2021年9月1日、当時の菅政権の肝いりで創設されたデジタル庁。
その設立目的は「組織の縦割りを排し、国全体のデジタル化を主導する」というものでした。
しかし、創設から3ヶ月が経った今、デジタル庁は本当の意味で日本のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)推進のリーダーになれるのかという審判の時を迎えています。
新型コロナウイルスの蔓延が落ち着きを見せてきた今だからこそ、改めて日本のDXを見直してみる必要があります。 デジタル庁の思惑と日本企業のDX推進の実情を整理することで、思うように進まないDX化の原因も見えてくるはずです。
目次
コロナでも変わらぬ日本のDX推進
DX先進国と比較して約2年は遅れているといわれてきた日本のDX推進。
新型コロナウイルス感染症対策を契機に、経済産業省などの旗振りもあり、急速に推し進められてきましたが、その実態はどのようなものなのでしょうか。
経団連の「出勤者7割減見直し」提言
2021年11月8日、経済団体連合会(以下:経団連)は政府に対して、「テレワークなどによる出勤者数の7割削減について見直すべきだ」との提言を出しました(参考:テレワークなどで出勤者7割減「見直すべき」 経団連が政府に提言/朝日新聞)
それを受けて政府は、11月19日に新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針を見直し、経団連からの要請通り、出勤者数の7割削減目標を撤廃する旨を発表しました。
この事は日本のDX推進に大きな波紋を起こしました(参考:新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針の全面改訂について(出勤者数制限に関する方針改訂など)/一般社団法人日本経済団体連合会公式ホームページ)
テレワークは、デジタル庁の推し進めるデジタル改革の1つの大きな柱です。政府が、テレワークを活用した「新しい働き方を後押しする」と宣言したのは、単にコロナ禍だからということではありません。コロナ以前から、日本におけるDX化の一環として、政府により強く推し進められていました。
確かに、新型コロナの感染が落ち着きをみせてきた段階においては、感染防止対策として呼びかけてきた「出勤者数の7割削減」という指針を見直す余地はあるかもしれませんが、見方を変えればせっかく高まってきたテレワーク活用の機運に水を差す、これまでのテレワーク推進策とは逆行する動きにも見えます。
ゴタゴタの止まらぬデジタル庁の内情
こうしたちぐはぐにも思える政府の対応は、縦割り行政の打開を掲げて創設されたデジタル庁の内部にも見られます。
創設直後に起こった、事務方トップである石倉洋子デジタル監のデジタルコンテンツ無断盗用問題に始まり、記憶に新しい11月24日のメールアドレス流出問題など、立て続けに問題が起こっています。国のデジタル改革のリーダーシップを取るべきデジタル庁の内情は、いささか不安の残るものです。
企業からの過剰接待問題で関係者が懲戒処分された例を見ても、DXにおける他の先進国との差を何としてでも埋めようという気概は感じられず、特定の企業との既存の関係性の中で動いているようにも見えます。
コロナ禍という緊急事態に直面したにもかかわらず、DXの遅れに対する日本全体に蔓延した 「緊張感の無さ」は変わっていないようです。
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