【DX時代のデータ保護】中小企業向けサイバーセキュリティ|ステップとベストプラクティス

【DX時代のデータ保護】中小企業向けサイバーセキュリティ|ステップとベストプラクティス

DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)とは、「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出によって人々の生活をより良くする」ことです。

DXに向けて、情報のデータ化や業務のデジタル化などを行い、IT技術を導入していく際には、オンラインの活用は避けて通れません。

その一方で、DXが進みオンライン活用が広がるにつれて、より重要度が増しているのがセキュリティ問題です。

もはや企業の大小や業種を問わず、すべての企業が向き合わなければならない課題であると言えるでしょう。

そこで今回は、データ保護の重要性を改めて取り上げるとともに「DX時代のデータ保護対策」として、サイバーセキュリティ施策のステップとベストプラクティスを解説します。

インターネットの利用拡大によって新たなビジネスチャンスを創出できる現代だからこそ、日に日に重要性を増しているセキュリティ問題を考えるきっかけとして、どうぞご参考にしてください。

データ侵害のリスク

データ侵害のリスク

DXの推進は企業活動に多くの利点をもたらしますが、一方で新たなサイバーセキュリティリスクも生じさせます。

サイバーセキュリティとは、一般的に「情報の機密性、完全性、可用性を確保すること」を指します。総務省の資料を参考にすると、この3点は次のように説明できます。

  • 機密性:ある情報へのアクセスを認められた人だけが、その情報にアクセスできる状態を確保すること
  • 完全性:情報が破壊、改ざん又は消去されていない状態を確保すること
  • 可用性:情報へのアクセスを認められた人が、必要時に中断することなく、情報にアクセスできる状態を確保すること

参考:国民のためのサイバーセキュリティサイト「サイバーセキュリティって何?」/総務省

インターネットを通じて、情報が世界中をあっという間に駆け回り、時間と場所の制約を超えて伝わることは、現代ビジネスの最大の魅力と言っても過言ではありません。

この力を活用することができれば、新たなビジネスチャンスを創出するチャンスを掴むことも夢ではないでしょう。

しかし、ビジネスの可能性を一気に広げる一方で、拡大を続けるデジタル環境は企業に対する新たな攻撃方法を作り出しています

オンライン上で扱うデータが増えることは、利便性の向上と同時に、データが脅かされる可能性が高まることも意味しているのです。

現在、サイバーセキュリティを考える上で特に重要なデータ侵害のリスクとしては、主に次の3つがあげられます。

  • マルウェア
  • フィッシング攻撃
  • ランサムウェア

それぞれの代表的な被害事例や、対策方法などについては、下記の記事もご参照ください。

マルウェア

1つ目のリスクはマルウェアです。これはコンピューターシステムに侵入し、その性能を低下させたり、データを破壊・盗用したりする不正なソフトウェアを指しています。

マルウェアは、「悪意がある:Malicious」と「Software」を組み合わせて作られた造語ですが、まさに文字通り、悪意をもった外部からの攻撃を行うソフトウェアです。

マルウェアはIT黎明期から存在していますが、もともとは自身のテクニックを試したり、誇示したいハッカーなどの愉快犯が大半を占めていました。

しかし、IT技術の進歩とともに、他国への諜報活動を行う国家組織や、企業への意図的な攻撃などの犯罪行為の被害報告が増加しており、そのソフトウェアも多種多様になっています。

そのため、企業としても様々なパターンを想定して警戒をしていくことが必要だと言われているのです。

フィッシング攻撃

2つ目はフィッシング攻撃です。これは、信頼性の高い企業や組織などを装い、メールやWEBサイトを通じて利用者の個人情報を盗み取る攻撃です。

フィッシング攻撃は、企業のシステム全体に対する攻撃とは違い、一般ユーザーなど個人にターゲットを絞って攻撃することが多い手法です。

しかし、一度従業員のPCから情報が流出してしまえば、場合によってはビジネスの存続危機に関わるような事態に発展する可能性もあるため、企業全体で対策することが必要です。

ただし、一見すると信頼できる情報源からのメッセージに見えるため、従業員が誤って企業の重要情報を漏らしてしまうケースは後を絶ちません。

企業としてもシステム上の問題ではないため、従業員のセキュリティ意識の向上とルール化の徹底などしか対応することが難しいこともあり、大きな問題となっています。

ランサムウェア

最後にランサムウェアという脅威もあります。これは、ユーザーのファイルやシステムを暗号化し、特殊な暗号のロックをかけてしまうソフトウェアを指しており、悪意のある攻撃者から送りつけられるウイルスのことです。

