顧客中心時代の勝者になる!CRMからCXMへのシフトとその実現策【スターバックス、Netflix、東京ガスの事例】

顧客中心時代の勝者になる!CRMからCXMへのシフトとその実現策【スターバックス、Netflix、東京ガスの事例】

社会のあらゆる場面が高度にデジタル化された現代において、多様化する顧客のニーズに応えることは、ライバル企業との競争に打ち勝つために必須の課題です。

CRM(顧客関係管理)ツールを用いて顧客管理をデジタル化することは、こうした観点からみて重要な施策であり、ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)を推進していく上で欠かせない要素です。

しかし、すでにCRMを導入している多くの企業が体感している通り、顧客エンゲージメント(企業と顧客の信頼関係)の強化がますます重要視される時代、いうなれば「顧客中心時代」の現代では、単なるCRMの導入だけでは限界があるのも事実でしょう。

そこで注目されているのが、顧客の「経験」を管理するCXMです。現代社会で求められる多様なニーズをもつ顧客に対して、それぞれにマッチしたアプローチを行うことを可能にするCXMは、CRMの限界を乗り越え、さらに先の未来を切り開く力を持っています。

この記事では、CRMとCXMの基本的な違いとそれぞれの目的について説明し、顧客との繋がりをより強化する方法に焦点を当てて解説します。

顧客との関係を深め、顧客中心時代のビジネス勝者を目指す全ての企業は、どうぞ参考にしてください。

顧客データを効率的に管理するCRM

顧客データを効率的に管理するCRM

CRMとは、「Customer Relationship Management」の略称で、日本語では「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」と訳される概念や手法を指しています。

企業が顧客との関係を築き、管理するための戦略やシステムと言い換えることもできるでしょう。

CRMの目的

CRMは、顧客のデータを収集・整理し、分析することによって、顧客とのコミュニケーションを強化して販売の効率を向上させると同時に、顧客の満足度を高めることを目的としています。

顧客との長期的な関係を築くことにより、企業は顧客エンゲージメントを強化することができ、ビジネスの成長と収益の向上を実現できるのです。

CRMの利点と限界

CRMシステムは、顧客の連絡先情報、購買履歴、顧客と紐づく交流の履歴(関連企業・人物など)といった、重要な顧客データを一元化し、整理することができます。

これにより、企業は顧客のニーズと嗜好を理解し、それに基づいてカスタマイズされたサービスや製品を提供することができるのです。

その主な利点は、主に次の通りです。

  • 顧客データの整理とアクセスの簡便化
  • 販売プロセスの効率化
  • 顧客サービスの向上
  • マーケティング活動の効果的な管理

こうした様々な利点があることで、顧客エンゲージメントの強化を通じて、ビジネスの効率を向上させることを可能にします。

例えば、サービスを利用した顧客のデータを蓄積しておき、サービス登録直後や1ヶ月後などの決められたサイクルで、あるいは時々のキャンペーン情報などを配信して顧客とのコミュニケーションを深める手法は、CRMの典型的な活用方法です。

一方で、CRMには限界も存在します。顧客の購入履歴など定量的な情報しか管理しない通常のCRMシステムでは、個々の顧客の期待やプリファレンス(好み)までを完全に理解するのは難しいとされています。

例えば、続けてある商品を購入したからと言って、必ずしもその商品に満足しているとは言えません。リピーターに対して、追加購入を促すアプローチは一般的に有効ではありますが、「より顧客の好みに合う商品を紹介する」、「顧客の期待に応えて商品やサービスを改善する」というアクションにまで繋げることは、過去のデータに依存しているCRMだけでは困難なのです。

顧客ロイヤルティを高めるCXM

顧客ロイヤルティを高めるCXM

CXM(カスタマー・エクスペリエンス管理:顧客経験管理)は、顧客の経験を中心に置いてビジネス戦略を設計し実行するアプローチです。

顧客エンゲージメントにとどまらず、顧客の満足度や経験を重視したマーケティング戦略や、それに関連するテクノロジーを用いた手法全般を含めた概念を指します。

CXMのアプローチでは、顧客の満足度や経験に関する理解にもとづいて、企業が製品やサービスを改善し、顧客に対して価値を提供することを目指します。

CXMの目的

CXMは、顧客の満足度とロイヤルティ(信頼や愛着心)を向上させることを目指した手法です。長期的に商品の購入やサービス利用をしてくれる顧客を獲得し、ビジネスの成果に結びつけるための中心的なアプローチとして、「顧客の経験」を全てのビジネスプロセスと戦略の中心に置く考え方にもとづいています。

