DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くすること」を指します。
この対象には、製品・サービス、ビジネスモデル、ワークフローだけでなく、企業文化や風土の変革までもが含まれています。
DXの成功には、単なるデジタル化やIT化だけでなく、組織文化の変革が不可欠です。その理由の一つは、企業の文化や価値観、これまでの慣習が、新技術を取り入れ、活用していく際に大きな影響を与えるためです。
組織文化の変革なくして、DXの真の実現はありません。そのため、経営者はデジタル技術の導入と並行して、組織風土の改革に着手する必要があるのです。
本記事では、DX成功の鍵を握る、従業員の意識改革、スキルアップ、新しい働き方への適応など、ソフト面の変革について解説します。
目次
組織文化の役割
組織文化とは、組織内で共有されている暗黙のルールや規則、価値観のことを指しています。明文化されていないものの、その企業の組織文化は、企業が成長し続けるかを分ける要因の一つです。
DXを進める過程において、組織文化は新技術を取り入れて、活用しておけるか否かに大きな影響を与えます。
- 価値観を共有できる
- スピード感のある意思決定ができる
- 風通しの良い職場が作れる
良い組織文化は、様々なプラスの効果をもたらしてくれるでしょう。
DX成功のためには、単なる技術導入だけでなく、組織文化という土台を整える必要があります。
経営者は、デジタル化と並行して、組織文化の変革にも着手すべきだと言えます。
組織文化を決める要因
どのような組織であれ、その組織独特の文化が存在します。企業の組織文化は、主に次のような要因によって決定づけられて来たものです。
創業者の想い
企業や団体など、その組織を作った創業者の想いは、多くの場合において組織文化の要となっています。
創業時の想いや苦労談・成功談などは、直接的・間接的に組織内で共有されています。そもそも組織を立ち上げた人物の想いが礎となり、その想いが受け継がれていくなかで組織文化を創り出していくのです。
リーダーシップのあり方
「仕事をどのように進めるのか」など、リーダーシップやマネジメントのあり方は、組織内の人材の行動や価値観を大きく決定づけます。
リスクを取ってでも挑戦するのか、それとも安全策で進むべきなのかなど、企業活動を進める上ではリーダーの選択が不可欠です。このリーダーの決定によって、組織の進む先は大きく変わります。
組織内の人材は、リーダーの姿勢から組織のスタイルを学び、自身の行動基準を作っていくのです。
人事評価
人事評価の仕組みによって、組織の価値観は変わります。
人事評価とは、その組織が求める人材の能力や態度を可視化するものであるからです。
既存のやり方を踏襲することが最優先されるのか、それとも枠組みにとらわれない自由な言動・発想が高い評価を得られるのかなど、どこを評価されるかによって一人ひとりの行動が変わってくるでしょう。子の積み重ねが、組織文化を形作っていくのです。
組織の経験
これまでにその組織が、どのような経験をしたかによっても、組織文化は変わっていきます。
例えば、経営危機を乗り越えた経験や新たなビジネスを開拓した経験など、成功・失敗を問わず組織内で広く共通されている経験は、組織全体に大きな影響を与えます。時間が経過したとしても、企業内の教訓として語り継がれることによって、直接的には経験していない人材にも影響を及ぼします。
技術と文化のギャップを埋める
DXを進める過程で新技術を導入することは、中長期的には利便性や生産性を高めることが期待される一方で、既存の業務フローに変更が生じるなど、現場に与える影響は少なくありません。DXをさらに進めていけば、業務内容が大きく変わったり、組織内の体制の見直しなど、働く従業員一人ひとりにとって大きな挑戦を伴う場合もあります。
この際に、新しい技術の導入に否定的・消極的な姿勢がみられることは少なくありません。
これまで培ってきた企業文化が経営者や従業員の間に根強く残っていることが、変革を妨げる要因になってしまう可能性があるのです。
このような事態に陥らないために、「技術と文化のギャップを埋める」という発想が重要です。具体的には、以下のような方策を検討するとよいでしょう。
- 異文化を持つ人（外部の有識者や様々なステークホルダーなど）との意識的な対話を通じて、水面下に隠れているギャップを知る
- 海外派遣研修などを通じて、デジタル技術のトレンドを学び、体感して得た気づきを組織内で共有する
技術と文化のギャップを埋めるには、組織全体でのコミュニケーションと学習が欠かせません。
経営者は、新技術導入に伴う文化的な課題を認識し、積極的に社内での対話と変革を進めていく必要があるでしょう。
