【デジタル著作権】DRMに見る、新しい著作権保護のカタチ

【デジタル著作権】DRMに見る、新しい著作権保護のカタチ

インターネット上で流通する映像や画像、音楽、ゲームといった、いわゆるデジタルコンテンツは、誰もが気軽に手にすることができるという特徴があります。

その利便性の高さは言うまでもなく、近年、急速に利用が拡大しています。

一方で、デジタルコンテンツは複製が容易であるため、著作権法上の問題が後を絶ちません

違法にアップロードされたデジタルコンテンツの存在は、そのコンテンツの著作者や販売元の権利を侵害する存在であり、大きな問題になっています。

最近話題となっているNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)等は唯一無二のオリジナルデータであることを証明可能な仕組みとして注目されていますが、とはいえ複製すること自体は可能であるため、他のデジタルコンテンツと同様に著作権侵害が発生する懸念は拭いきれません。

そんな中、デジタルコンテンツを適切に保護・管理するための技術であるDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理/以下:DRM)が、改めて再認識されています。

今回は、著作権の概念自体についても触れながら、Web3.0時代を迎えるインターネット社会のデジタル著作権保護に新たな可能性をもたらす、DRMについて詳しく解説します。

「デジタル著作権」とは?

「デジタル著作権」とは?

デジタル著作権とは、あらゆる著作物のうち、映像や音楽、電子書籍、ゲーム等に代表される「デジタルコンテンツ」と呼ばれる著作物に生じる著作権のことを指します。

そもそもデジタルコンテンツは、絵画などリアル世界の著作物(アナログコンテンツ)と異なり、複製しても品質の劣化が少なく、複製が容易であるという特徴があります。

そのため、従来の著作権法でどれだけ規制を強化しようとしても、デジタルコンテンツの無断複製・流通は止まらず、多くの被害を生み出してきました。

そこで、デジタルコンテンツを適切に保護するという観点から生み出されたのが、「デジタル著作権」という概念です。

著作権の基礎概念

デジタル著作権について正確に理解するためには、まずはその基礎となる著作権そのものについて適切に理解することが必要です。

著作権とは、著作権法において「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法第2条第1項)/引用:デジタル庁e-GOV法令検索」と定義されており、著作権が発生する著作物は主に以下のものとなります。

  • 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  • 音楽の著作物
  • 舞踊又は無言劇の著作物
  • 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  • 建築の著作物
  • 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  • 映画の著作物
  • 写真の著作物
  • プログラムの著作物

また著作権は、著作物を創作した著作者が著作権者となり、原則として著作物を他者に勝手に利用されない、させない権利を有します。

従って、無断で著作物の複製などを行なえば「著作権法違反」に該当するのです。

デジタルコンテンツへと移行する著作物

近年、紙媒体の書籍は電子書籍へ、音楽はCDからデータ配信へ、映像はDVDからストリーミング配信へと移行しているように、かつてはアナログコンテンツであった著作物が急速にオンラインによりデジタルコンテンツ化されています。

デジタルコンテンツへの移行は、利用者の利便性向上だけでなく、著作者・販売元にとっても様々なメリットを生み出しました。

他方で、すでに述べたように、アナログコンテンツと異なり複製が容易なデジタルコンテンツ化したことで、これまでにない規模での著作権侵害が発生しています。

著作物の在り方が変われば、著作権保護の方法も変わらざるを得ないでしょう。

そこで、デジタル著作権保護のために活用されている技術が、DRMです。

DRMとは?

DRMとは?

DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)とは、デジタルコンテンツの複製防止、印刷防止、閲覧期限の設定、画面キャプチャ防止等を行なう技術の総称です。

DRMの利用により、コンテンツ利用者に対して著作者側が定めた制限を課すことが可能となります。

DRMを活用して、利用者が許された範囲を超えて、著作物を利用することができないように技術的制限を設けることで、デジタルコンテンツの不正利用を防止できるのです。

情報のデジタル化が進む現代において、DRMはデジタル著作権を保護する上で必要不可欠な技術であり、著作権者である個人や企業の権利保護に寄与する技術です。

DRMの主な機能

DRMの主な機能

デジタルコンテンツの著作権保護のために実際に利用されている、DRMには主に以下のようなものがあります。

印刷制御

デジタルコンテンツの印刷を不可能にしたり、印刷可能回数に制限をかける方法です。

これにより、デジタルコンテンツが無断で印刷され、膨大な数のコピーが流通するといった被害を防止することが可能となります。

なお、この印刷制御は後述する「画面キャプチャ防止」機能と併せて実施するとより効果的です。

記録メディア複製の制限

Blu-rayやDVDなどのデジタル記録メディア(光学ディスクや物理的メモリなどの媒体)に保存されているデータの抽出を不可能にする「コピーガード」を組み込むことで、コピーの作成を防止する方法です。

このコピーガードは、主にDVDに利用されるCSS(Content Scrambling System)やBlu-rayに利用されるAACS(Advanced Access Content System)などがあり、フォーマットの違いこそあれ、市販やレンタル品の無断複製を防止します。

ネット上のデジタルコンテンツ複製の制限

インターネット上で流通する、デジタルコンテンツのコピー回数を制限する方法です。

コピー回数に上限を設けることで、生成したコピーデータの拡散を防止することが可能になります。

画面キャプチャ防止

スクリーンショットなどによる、PC画面やスマートフォンの「画面キャプチャ」を防止する機能です。

各デバイスに導入されているOSや、サードパーティーアプリケーションによる画面キャプチャ機能を無効化します。

これによりデジタルコンテンツが、画像や映像として複製されるリスクを軽減できます。

印刷制御だけだと、一旦「画面キャプチャ」をして画像データを作成してから印刷するという抜け穴が存在しますが、複数の技術を併用することで幅広く著作権侵害の手口を防止することができます。

