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企業のメタバース活用事例
2021年はメタバース元年と言っても過言ではないほど、多くの企業が参入や事業展開を表明しました。
株式市場においても、アパレルブランドを展開している株式会社ANAPが、メタバース領域に参入することを発表した瞬間にストップ高になるなど市場の感度も高くなっています。
2023年は生成AIに話題を奪われてしまった面はありますが、メタバースの認知度や重要性は確実にアップしています。すでにメタバースに関するビジネスは大きく動き始めているのです。
この章では実際にビジネスに活用した企業の先進的な事例を紹介します。
サンリオ
「ハローキティ」や「マイメロディ」など、キャラクターのライセンスビジネス等を展開している株式会社サンリオ(以下、サンリオ)は、メタバースを活用した音楽イベントを開催しました。
当時は、コロナ禍によりイベントの開催が自粛されていましたが、メタバースの世界では感染症のリスクがないため、ユーザーも安心して過ごすことができたのです。
イベントでは複数のフロアを設け、有料フロアではバーチャルアーティストのライブを開催、無料フロアではサンリオキャラクターのライブを開催しました。
また無料フロアは、サウナやカフェなどコミュニケーションスペースとしても利用可能とし、更にショップも展開してデジタルとリアルグッズを販売。
バーチャル空間を最大限に活かした収益化、ブランド認知の拡大、コミュニティーの活性化に繋げたのです。
サンリオはテーマパーク事業も展開しており、今後はイベントだけではなくVRを活用したさらなる体験型エンターテイメントの展開も狙っています。
ナイキトした企業といえるでしょう。
日産
自動車メーカーである日産自動車株式会社(以下、日産)は、期間限定イベントとして仮想空間上に「NISSAN CROSSING(日産クロッシング)」を2022年1月11日にオープンしました。
イベントでは仮想空間上にEV(Electric Vehicle:電気自動車)の「アリア」を設置して、「日産アリアとめぐる環境ツアー」をテーマに世界の地球温暖化問題を考えるツアーを開催したのです。
メタバースは体験型としての没入感を強く得られるため、企業理念やメッセージが伝わりやすく、新規顧客の獲得やファン化の効果が期待されました。
日産はメタバース内でカーボンニュートラル(製造業における環境問題に対する活動)をユーザーと一緒に考えることにより、企業価値と商品価値を上げることが狙いだったのです。
メタバースの運営にDAOが果たす重要な役割
メタバースとDAO(分散型自律組織)は一見別物のように思えますが、実はお互いを組み合わせることで大きな可能性を秘めています。つまり、メタバースの発展において、DAOが重要な役割を果たすと考えられるのです。
ここでは、メタバースの運営におけるDAOの意義や可能性について解説します。
DAOとは
DAO(Decentralized Autonomous Organization/通称DAO)とは、日本語では「分散型自律組織」という意味を持つ、ブロックチェーン技術を活用したWeb3.0時代の新しい組織形態です。
株式会社などに代表される一般的な組織はいわゆる「中央集権型組織」と呼ばれるピラミッド型の組織構造であり、組織のリーダーや管理者が存在します。
これに対して「分散型自立組織」であるDAOは、参加者同士が協力し合いながら平等に組織運営を行います。
特定のリーダーや管理者がいなくても、世界中の人々が協力して事業を推進することができるのがDAOの特徴です。
DAOの主な特徴は以下の通りです。
- 分散化:中央集権的な管理者が不在で、参加者全員で運営される
- 自律性:スマートコントラクト(ブロックチェーン上にあらかじめ設定されたルール)により、トランザクション(取引)やブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガー(きっかけ)に運営ルールが自動的に実行される
- 透明性:すべての取引や意思決定がブロックチェーン上に記録され、誰でも確認できる
メタバースとDAOの関係性
メタバースとDAOは、人々が自分たちの生活やコミュニティのコントロールを自分たちに取り戻す方法であるという点で共通しています。
暗号資産やNFTに代表されるブロックチェーンの応用、さらにはメタバースといったWeb3.0のテクノロジーと密接な関連性があるのです。
DAOはインターネット上のブロックチェーンを活用した組織であるため、メタバースのようなオンラインコミュニティを形成するのに適しています。
メタバースにおけるDAOの役割
メタバースの発展には、分散化と自律性が求められます。DAOはその実現に不可欠な存在であり、今後もメタバースとDAOの関係性はますます深まっていくでしょう。
特に、DAOによる民主的な意思決定や透明性の高い組織運営は、メタバースにおけるコミュニティ形成や経済活動の基盤となります。
メタバースとDAOを組み合わせて活用することで、新たな価値創造や社会変革につながる可能性があるのです。
DAOがメタバースにもたらす具体的なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
民主的な意思決定の実現
DAOには中央集権的な管理者が存在しないため、DAOを通じて、メタバース内のコミュニティやプロジェクトの運営に参加者全員が関与できるようになります。
トークンホルダー(トークンを保有している人)による投票により、組織の方針やプロジェクトの承認が得られるため、DAOは意思決定をより民主的にします。
透明性と信頼性の向上
ブロックチェーン上で動作するDAOは、メタバース空間の運営における透明性と信頼性を高めます。
すべての取引やルールがスマートコントラクトに組み込まれ、自動的に執行されるため、不正が起こりにくいというのは大きなメリットです。
DAOは組織の意思決定がコミュニティの投票によって自動的に集計および実行されるため、情報の透明性が高い組織と言えるでしょう。
経済活動の活性化
DAOを活用することで、メタバース内での仮想通貨による取引やNFTの発行などの経済活動が容易になります。
これにより、メタバース経済の活性化が期待できます。
まとめ
既に多くの企業がDXの一環として参入し始めている、メタバースの基礎から企業の活用事例を解説しました。
メタバースはインターネットの枠を超えた現実世界との融合により、社会や産業の根底を大きく変えるパラダイムシフトを起こす可能性があるフロンティアです。
メタバースを産業化するには、法律やガイドラインなど整備すべき課題はまだまだ多くありますが、未完成な産業だからこそ、企業としての大きなビジネスチャンスが拡がっているのです。
加速度的な進化が予測されるメタバースの可能性と真剣に向き合い、ビジネスの拡大を狙ってみてはいかがしょうか。