DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)とは、「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くする」取り組みです。
近年、DXは企業の競争力を高めるためのカギとして注目を集めています。特に中小企業においては、生存戦略の一部としてDXへの取り組みが求められているといって良いでしょう。
しかしながら、多くの中小企業はリソースの制約や技術的なハードルなど、様々な課題に直面しており、それがDXの成功を阻んでいます。
これらの企業がDXを成功させるためには、デジタルリーダーの存在が欠かせません。
当サイトでは、「DXリーダーに求められる5つの力」という記事において、この点について解説しました。
今回はそれをさらに深掘りし、DXリーダーの1つ前の段階である、デジタルリーダーの役割を取り上げ、優れたデジタルリーダーの資質、さらにはデジタルリーダー育成の3ステップを解説します。
今からDXに取り組みたいと考えている企業、そして今現在取り組んではいるものの、リソース不足で悩んでいる企業の経営者様、担当者様はどうぞご参考にしてください。
目次
デジタルリーダーの役割
デジタルリーダーは、今まさに進行中のデジタル変革の時代において、その波を乗りこなし、企業を未来へと導く役割を果たす存在です。
「デジタル」と名前がついている以上、通常のリーダーシップとは異なる特徴が求められます。
では、具体的には何が異なるのか。その特徴と役割に注目しながら深掘りしてみましょう。
テクノロジーの専門知識
デジタルリーダーは、単にビジネスの先導者であるだけでなく、テクノロジーのエキスパートとしての役割も果たさなければなりません。
これには、最新の技術トレンドやその活用方法、さらにはテクノロジーがビジネスに与える影響を理解する能力が求められます。
変革の推進
従来のリーダーシップがどちらかというと安定したビジネスの実行を求められるのに対し、デジタルリーダーは革新・変革が主な役割です。
様々な分野でDXが進むデジタル社会において、変革の波は絶えず発生しています。
デジタルリーダーはこうした変化を適切に捉えて、企業や組織を新しい時代に適応させるアクションを起こしていく必要があります。
組織文化の変革
DXとは、デジタル技術だけの問題ではありません。
先にも述べたように、DXとは「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くする」取り組みです。
そのためには、時として組織文化や企業理念を含めて、変革していかなければならない場合もあります。
デジタルリーダーはそうした場面において、従業員1人ひとりがデジタル変革という流れを一緒に作り上げられるように、率先して新たな文化を築くことを目指さなければなりません。
これには、リスクを恐れずに新しい取り組みを試みる姿勢や、失敗から学ぶ文化を社内で醸成することなどが含まれます。
ステークホルダーとのコミュニケーション
DXは、社内の業務改革だけで完結するものではありません。
内部の従業員はもちろん、取引先、顧客、投資家など、多様な関係者とのコミュニケーションを円滑に行い、共通のビジョンに向かって動いていかなければならず、デジタルリーダーはそうした全てのステークホルダーとの調整役も担います。
優れたデジタルリーダーの5つの資質
デジタルリーダーに求められるものは、一般的なリーダーのそれとは一線を画します。
ビジネスの世界では、DXの波は待ったなしの状態で進んでおり、その中でリーダーシップを取る者には特別な資質が求められるのです。
以下に、その5つの資質について解説します。
ビジョンの明確さ
デジタルリーダーの役割の中核を成すのは、具体的なビジョンを示すことです。
このビジョンは短期的な目標ではなく、5年後や10年後といった長期的な視野に基づいていなければなりません。
常に業界の変化や技術の進歩を追いかけ、その中で新しいビジネスのチャンスや可能性を見つけ出す。さらに、そのビジョンを形成するだけでなく、それを組織内外のステークホルダーに伝える力も必要です。
相手にわかりやすく伝えるために、ストーリーテリングの手法を駆使するなどして、そのビジョンがなぜ重要で、どのように実現されるのかを魅力的に訴える力が求められるでしょう。
柔軟性
変革を目指すDX推進にチャレンジするには、固定的な考え方や特定の手法に固執する姿勢はリスクになり得ます。
デジタルリーダーは新しい技術の導入や市場の変動に素早く対応し、必要に応じて組織の方向性を変える能力を持っていなければなりません。