ドメイン制限

動画視聴等を可能とするドメインに制限をかける方法です。

動画コンテンツ特定は、権利者が設定した特定のドメイン以外では再生ができないため、コンテンツの無断転載や拡散を防止することができます。

暗号化配信

動画等のコンテンツ自体を暗号化し、暗号を解く複合キーを入力しなければ再生できないようにする方法です。

これにより、コンテンツの無断転載や拡散を防止することができます。

ワンタイムURL

動画等のコンテンツ再生のために有効なURLを一定期間のみ発行する方法で、視聴期間や再生回数を制限することが可能です。

動画等のコンテンツ再生期間終了後は再生用URLが無効となるため、不正アクセスや無許可のコンテンツ拡散を防止することができます。

IP制限

接続元のIPアドレス(Internet Protocol Address)を使って、サービスの利用者を制限する機能です。

この機能を使えば、限定した特定のIPアドレスのみ動画などの閲覧が可能とさせる制限をかけることができます。

ログイン画面などにIP制限をかけておけば、不正アクセスやデータの抜き取り、社内情報やコンテンツの流出も防げますので、企業のサイト運営や社内教育動画の共有を実施する場合などに向いています。

DRM推進における課題

DRM推進における課題

これまで音楽や画像などのコンテンツは、著作権法第30条に定められている通り、個人が楽しむ範囲内においては複製(私的複製)が認められていました。

しかし、DRMは利用目的を問わず利用者に対して一律に制限を課してしまうため、法律上で認められている私的複製の権利まで制限してしまう仕組みです。

また、書籍や音楽といったデジタルコンテンツにおいては、再生するために特定の再生ソフト(アプリなど)を利用する必要があり、これは、利用手段の制限に繋がっているという点に課題があります。

デジタルコンテンツの再生ソフトが限定されてしまうと、例えば、再生ソフト提供者の都合によって再生ソフトの提供が停止となった場合に、デジタルコンテンツの再生が不可能になるなど、利用者に不利益が生じる可能性がぬぐえません。

このデジタルコンテンツの利用手段制限が利用者に不利益をもたらした顕著な事例としては、2019年に米国のマイクロソフト社が、自社が運営する「Microsoft Store」から電子書籍のカテゴリーを削除した事例があります。これに伴い、利用者が購入していた書籍データが抹消され利用できなくなってしまったのです。

この件では、書籍データを消失した利用者に対して返金措置が取られたものの、利用者にとっては購入時には想定していなかった自体であり、書籍を読むためには再度別の方法で購入する必要があるなど、大きな不利益が生じました。

これは、紙媒体の書籍を販売するアナログコンテンツでは起こりえない自体です。

このように、DRMはデジタル著作権を保護する上で必要な措置といえる一方で、一部で不要に利用者の権利を制限してしまったり、デジタルコンテンツの提供者の都合で利用者に不利益を及ぼす可能性もある技術です。

DRM活用においては、利用者の利便性の確保や、購入したデジタルコンテンツを利用する権利の担保など、利用者視点に立って活用方法を熟考する必要があるでしょう。

DRMフリーとは?

DRMフリーとは?

DRMフリーとは、DRMが施されていないデジタルコンテンツを指します。

不正利用や拡散が行われるリスクがある一方で、利用者にとってはDRMで課される制限がない分、利便性が高いというメリットがあります。

近年では、DRMが推進されている一方、前述の通り、DRMにはいくつかの課題も存在することから、あえて「DRMフリー」と位置づけたサービスも提供されています。

AppleやAmazonを始めとする、DRMフリーによる音楽ファイルのダウンロードや、電子書籍販売等がその代表例です。

DRMフリーであれば、利用期間やダウンロード回数、再生ソフトの利用制限が無くデジタルコンテンツを利用できるため、利用者にとっては利便性が向上します。

自社の大切なデジタルコンテンツをDRMフリーにすることは、一見するとメリットがないように思えますが、フォロワーを大量獲得し企業好感度を上げて、別商品のセールスへ誘導する方法や、サンプルのように大量の無料コンテンツを配布した後、有料販売へのCV(コンバージョン)を狙う方法など、新たなビジネスモデルも構築できます。

まとめ

デジタル時代の著作権保護の技術「DRM」について、著作権法とともに解説してまいりました。

本来、著作物の無断使用・無断複製は著作権法違反に該当する行為であり、「人が制作したものを勝手に複製・使用等してはいけない」という、法律以前に人として持つべきリテラシー・倫理の問題です。

しかし、著作物の無断使用や複製は後を絶たない現状があり、完全に制御するのは困難と言わざるを得ません。

特にデジタルコンテンツは利用者側に「誰かの著作物」という意識が低く、安易な複製や二次使用が行われているのが現状です。

著作物のデジタルコンテンツ化が進む中で、デジタル著作権保護の要となるDRMの活用は必要不可欠となっています。

しかし、DRMはデジタル著作権保護に有効な一方で、利用者の利便性や購入者の権利を制限してしまうといった課題があることも否めません。

そのため、「何のためにDRMを導入するのか」という目的を押さえたうえで、DRMあるいはDRMフリーの選択も含め、利用者にも配慮した効果的な活用が必要でしょう。

貴社のデジタル著作権保護対策として、より良いDRM活用の方法をご検討ください。

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この記事の執筆者

DXportal®運営チーム

DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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