【教育業界】独自システムでDXを成功させた事例と塾・予備校向け2ツール

【教育業界】独自システムでDXを成功させた事例と塾・予備校向け2ツール

学校とは違い、生徒の合格実績や新規顧客の獲得による売上の拡大が求められる塾・予備校。

対面でのやり取りがしづらいコロナ禍では、いかにリスクを抑えて成果を出すかが大きな課題となっていますが、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)を活用すれば効率よく成果を出すことが可能です。

今回は、独自のシステムを開発してコロナ禍でもいち早くリモート塾の体制を整え、生徒と保護者の支持を得たナガシマ教育研究所の事例をご紹介します。

さらには、塾や予備校のDXを後押ししてくれる2つの既存ツールに着目して、得られるメリットや今後の塾・予備校の在り方を解説いたしました。

教育業界に携わっている方は、子供の学習支援や塾・予備校経営の参考としてご一読ください。

独自システムでDXを成功させた事例

ナガシマ教育研究所
出典:ナガシマ教育研究所公式サイト

横浜市金沢区を拠点に、学習コーチングを通して、子どもたちの「自主的な学ぶ力」を育てる教育を行っているのがナガシマ教育研究所(株式会社塾のナガシマ)です。

同社では、幼児教育~高校生向けの学習塾、さらには学童保育まで幅広く事業を行っています。

様々な年代の子どもたちと常に向き合いながら、子どもたちの教育を行うのはもちろん、保護者の満足度を上げる教育体制を提供しています。

コロナ禍で生まれたリモート学習システム

2020年の春先より猛威をふるい始めた新型コロナウイルスは、当然のように教育業界へも多大な影響をもたらしました。

義務教育の学校ですら全国で一斉休校となった社会では、子どもたちが塾に通うことなど望むべくもなかったのは周知の通りで、当然ながら多くの学習塾も休校を余儀なくされたのです。

しかし、そんな逆風の中でも、ナガシマ教育研究所は独自のシステムをいち早く整えて、それまでの学習塾では常識であった「対面での集団授業」を廃止。いち早くオンラインによる個別授業へと切り替えて危機を乗り越えました。

この大転換の直接的なきっかけはコロナ禍ですが、同社はただ単に「コロナで自粛要請が深刻化したからシステムを整えた」という、場当たり的な措置を取ったわけではありません。

同社は、コロナ前から既存の学習塾のほとんどが採用している「集団学習」の仕組みに疑問を持ち、そのビジネスモデルが子どもたちの教育にとって正解なのかを検証していたのです。

「塾」に限らず集団授業のスタイルには、いくつかのデメリットも存在します。

  • 生徒の学習状況に合わせた指導が難しい
  • 集団の中では質問ができない引っ込み思案の生徒がいる

一方で、個別塾や家庭教師といったマンツーマンの授業スタイルにも弱点が存在します。

  • 先生が付いていないと勉強しない生徒が育ちやすい
  • 生徒が主体的に学ぶ環境作りに繋がりにくい
  • 生徒に対する対応を先生1人が行わなければならず先生に対する負荷が大きい

同社では、こうした集団授業・個別指導それぞれのデメリットをうまく補いあえる、新しい教育スタイルはないかと、コロナ禍以前から検討を続けていたのです。

その中で生まれたのが、リモート学習システムを取り入れたオンライン個別授業のスタイルでした。

ナガシマ教育研究所が作り上げた教育のDX

ナガシマ教育研究所が作り上げたシステムは、集団授業と個別指導の良さをうまく取り入れたものでした。

生徒は、これまでであれば塾に通っていた時間に自宅で動画による授業を受けます。そして、先生は各生徒の間をオンラインで巡回し、質問に答えていくのです。

また、直接声を出して質問をすることが苦手な生徒はチャットで質問するなど、個人のパーソナリティに合わせて学習を進めていくことができます。

こうしたシステムを組み上げたことで、生徒個人の学習進捗に対応しづらいという集団授業のデメリットは、良い方向へと改善ができました。

さらに、生徒の自主性が生まれにくいという、個別指導のデメリットもうまく緩和でき、両者のいいとこ取りのシステムを作り上げたのです。

それだけでなく、デジタル技術を活用し、オンラインのメリットを最大限に活かした同社のアクティブラーニングは、生徒のみならず、塾と保護者の関係にも影響を及ぼすことになりました。

同社は、新しい学習システムと共に開発した専用アプリを使い、保護者との連絡を行うことにしたことで、新しい保護者との繋がりを生み出したのです。

例えば、保護者が自室で勉強する我が子の姿を手元のスマートフォンで確認したり、授業中に同社に対して子どもの学習状況について質問することできたりと、これまでには考えられなかったアクションが可能となったのです。

