伴う後継者不足という問題に直面しています。
これを解決するためには、家族だけに頼った経営方針ではなく、人を雇用しても成り立つ経営へとシフトさせていく考え方が必要です。
感覚経営からの脱却
これまで家族経営により継続されてきた銭湯。
その中で、感覚的な経営が根付いていたことにより、後継者へ引き継ごうとしても体系立てたノウハウが確立していないという問題があります。
例えば「今日は忙しかった」という事象についても、普段と比較してどれだけ客数の増加があったのか、どの時間帯に多くの来店があり、顧客層の内訳はどうであったかなどについて説明できない状態だったのです。
このような状態から脱却するためには、これまで経営者の勘に頼っていた経営を「見える化」する必要があります。
ナレッジマネジメントの必要性
銭湯を次世代以降も残していくには、経営ノウハウを体系立てたナレッジ(業務を行う中で得た知識)として蓄積し、継承していく必要性があります。
ナレッジには業務ノウハウのみならず、施設の技術的な内容も含めていく必要がありますが、施設の配管図や設計図が無く、銭湯専門の職人の高齢化が進んでいるというのが現状です。
こうした技術面でのノウハウ化が困難になっていることも、銭湯の次世代継承を妨げる原因となっています。
また、この問題は今後の銭湯自体の利用に響く問題であることから、ナレッジの蓄積は急務の課題です。
経営ノウハウや技術面のナレッジマネジメントが出来るようになれば個人から組織へ、ひいては業界同士での情報交換が進むようになります。
同時に作り上げたシステムを販売するなど、新たなビジネスチャンス創出の可能性も広がるでしょう。
「銭湯」と「デジタル」の相性
ここまで銭湯におけるデジタル化の必要性について解説してきましたが、銭湯のすべての業務をデジタル化(デジタライゼーション)したほうが良いわけではありません。
銭湯に訪れる顧客は、風呂に入ることだけが目的ではなく、スタッフとのちょっとした交流や、銭湯独特の雰囲気を楽しむために利用する場合もあります。
そうしたニーズがある中で、すべての業務をデジタル化してしまうと、せっかくの銭湯の価値や持ち味を損なうことになりかねません。
大切なことは、そのサービスを利用する「ヒト」と「コト」のバランスを考慮したうえでデジタル化を行うことなのです。