「風邪を治すにはどうする?」あなたならこのような質問にどう答えるでしょうか。
なぜこのような内容を取り上げたかというと、この問いに対する回答で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)推進における問題点が見えてくるからです。
DXを進めるにあたって、色々な施策を打っているけれど、効果を感じられないときはどうしたらいいのか。
この問題を解決するために、DX推進ですべき重要な施策として「成熟度を評価すること」があげられ、その基準が「風邪を治す方法」というテーマから見えてきます。
DXの効果測定について悩んでいる経営者の方や、DXを実施してもいまいち効果が実感できないIT部門担当者の方は、記事の内容を参考に、自社のDX推進の問題点と、その解決方法を見つけて出してください。
目次
「風邪を治すにはどうする?」の一般的な答えは、応急処置
まず、DX推進ですべきことを知るために、「風邪を治す方法」を取って考えてみます。
一般的には
- 薬を飲む
- 安静にする
- 体を温める
- 病院に行く
などの考えにたどり着く人が多いと思います。
たしかに、これらの答えは間違っておらず、風邪を治すという目的に到達するために、必要な手段といえます。
しかし、あくまでも風邪を引いた状態になって行う策であって、応急処置に過ぎず、一時的に症状をよくするための対応でしかありません。
風邪を治すために薬を飲むことは、効果があるかもしれませんが、そもそも風邪を引いたのには、何かしらの原因があるはずです。
ですから、なぜ風邪を引いたのか、原因を突き詰めて考えて、そして薬を飲むことは、本当に自分に合っているのかを確かめなければなりません。
たとえば、喉の痛みからくる風邪に対して、薬を飲んだら症状は緩和されると思いますが、原因が部屋の乾燥だとしたら、加湿器などを利用しないと、部屋の湿度は低いままで、喉の痛みが再発する可能性があります。
さらに、仮に部屋に加湿器を設置したとしても、また喉の痛みから来る風邪が再発した場合は、他に原因も考えなければなりません。
このように、物事に対する原因を究明して、対応策を講じた際に、成果がどの程度表れるのかを確認することが、DX推進におけるヒントになります。
風邪を引いた場合に一番良いのは、薬を飲むなどの対症療法ではなく、医者にかかることであり、同じように、DX推進も指標化し客観的に判断できるようにして、専門家のアドバイスを受けることが必要です。
DX推進ですべきなのは「成熟度評価」
「風邪を治すにはどうする?」のケースでわかる通り、物事に取り組む際に大切なのは、得られた成果を数字で評価する「成熟度評価」であり、経営者が推進するDXにおいても同様です。
では成熟度評価をするために必要となる2つの事項について、詳しく解説してまいります。
- DX推進指標から、企業成熟度を測る
- 必要に応じてベンダーの力を借りる
DX推進指標から、企業成熟度を測る
中小企業庁の年次報告「中小企業白書」によると、IT導入・利用を進めようとする際の課題が「IT導入の効果がわからない、評価ができない」と回答した企業は、実に全体の29.6%という結果が出ています。
なぜこのような状況に陥ってしまうのかというと、これはひとえに、DX推進の効果を計る軸がないからであり、まさに「企業成熟度」を評価できていないことが原因です。
「企業成熟度」についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
【DX推進の指標例】
- 社内スタッフのITリテラシーはどの程度なのか
- DXを進めるために必要な人材はそろっているか
- システム基盤は適切な状態か
- 経営者はDX推進にどの程度関与しているか
こういった点を具体的に数字で記録して、定点観測しないことには、DXを進めているといっても、成果がどのくらい表れているのか、チェックする術がありません。
各項目を総合的に評価して、自社が今どの段階にいるのかを知ることが、DXの成功に向けて、適切な策を打つための秘訣といえます。
企業において「DXの戦略を打ち出したはいいものの、どの程度の効果があるのかわからない」という場合は、まず現時点での自社の状況を評価してみることが大切なのです。
評価を計測することによって、DXの中でもどの施策が効果があるのか、投資する価値があるのかを見定める根拠となります。
また、他の企業と比較して自社がどの程度のレベルなのか見る際は、経産省が打ち出している6段階の「DX推進指標」を基に、現状を見比べてみることが役に立ちます。
必要に応じてベンダーの力を借りる
企業成熟度を評価するためには、正しく自社の現状を知ることが不可欠ですが、社内スタッフだけでは心もとないケースもあると思います。
風邪を引いたときには、医者という専門家の手を借りるのが必要なように、DXにおいても、ITやデジタル領域に詳しいベンダーの力を借りることは、DX推進に拍車をかけるために効果的な手段です。
DXを専門としているベンダーの中には、
- 自社に適切なデジタル化の全体像を設計できるITアーキテクト
- AI(Artificial Intelligence=人工知能)の学習を設計するAIエンジニア
などのスキルを有した人材がいますので、彼らの知見を取り入れると、自社の成熟度をより正確に測ることができます。
DX推進は、自社の価値を左右する大きな要素ですから、経営という目線においても、どの程度DXを戦略に反映できているかどうか、ベンダーのアドバスをもらいながら測定するのにも効果があるといえます。
まとめ
DX推進において欠かせない「成熟度評価」について、風邪を治す方法という一般的なテーマを糸口として、企業が実施するべき内容を解説いたしました。
風邪を治すには、薬を飲むなど症状を抑えるための方法を取ってしまいがちですが、真因にたどり着くためには、ライフスタイルや食生活など根本的な部分を踏まえて、対処法に価値があるのか測定することが必要です。
DXも同様に、企業の状態が今どのくらいのレベルで、施策を講じたことによってどんな効果が得られたのか、数値に表して確かめなければ、今後どう対処していくべきか、漠然とした方向性しか出てきません。
DX推進指標やベンダーの知見を借りながら、自社が置かれているステージと、ステップアップするために何をしなければいけないのか確認し、状況に合わせて適切な策を取ることが、DXの成功につながるのです。