  • 製品やサービスの購入プロセス
  • カスタマーサービス
  • マーケティングコミュニケーション
  • ブランドのイメージ

顧客が製品やサービス、またはブランド全体との関係性を通じて経験する全ての側面を考慮して、全てのタッチポイントで顧客の経験を向上させ、顧客満足度とロイヤルティを高めることを目的としています。

CXMがもたらす利点

CXMがもたらす利点を理解するために、もう一度CRMの限界を整理しておきましょう。

CRMは主に顧客データの管理と組織化に焦点を置いており、これにより企業は顧客との関係を効率的に管理することができます。

しかし、CRMは個々の顧客のニーズや期待を深く理解し、それに応じてサービスや製品を改善することは困難でした。この限界を乗り越える役割を担うのがCXMの重要となるポイントです。

CXMに取り組むことでもたらされる利点は、主に次の4つです。

  • 顧客のロイヤルティの向上
  • 企業ブランドイメージの向上
  • コストの削減
  • 企業競争力の強化

CRMは、年齢や性別、購入履歴などの顧客データをもとに顧客エンゲージメントの強化を目指しますが、CXMはこれをさらに推し進め、顧客の経験を理解し、それにもとづいてサービスや製品を改善します。

CXMのアプローチにより、企業は顧客の期待を超える体験を提供し、顧客満足度を向上させ、顧客ロイヤルティを高めることにも繋がるのです。

例えば、CXMによってより良い顧客体験を提供することができれば、商品やサービスに対する好意的な口コミが広がり、ブランドイメージの向上や知名度アップといった効果も期待できるでしょう。

さらに、SNSなどで良い口コミが広がれば、既存顧客からのロイヤリティが向上するだけでなく、新規顧客の獲得に繋がることが期待できるため、結果的に広告費などの削減に繋がると考えられます。

消費行動が多様化しモノがあふれた現代では、商品やサービスの質を向上させるだけでは、他社と差別化することが難しくなりつつあります。

しかし、CXMによって他社では得られない顧客体験が提供できれば、リピーターの獲得などに繋がり、企業競争力の強化が図れるのです。

CXM実施時の3要素

CXM実施時の3要素

CXM(顧客経験管理)を実施するためには、いくつかの重要な手順を踏む必要があります。

それぞれの手順は相互に関連しており、効果的なCXM実施のためには、これらの要素を統合し、全体的な戦略の一部として取り入れることが重要です。

ここでは、CXM実施時の特に重要な3要素を解説します。

顧客データの活用

顧客データの効果的な活用は、CXMの成功にとって不可欠です。

企業は、収集された顧客データを分析し、それにもとづいて製品やサービスの改善、新しいマーケティング戦略の策定、または顧客サービスの向上を図ることができます。

顧客データの活用には、データの品質を確保し、プライバシーとセキュリティを維持することも重要です。

適切なツールの選定

CXMを効果的に実施するためには、適切なツールの選定が必要です。

これには、顧客データを収集、分析し、管理するためのソフトウェアやプラットフォームの選定が含まれます。

適切なツールを選定することで、企業は顧客のニーズや期待を理解し、顧客のフィードバックにもとづいてサービスや製品を改善することができます。

また、ツール選定の際には、将来的なスケーラビリティ(拡張性)やカスタマイズ可能性も考慮することが重要です。

組織文化の変革

CXMを成功させるためには、組織文化の変革も必要です。

これまで可視化することが困難であった「顧客の経験」をデジタルツールによって収集・分析し、ビジネスに活かしていくためには、「組織に関わる全ての人が顧客中心の文化を築く」というマインドを持つことが欠かせません。

ビジネスのあらゆる場面、どのようなシーンであっても従業員が顧客のニーズを理解しようと努め、それに応えて行動することができることが重要です。

組織文化の変革には、単なる従業員の意識改革だけでなく、リーダーシップのコミットメントや従業員のトレーニングなどの環境作りを通じて、顧客経験の改善を重視する組織の価値観を全体で共有する取り組みが大切です。

CXM導入企業の事例

顧客中心時代の勝者になるためには、企業は顧客との関係を深化させ、顧客体験を向上させる必要があります。

このために、多くの企業が顧客との関係をデジタル管理する方法を、従来のCRMからCXMへとシフトさせているのです。

ここでは、既にCXMによって顧客との関係性をより深化させている企業の事例を紹介します。

スターバックスの事例

スターバックスの事例

アメリカ生まれのコーヒーショップチェーン「スターバックス」は、モバイルアプリを通じて顧客の購買履歴や嗜好をリアルタイムで分析し、パーソナライズされたオファーや情報を提供するCXMの仕組みを作り上げました。