従来型の集団授業を主とする学習塾では、「塾」と「家庭」の間には物理的な壁があり、先生と親が連携を取りながら子どもの教育に力を注ぐことは容易ではありませんでした。

しかし、ナガシマ教育研究所はデジタル技術を用いて、この壁を取り払うことに成功したのです。

同社の生み出したこれらの「教育のDXシステム」は、今では生徒・保護者の双方から高い評価を受けており、同時に社内の生産性も上げるなど大きな成果を生み出しています。

デジタル技術を「人の交わり」に有効活用

ナガシマ教育研究所では、コロナ禍により集団授業が行えなくなったのを機に、授業の動画撮影を開始し、既存ソフトやサービスの中から適切なモノを組み合わせることにより、わずか3~4ヶ月という短期間でシステム環境を整えました。

この特筆すべきスピード感は、同社がこの手法で成功した要因の1つですが、それが実現できたのもコロナ禍前から新しい学習モデルを模索していたことが背景にあります。

コロナ禍が一定の落ち着きを見せている現在は、集団での授業形態も復活しつつ、それにオンラインでのアクティブラーニングシステムを組み合わせる手法へと移行しました。

豊富な蓄積がある集団授業のメソッドに、コロナ禍で成果を挙げた新しいオンライン学習の仕組みを融合する試みを始めているのです。

こうしたビジネスモデルの変革により、新規顧客の問い合わせは明らかに増えていると言う同社では、今はさらなる進化を目指しています。

「生徒の学習進捗状況や、学習への意識変化などもデータとして活用し、ナレッジとして蓄積していくことができれば、『学びを通して子どもたちの幸せな人生に貢献する』という、私達の経営理念にも則ったDXを自ずと推し進めていける」と語る同社。

デジタル技術がどれだけ進化しようとも、塾や予備校といった「人を相手にする商売」の本質である、「人と人との温かい交わり」をデジタルが肩代わりしてくれることはありません。

それらを全て機械に任せてしまっては、本質的な部分が空洞化してしまうでしょう。

しかし、同社の事例のように「効率化のためのデジタル技術活用」ではなく、まずは「人ありき」で「人を繋げるデジタルの本質」を踏まえたデジタル活用を考えていけば、血の通ったDXを実現できます。

常に「人」を見据えたナガシマ教育研究所の取り組みは、DX推進の本質を突いていると言えるのではないでしょうか。

塾・予備校向けおすすめ2ツール

ナガシマ教育研究所の事例は、コロナ禍における対症療法のシステム開発ではなく、それ以前から現状に疑問を持ち、課題の克服を考えていたからこそ生まれたDX施策です。

しかし、これからDXに取り組もうと考える塾・予備校の多くは、そう簡単に独自のシステムを作り上げることはできないかもしれません。

そこで、ここでは既存のシステムとしてローンチされている、2つの教育サポートツールをご紹介します。

こうしたツールを利活用すれば、DX推進のハードルを一気に下げることができます。

塾・予備校経営の手助けをする効率化ツール「Comiru」

塾・予備校の運営業務をスムーズに進めるために役に立つのが、効率化ツール「Comiru(コミル)」です。

Comiruにはさまざまな機能が搭載されていますが、代表的なものをいくつか紹介します。

  • LINEを使って保護者へ事務連絡
  • 保護者へWeb報告書を共有
  • 授業のコマや座席の管理
  • 月謝の請求書の自動作成
  • 新規顧客の見込み管理