さらに、異なる個性やバックボーンを持つ人々からの意見やアイディアを尊重し、組織の成長のためにこれを活用していくことが大切です。
これまでの業界の常識に囚われず、時には業界の枠を超えて、優れた事例を模倣して取り入れていこうとする柔軟な姿勢が重要です。
技術的知識
テクノロジーの進化は止まることを知りません。
デジタルリーダーは、テクノロジーをビジネスの文脈でどのように活用するかを見極める深い知識と洞察力を持っている必要があります。
加えて、デジタルリーダーとして他のメンバーを率いていくためには、最前線でのテクノロジーの動向を追い求め、常にその知識をアップグレードしていく姿勢が求められるのです。
また、理論だけでなく実践を通じて、新しい技術の実用性や効果を評価する姿勢がなければなりません。
コミュニケーション能力
コミュニケーションは、組織内の情報共有や意思疎通のために不可欠です。
デジタルリーダーは他者の意見やフィードバックを真摯に受け止め、それを組織の戦略や方針に反映させる能力を持っていなければなりません。
また、関係者をデジタルのビジョンや方針に巻き込むためのコミュニケーション能力も持ち合わせている必要があるのです。
これには、様々な派閥間のパワーバランスを調整する、社内政治の能力も求められます。
継続的な学習意欲
デジタルリーダーに必要な最も重要な特性の1つに挙げられるのが、絶えず学び続ける意欲です。
新しい情報や技術、トレンドを常に追い求め、自らの知識やスキルをアップデートし続ける人材がデジタルリーダーに適しているのです。
そして、失敗を恐れずに新しい試みを続け、その結果から学びを得ることで、組織を次のステージへと導く求心力を有していることも、優秀なデジタルリーダーに求められる重要な資質の1つです。
デジタルリーダー育成の3ステップ
こうした資質を備えたデジタルリーダーは、一朝一夕に育成できるものではありません。その育成には、組織全体で取り組むべきステップが存在します。
以下に、その主要なステップと、それぞれの詳細を解説いたします。
ステップ1:内部教育の推進
デジタルリーダーを育てるための最初のステップは、組織内での従業員に対する教育の充実です。
この教育は、最新のデジタル技術や市場のトレンドに関するものだけでなく、基本的なデジタルスキルの向上などから始めることが重要です。
定期的な研修やセミナーを開催し、従業員のデジタルに対する理解と関心を高めることで、デジタルリーダーとしての資質を持つ人材を発掘・育成する土壌を作ります。
ステップ2:メンターシップの導入
内部教育の推進により、少しでもデジタルリーダーとしての資質を持つ人材が育ったら、そうした人材とこれから学ぼうとする若手従業員との間にメンターシップの関係を築くことで、実務の中での経験や知識の伝承を実現していくことが重要です。
ただし、教育の初期段階でそこまでデジタルリーダーを担当できる人材がいない場合は、外部から即戦力となるデジタルリーダーを雇用して、その人材とデジタルリーダーの候補者との間でメンターシップを結ぶのも良いでしょう。
これにより、組織の中で継続的にデジタルリーダーの資質を持つ人材が育ち、組織のDXを支える力が増していくでしょう。
ステップ3:外部企業との連携
内部教育やメンターシップ、あるいは新規採用だけでは、必要なスキルや知識を持ったデジタルリーダーを十分に確保することは難しい場合もあるでしょう。
これを解決するには、外部の専門企業と協業したり、コンサルを受けたりといった形を取ることもおすすめです。。
特に新技術の導入や大きな変革が求められる場合、外部からの新しい風を取り入れることで、組織全体の意識と取り組みを大きく前進させることができます。
まとめ~中小企業の未来を切り拓くデジタルリーダーの重要性
現代のビジネス環境において、DXはもはや選択肢ではなく必須項目です。
特にその取り組みが遅れがちな中小企業にとって、デジタルリーダーを育てていくことは、重要な戦略と言えます。
デジタルリーダーは単に新しい技術を導入するだけでなく、企業の文化や戦略を変革し、未来のビジネスランドスケープを築き上げるキーパーソンとなり得るのです。
しっかりとしたビジョンを持ったデジタルリーダーがいることで、大企業のような豊富な資源や経験を持たない中小企業でも、市場での競争力を獲得し、持続的な成長を遂げることが可能になります。
貴社がデジタル時代の勝者となるか、取り残されるかは、デジタルリーダーの重要性をどれだけ理解し、育て上げることに注力するかにかかっています。
本記事で解説した内容を参考に、まずはデジタルリーダーの役割を確認するところから始めてみてください。
そこから、貴社のDXはスタートするのです。