このモバイルアプリは、店舗あるいはオンラインショップでの注文機能やポイントカードシステム、決済管理機能を持つだけでなく、新製品の発売やキャンペーン情報、クーポンなどを顧客に届けるシステムになっています。

これにより、顧客は自分に合った商品やオファーを受け取ることができるようになります。一見すると、メールマガジンなどの従来の「広告や宣伝を送る」という手法と同じように見えますが、それぞれの顧客の好みにより合致した情報が届くこともあって、顧客からは「お得な情報がもらえる」「新商品の情報をすぐに知ることができる」といった多くのポジティブなフィードバックが寄せられているようです。

また、アプリを使って知人にメッセージとともに金額を指定したギフトを贈ることのできるシステムを採用することにより、新規顧客の獲得に新たな広告費をかけず、既存顧客の口コミといった「善意の行動」によって大幅な広告費削減を実現しています。

Netflixの事例

Netflixの事例

動画配信サービスの大手「Netflix」は、以前よりCRMの活用などDX推進に前向きな企業でした。

しかし、CRMにもとづいた動画の提供システムには、前述の通り限界があります。この視聴履歴の管理それにもとづくレコメンデーションをするだけのシステムであり、顧客の嗜好にパーソナライズした動画を適切におすすめすることは難しい状況にありました。

この課題を乗り越えるために導入したのがCXMです。

CXMの導入により、Netflixは高度なアルゴリズムを利用して顧客個々の視聴嗜好を理解し、これまでにないパーソナライズされたコンテンツのレコメンドシステムを提供することができるようになったのです。

これにより、顧客は自ら積極的に好きなコンテンツを探そうとしなくても、簡単に自分の好みに合ったコンテンツを見つけることができるようになりました。

顧客からも「いつも面白いコンテンツを見つけることができる」「推薦された映画やドラマが好みに合っている」といったフィードバックが寄せられており、Netflixの顧客ロイヤルティはますます高まっていることがわかります。

東京ガスの事例

東京ガスの事例

「東京ガス」は、DX推進に前向きな日本企業の1つです。

DX施策の一環として、顧客のニーズに応えるために、東京ガスはこれまでもCRMにより様々なデータを収集・活用していました。

しかし、従来のCRMでは、顧客からのフィードバックを収集するプロセスが非効率的であり、迅速にリアルタイムで顧客対応をすることは困難でした。

そこで、CXMの概念を導入することで、東京ガスは顧客からのフィードバックをリアルタイムで収集し、サービスの改善に活用することができるようになりました。

これにより、顧客の問題や要望に迅速に対応し、サービスの質を向上させることができるようになったのです。

それだけでなく、キャンペーン情報を顧客の属性に合わせてお知らせしたり、ポイントシステムを採用して貯まったポイントで買い物できるECサービスを用意するなど、顧客体験の質を向上させる数々の施策を取っています。

顧客からも、「問い合わせに対する対応が早くなった」「サービスが以前よりも使いやすくなった」といったポジティブなフィードバックが寄せられています。

まとめ~CXMで顧客の心をつかみデジタル時代の勝者へ!

CRMからCXMへの移行は、中小企業にとって、顧客ロイヤルティを高め、ビジネスの成果を向上させるための重要なステップです。

CXMの実施により、顧客との繋がりを強化し、持続可能なビジネス成長を達成することは、今後ますます競争が厳しくなることが予想される、デジタル時代で生き残る大きなカギの1つになるでしょう。

このデジタル時代において、顧客の行動をデータ化し分析するだけでは、十分な競争力を持つことは難しいと言わざるを得ません。

それだけでなく、顧客の期待やプリファレンスまでをデータ化し、活用し、顧客の体験をプロデュースしていくより積極的な企業活動が求められるでしょう。

そのために企業は、CXMなどを活用して「顧客体験」自体を管理していくことが求められるのです。

それはまさに「顧客中心時代」の到来です。顧客の心をつかむことこそ、企業が生き残っていく唯一の手段だと言っても良いでしょう。

顧客中心時代で勝つ企業となるために、ぜひ一度CXMの概念について向き合うことをおすすめします。

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この記事の執筆者

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

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