実際にComiruを導入した秀英予備校では、システムを導入してから退塾者の数が前年に比べて3割減ったそうです。

これは、業務を効率化することで生徒や保護者のサポートを手厚くできるようになり、信頼関係を構築できたことが主な要因です。

実際にどのような点がこれらの成果に結びついたのか、2つの項目に分けて解説していきます。

保護者とのコミュニケーション強化

保護者とのコミュニケーション強化

Comiruは、保護者との信頼関係を構築するためのコミュニケーションツールとして役立ちます。

たとえば、説明会の開催など連絡事項があるときは、Comiruから宛先を選び、まとめて保護者のLINEアカウントへ送信することが可能です。

さらに送信した指導報告者や連絡事項は、既読率・返信率のデータが可視化されます。

これらの数値を見ることで、保護者の反応をチェックし、リアクションがない家庭に絞ってアフターフォローができるようになります。

このようにComiruを導入すると保護者への対応を、それぞれの状況に合わせて柔軟に変えられるようになり、結果として保護者との信頼関係を構築できるのです。

ルーティンワークの効率化

ルーティンワークの効率化

塾や予備校の経営においては、生徒や保護者とのやり取りだけでなく請求書の発行、月謝の振り込み確認、生徒の成績管理などのルーティンワークも存在します。

Comiruはこれらの業務も網羅しており、手動で行っていた作業を自動化することが可能です。

たとえば、請求書の作成はテンプレートに沿って行えるため、Excelなどのツールを使う必要がありません。

未収が発生した際には、Comiruに登録してある保護者の連絡先に「未収対応の文章テンプレート」を送信するだけで済み、個別に電話する前に先方の対応を促せます。

このように日々のルーティンワークを効率化することで業務の時間を節約し、その分の時間を生徒や保護者とのやり取りにかけられるメリットがあります。

生徒の学力向上や売上拡大など具体的な成果が求められる塾・予備校の経営では、Comiruのような効率化ツールを導入し、限られた人的リソースをどれだけ有効に活用できるかが、今後の明暗を分ける要因になるでしょう。

生徒の学習を支援するAIシステム 「atama+」

出典:atama+公式サイト

塾・予備校に通う最大の目的は、何といっても「学力の向上」です。

そんな生徒の学力向上を後押しするのが、全国2,400以上の塾・予備校に導入されているAI(Atrificial Intelligence=人工知能)を使った学習支援システム「atama+(アタマプラス)」です。

塾・予備校の課題である「個別対応」を可能に

塾・予備校の課題である「個別対応」を可能に

atama+を活用すると、従来の塾・予備校の授業では実現しにくかった以下のことが可能になります。

  • 人だと突き止めるのに時間がかかる「解けない原因」をAIが分析
  • 現状の理解度や単元習得までにかかる時間をデータ化
  • 一人一人に合ったカスタマイズ授業

上記は機能のほんの一部ですが、集団塾では特に難しい個別対応を手厚く行えることがatama+の大きなメリットです。

生徒が問題を解けなかった場合であっても、その原因は「解法を覚えていない」「わかったつもりになっている」「正解がわかっていたのに選択肢を間違えた」などさまざまなケースが考えられます。

個別指導塾や家庭教師などは、1人の生徒をじっくり見られるので時間をかけてこうした問題に対処できます。

しかし、複数の生徒を見なくてはいけない塾や予備校では、1人の生徒に対して多大な時間をかけるわけにはいきません

atama+のAIは「解けない原因」を瞬時に分析し、課題解決のために行うべき演習問題の提案まで行います。

この機能は高い効果を上げており、実際にatama+を20時間以上利用した中学生のうち「問題を解けるようになった」と回答した生徒は98.7%に及びます。

本事例は、複数の生徒を見なければいけない塾・予備校ならではの課題である「手厚い個別指導」を、AIが代わりに行えるようになったことを表しています。

「人×AI」の教育を実現

「人×AI」の教育を実現

atama+を使うと、AIによる課題の分析やオンライン授業ができるだけでなく、「人」と「AI」を使い分けた教育の実現が可能になります。

たとえば、講師が受験を控えている生徒を受け持つ場合、問題の解法を教えるだけではなく、効果的なノートの取り方や、知識を確実なものとするための自習方法なども教える必要があるでしょう。

さらに、コンスタントに勉強を続けるための精神面のケアやモチベーション管理、1年を通したスケジュールの進捗確認なども欠かせません。

こうした課題に対してはAIではなく、現場をよく理解し経験を積んでいる人(講師)が力を発揮します。

一方、「解けない原因」の分析の例でみたように、AIが得意とする分野もあります。

授業や問題を解くための課題解決はAIが担い、学習をするうえでのコーチングは人(講師)が行う。

このように、それぞれの得意な面を使い分けることで効率的に生徒の学力を伸ばすことが可能です。生徒の学力向上は、塾・予備校の売上拡大にもつながるでしょう。

ここ数年のデジタル発展から「AI時代」という言葉もよく耳にするようになりましたが、atama+は人の強みを最大限に活かしつつ、うまくAIを活用している好例といえるでしょう。

まとめ~教育のDXは既存ツールを有効に使って効率化を!

塾・予備校に焦点を当てて、教育業界におけるDXを代表するシステムの事例を解説いたしました。

塾や予備校の経営は、生徒の学力向上だけでなく保護者とのやり取りや日々のルーティンワークなど、こなさなければいけないミッションが複数あります。

しかし今回紹介したような効率化ツール、AIシステムなどをうまく活用すれば、本来教師がやるべきことに注力して結果を残すことが可能です。

多くの業界が新型コロナウイルス蔓延の打撃を受けましたが、塾や予備校は現場の授業とオンラインの両方を使い、うまくユーザーの日常生活に定着しています。

このような結果を出すためには、人がやるべき業務とシステムに任せられる業務を見極めることが1つの指標となるでしょう。

教育業界のDX事例は他の分野でも応用できますので、ぜひ自社の経営発展の参考としてお役立ていただければと思います。

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DXportal®編集部

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