2025年の崖を目の前にした現代の企業において必須の施策DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)は、まさに企業の命運を決めるプロジェクトともいえます。
当然その推進リーダーというのは重要な責務を担っており、DX推進リーダーの力量いかんによって企業の未来が変わるといっても言い過ぎではありません。
そこで、ここで改めてDX推進リーダーに求められる役割や能力を5項目に分けて解説いたします。
企業のDX推進リーダーを決める際や、リーダー自身が成長していくための物差しとして、ぜひともご利用ください。
目次
DX推進リーダーに求められる5つの力
企業のDX推進リーダーを任されるというのは、ベンチャー企業の経営者をやることと相違ないほどの立ち回りが要求されます。
それは単なるプロジェクトリーダーの枠を超えて、未知の領域への挑戦が求められるからです。
そんなDX推進リーダーに求められる力とは次の5つ。
- 自社事業への理解
- 社内外の人脈
- デジタルビジネスへの知見
- エンジニアリングの知識
- 忖度のないリーダーシップ
順に解説していきます。
自社事業への理解
企業のDXを推進していくということは、当然ながら現在の自社の事業内容に関しての知識が求められます。
それも、扱う商品やサービスに対しての知識があるというだけでなく、それらを取り巻く事業領域全般に渡る知識が求められるのです。
さらにいえば製造業などの場合、製造現場の知識や経験だけでなく、営業や事務作業など、自社の製品を販売するためにはどのような業務が行われていて、それらがどのように統合されてサイクルとして回っているのかを理解していなければなりません。
現在の業務を改革し、新しい価値を創出していくというDXにおける最終目標を達成するためには、ベースとなる自社の正確な分析ができる知識を有していなければ何も始まらないということです。
社内外の人脈
しかしそうはいっても、1人のスタッフが社内の隅々までをすべて知りつくしているということは、現実問題として不可能です。
そのため現場の意見などを吸い上げ、課題を見つけ出すというプロセスを踏まなければなりません。
その際に他部署の協力を仰いだり、複数の部署を横断するシステムを設計する場合など、社内の人脈が広い人物であればあるほど、そのプロジェクト推進は円滑に回るでしょう。
DX推進リーダーは企業内で大きな予算や権限を持つことにもなるため、ともすれば社内で警戒や敵対の対象ともなりやすいため、それらをポジティブに導きDX推進を実行する社内の人脈力が求めれます。
さらにいえば、DX推進は自社のみで完結することはほとんどなく、社外ベンダーや多くのステークホルダーたちと連携してことに当たる場合も少なくありません。
そうした際にも社外に広く強い人脈を持つ人材がDX推進リーダーであれば、頼もしいことこの上ないでしょう。
デジタルビジネスの知識
DXとはIT技術を用いてさまざまな変革を起こし、新たなビジネスモデルを構築していく行程を踏みます。
つまりITやデジタルといった分野の知識は不可欠です。
ただしそれは「プログラミングができる」や「ITツールについて深い知見がある」といったことではありません。
そういった知識ももちろん最低限のものは必要となりますが、それに加えて国内外のデジタルビジネスの活用事例や、ビジネスモデルの戦略についての深い知識を有しているといったことが求められます。
それに加えて、それらを自社に落とし込んだ場合はどのような成果につながるかをイメージできる、正確なビジネスイマジネーションも有していなければ、リーダーとして重大なプロジェクトを率いていくことは難しいでしょう。
デジタルビジネスの本質をつかみ、それを自社のビジネスに的確に反映させていくことのできる知識の豊富さは、DX推進リーダーの力量として大きく問われます。
エンジニアリングの知見
前項のデジタルビジネスの知識では軽く触れただけのITなどの知識。つまり、エンジニアリングとしての知見も持ち合わせていることが、DX推進リーダーとして望ましいのは言うまでもありません。
もちろんエンジニアリングに関しても実際のプロジェクトの中では、社内外問わずそれぞれのプロフェッショナルが個別にパーツ対応することになりますから、DX推進リーダーはそれを取りまとめることができれば良いとも思えます。
しかし、実際に個別で開発がされているシステムなどのパーツが、合理的にDX推進の全体像に落とし込めているかどうかは、最低限のエンジニアリングに関する知見がなければ判断が付きません。
その道のプロと話が通じるレベルのエンジニアリングの知見。
情報を取りまとめて本当の価値あるテクノロジーに変えていくためにも、それらに対する正確な理解や評価基準をもっていることは、DX推進プロジェクトリーダーにとっては必要な能力です。
忖度のないリーダーシップ
これまで紹介した4つの能力を持っていたとしても、最終的にDX推進リーダーに求められるもっとも大切な能力は、忖度(そんたく)のないリーダーシップです。
自社に対する思い入れが深く、自社のスタッフであることを誇りに思っている人物は、一見するとリーダーに適した人材のように思えます。
しかし、実際にはあまり思い入れの強すぎる人物の場合、その思い自体が組織の再編や業務プロセスの一新などを図る際、足かせとなる可能性が否定できません。
同様に社内のスタッフへの人脈が広いというのは重要な能力ですが、それが故に人事異動などを必要とする判断の際に、冷静な判断を下せない可能性もあります。
目的達成のためにはある程度は忖度のない冷静な判断が下せ、しがらみにとらわれないドライな施策を取れる。
それでいて圧倒的パワーでプロジェクトを牽引する強力なリーダーシップを持った人材が、DX推進リーダーにはもっともふさわしい人物だということができるでしょう。
まとめ
DX推進リーダーに求められる5つの能力について解説してまいりました。
とはいえ、1つひとつはクリアする人材がいたとしても、実際のところはこれらすべてを満たす理想的な人物など、多くの企業には存在しないでしょう。
それは仮に経営者自身がDX推進リーダーになったとしても、同様だと考えられます。
また、経営者を育てるのが難しいように、DX推進リーダーを改めて育てるということも、実際問題は難しいものです。
現実的には複数人のスタッフが協力してプロジェクトを牽引することがほとんどでしょう。
さらに、特にデジタル担当やエンジニアリングなどの部門に関しては、外部からスタッフを招聘(しょうへい)したり、ベンダーと組んでDXを推進させていくという施策は、当然のように考えなければなりません。
自社の人材で補えきれない部分は外部の力を借り、その過程で学ぶべきところは学び、5つの能力についてできる限り万遍ない実力を身に着けていく。
そうした結果、真のDX推進リーダーは生まれていきます。
風が吹けば桶屋が儲かるがごとく、いつかそうした人材が湧き出してくることなどありません。
DX推進という大きなミッションは、企業の未来を占う経営戦略そのものです。
これから先の生き残りをかけた企業戦略を担うDX推進リーダーを、全社を上げて育て上げるという確固たる想いは、企業の未来を良くも悪くも変えていく。
経営者が今本当に考えなければならないことは、真のDX推進リーダーの育成なのではないでしょうか。