「2025年の崖」が間近に迫った2022年現在、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)推進は急務です。
日本のDXを推し進める立場になる経済産業省(以下:経産省)からも、DX推進の必要性を訴える数々の文書が発表されており、いよいよ待ったなしの状態となっています。
中でも、「デジタルガバナンス・コード」は、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめた、経産省が発表した文書です。
さらに同コード策定から2年を経た2022年には「コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会」が開催され、同検討会の議論を踏まえて、必要な改定を施した「デジタルガバナンス・コード2.0」が2022年9月13日に発表されました。
デジタルガバナンス・コードは、経産省から日本企業全体へ向けた未来へのメッセージです。
では、その内容は具体的にどのようなものなのでしょう。
今回は、デジタルガバナンス・コードの概要を説明するとともに、経産省が取り組むDXを加速する仕掛けについて解説していきます。
経産省からのメッセージを的確にキャッチして、DX未着手の企業はぜひこの機会を「デジタル社会に適応した企業」へと変革するために動き出すきっかけとしてください。
目次
経産省からのメッセージ【デジタルガバナンス・コード】
前述の通り、デジタルガバナンス・コードとは、経産省が本格的なDXへの取り組みが遅れている日本企業に向けて発したメッセージです。
デジタルガバナンス・コードの序文には、次のように記述されています。
「経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄を「デジタルガバナンス・コード」として取りまとめていくこととする。企業がDXの取組を自主的・自発的に進めることを促すとともに、特に、経営者の主要な役割として、ステークホルダーとの対話を捉え、対話に積極的に取り組んでいる企業に対して、資金や人材、ビジネス機会が集まる環境を整備していく。」
引用:デジタルガバナンス・コード2.0
この記述からも明らかな通り、そのメッセージは企業経営者に向けられています。
Society 5.0を目指すガイドライン
デジタルガバナンス・コードには、これまでの経産省が発表してきたDXに関する資料には含まれていなかった、とある言葉が記載されています。
それが、「Society 5.0」という言葉です。
Society 5.0とは、内閣府が発表した科学技術政策の中に登場する言葉で、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を目指す言葉として使われています。
- Society 1.0:狩猟社会
- Society 2.0:農耕社会
- Society 3.0:工業社会
- Society 4.0:情報社会
日本政府は、現在のSociety 4.0に続く、新たな未来社会の実現を目指し、第5期科学技術基本計画においてSociety 5.0 という概念を初めて提唱しました。
Society 5.0は、現状のDXが「IT技術=Information tecnology:情報技術」とデータを活用して新たな価値を生み出すことを目指しているのに対して、その情報技術のさらに上をいく世界の実現を目指しています。
デジタルガバナンス・コードに、経産省がSociety 5.0を取り入れたということは、日本のDX推進の旗振り役である経産省も、現在進んでいるDXのさらにその先の未来を目指していると言えるでしょう。
【関連記事】
DX推進ガイドラインを一本化
デジタルガバナンス・コードは、2020年11月に策定され、その後2年に1度のペースで見直しを議論することが決められています。
今回、初めて見直しを行い、デジタルガバナンス・コード2.0を発表するにあたって、これまでに同じく経産省から発表された「DX推進ガイドライン」と一本化することが決定されました。
そのため、現在は「DX推進ガイドライン」のページ自体が削除され、すべてデジタルガバナンス・コードに統一されているのです。