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組織文化改革のステップ
DXの目標は組織文化を変えることではないため、現状の組織文化のままで滞りなくDXが行えるのであれば理想的です。
しかし、現在の文化がDX推進の妨げになっている場合は、改革を進めていかなければなりません。
組織文化の改革は、時に大きな痛みを伴うこともありますが、中長期的な組織の成長のために辛抱強く行うべきものです。
そのステップについて解説します。
社内体制の整備
組織文化の変革は、口で言うほど簡単なミッションではありません。これまで組織内で脈々と受け継がれてきた文化を変えるということは、その組織に属するすべての人材が関わる話であり、壮大なプロジェクトです。そのため、組織の隅々にまで、変革を浸透できるような社内体制を築いてから行う必要があります。
可能であれば、部門横断型のタスクフォースを組んで、組織内のしがらみに左右されない体制を作り上げてから行うようにします。
このとき、経営者のコミットメントは重要な鍵となります。「DXによって組織をより良く変える」といった、確固たる意志やビジョンを組織の隅々まで届けなければならないのです。
理想像の決定
社内体制が十分に整備されたら、「より良い組織」とはどのような組織なのかを、プロジェクトチームで議論します。これはいわば、組織が目指す理想像を明確化するプロセスです。
組織の方向性を決定づける重要なポイントであるため、経営者の意向は重要ですが、それが独りよがりのものであってはなりません。
経営者の意向を汲みながらも、プロジェクトチームによって「組織全体の意思決定」に昇華させていく必要があるでしょう。
現状の可視化
理想像が明確になったら、次は現状の文化と理想がどれだけ乖離しているのかを考えます。
とはいえ、「今の自分たちの組織文化とは○○だ」とひと言で言い表せる人はほとんどいないでしょう。これは単に組織文化が重層的に形作られたものであるだけでなく、組織の歴史とともに深い部分、無意識下にあるものだからです。
この無意識下にある文化を言語化し、可視化することで現状を把握できるようにするステップが欠かせません。
仕事の進め方や組織的なクセ、暗黙の了解となっていることなど、普段はフォーカスされない深い部分にまで徹底的に目を向け、目に見える形で共通認識できるようにします。
行動基準の決定
組織文化の現状と理想を照らし合わせたら、どこをどのように変えていけば良いのかを検討し、具体的に行動基準として決定していきます。
この行動基準は、自分たちの組織のみならず、外部に対しても公表できるものであるべきです。それが、組織の「ブランド」にも繋がっていくでしょう。
ただし、外の目を意識しすぎるあまりに、その基準が実行不可能なものになってしまっては意味がありません。様々な意見が出たとしても、最終的にはもっとも重要である5つ程度まで絞ることも重要です
当然ながら、一度決めた行動基準を未来永劫続けなければならないわけではありません。必要に応じて、変更や追加をするなど臨機応変に対応していくことが大切です。
組織文化の浸透
最後に、決定した理想とする組織文化を、しっかりと組織内でに浸透させていきます。
これは、一朝一夕で行えるほど簡単なものではなく、このプロセスがもっとも時間と手間を要するものです。
理想である新しい組織文化とそれを形作る経営者やリーダーの言動、採用や評価基準などの間に齟齬がないか、常に確認をしながら時間をかけて取り組んで行く必要があります。
リーダーシップの重要性
ここまでお伝えしたように、組織文化改革とDX推進において、リーダーシップは極めて重要な役割を果たしています。
DXと並行して組織文化を変革していくために必要なリーダーの条件には次のようなものが挙げられます。
- デジタル時代におけるリーダーの役割と変革へ向けた戦略的アプローチを理解している
- ビジョンを浸透させ、積極的に動ける組織づくりに取り組める
- 変革に必要な要素(ビジョン、戦略、推進力、対人関係、専門性、マネジメント)をバランスよく備えている
- 組織改革の進め方やフレームワークを理解している
変革型リーダーシップは、組織文化改革とDX推進の両面で不可欠です。リーダーは、変革の必要性を説き、ビジョンを示し、組織全体を巻き込みながら、着実に変革を推進していく役割を担っているのです。
従業員エンゲージメントの強化
従業員エンゲージメントとは、組織が目指す方向性(企業理念など)に従業員が共感し、自発的に「会社に貢献したい」と思う意欲のことを指しています。組織に対する信頼の度合いや、組織とのつながりの強さと捉えても良いでしょう。
従業員エンゲージメントの強化は、リーダーシップの重要性と対を成して必要となるDX成功の鍵です。
従業員エンゲージメントを強化するためには、以下のような施策が効果的でしょう。
- コミュニケーションの活発化:従業員の積極的な業務への参加を促すために、双方向のコミュニケーションを推進する
- 人事制度や育成施策の見直し:インセンティブ制度や研修プログラムを改善し、従業員のモチベーションとスキルアップを支援する
- 職場環境や労働条件の改善:従業員が仕事にやりがいを感じ、意欲的に取り組めるような環境づくりに注力する
- 学べる環境の整備:従業員の成長を支えるため、教育研修の機会を充実させる
- エンゲージメント指標の測定:従業員エンゲージメントの状況を定期的に把握し、施策の効果を検証する
従業員エンゲージメントの強化は、離職率の低下や生産性の向上などのメリットにもつながっていくでしょう。
そのためにも組織は、従業員の愛着心や思い入れを高めるための取り組みを積極的に進めていく必要があるのです。
まとめ~組織文化を改革しDXで競争優位性を築く
DXとは、デジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデル、ワークフローを変革し、新たな価値を生み出すことを指します。DXの成功には、単なる技術導入だけでなく、組織文化の改革が不可欠です。
組織の価値観、信念、慣習は、新技術を取り入れ、活用していく際に大きな影響を与えます。DX成功のためには文化的な基盤づくりが重要です。
技術と文化のギャップを埋めるには、組織文化の現状評価、段階的な改革計画、効果と反省点の評価といったステップを踏むことが必要でしょう。
これを進めていく過程において、リーダーシップは組織文化改革とDX推進の要であり、変革へのビジョンを示し、従業員の積極的な参加とサポートを促すことが求められます。同時に、従業員のスキルアップとサポート体制の整備も欠かせません。
組織文化を改革し、DXを推進することで、組織は市場での競争優位性を築くことができるでしょう。
特に中小企業においては、経営者のリーダーシップのもと、全社一丸となって変革に取り組むことが重要であり、それこそがデジタルの普及によって消費者の需要が多様化したデジタル社会で、競争優位性を築きながら生き残っていく鍵となるのです。