ランサムウェアに感染してしまうと、そのコンピュータやシステム内のデータがロックされ、解除しない限りアクセスができなくなってしまいます。

そのため、企業としては重要なデータを「人質」に取られた状態になってしまうのです。

攻撃者は、その人質となったデータ解除のための「身代金(Ransom:ランサム)」を要求するため、このような名で呼ばれています。

身代金を支払わない場合は、データが永久に利用不能になる可能性があるため、企業にとっては死活問題となる深刻な被害に繋がってしまうケースもあります。

中小企業のDXとサイバーセキュリティステップ

中小企業のDXとサイバーセキュリティステップ

こうした攻撃に対応し、大切な情報を守り抜くためには、次のようなサイバーセキュリティ施策が必要となるでしょう。

  • セキュリティソフトウェアの導入:一般的なサイバー攻撃から企業を守るソフトウェア。インストールするだけでなく、常に最新の状態を保つことが重要であり、これにより新たな脅威に対しても適切に対処することが可能になる。
  • 従業員へのセキュリティ教育:従業員1人ひとりがセキュリティ意識を持つことで、組織全体のセキュリティ効果が向上する。フィッシング攻撃の見分け方やパスワード管理のルールを決めたり、基本的なサイバーセキュリティの知識を身につけさせたりすることで、イージーなヒューマンエラーによる被害を防止する。
  • システムの定期的な更新とパッチ適用:システムの脆弱性を事前に排除するために、定期的なシステム更新とパッチ(発見された問題点を修正するプログラム)の適用を行うことで、セキュリティホールの修正や、新たな脅威に対する防御力を高める。

一見するとサイバーセキュリティ施策を実行するには、専門的な知識や予算がかかってしまいそうですが、実はこうした施策は、リソースが限られている中小企業でも、適切な戦略を持つことで十分に強化できます。

ただし、サイバーセキュリティへの対策を効果的に行うには、次のようなステップで全社的に取り組むことが有効です。

ステップ1:リスク評価

サイバーセキュリティ対策の基礎となるのが「リスク評価」です。

ここでは、どのようなデータが攻撃対象となりうるのか、そのデータが侵害された場合にどのような影響が生じるのか、データの重要度を含めて評価します。

更に、どのような攻撃ベクトルが存在し、それらがどのように行われるかを理解することもリスク評価において重要なポイントの1つです。

リスク評価を実施することで、社内データのどの部分に対策を集中すべきかや、どのようなセキュリティソフトウェアが必要なのかなどが明確になります。

ステップ2:セキュリティポリシーの策定

重要なデータの特定が終わったら、次はセキュリティポリシーの策定に移ります。

具体的なアクション、責任の所在、緊急時の対応プロセスなどを明確にすることを通じて、データを保護を実行に移していく作業です。

この段階では、従業員へのセキュリティ教育をしっかりと徹底し、セキュリティ意識の基盤であるポリシーをしっかりと浸透させることも重要でしょう。

従業員がポリシーを理解し、それを日々の業務に適用できるようにすることができれば、何よりも強固な防波堤を築くことに繋がります。

ステップ3:セキュリティ対策の実施

ステップ1、2がしっかりと対応できたら、必要とされるセキュリティ対策を実際に行います

実際の行動としては、リスク評価で特定した攻撃ベクトルに対して適切なセキュリティソフトウェアを導入したり、重要なデータの保護措置を講じたりすることが考えられるでしょう。

また、従業員への教育も継続的に行いながら、導入したソフトウェアの正しい使用方法などを理解させることも重要となります。

ステップ4:定期的なセキュリティチェック

ステップ3を実行した後も、定期的なセキュリティチェックを実施することが重要です。

定期的なセキュリティチェックを行うことで、システムの脆弱性を早期に発見することができれば、被害に遭う前に、必要なアップデートやパッチを適用することができるでしょう。

また、定期的なセキュリティチェックの際には、システムや各従業員が使用するPCのセキュリティソフトウェアが最新のものに更新されているかも確認しなければなりません。

こうした機会を定期的に設けることは、従業員のセキュリティ意識の向上にも繋がります。

サイバーセキュリティのベストプラクティス

サイバーセキュリティのベストプラクティス

前述のように、サイバー攻撃の手法は日々変化しており、それに対応するサイバーセキュリティも進化を続けています。それに伴い、企業が行うべき「ベストプラクティス」も日々変化していくものです。

そのため、サイバーセキュリティのあり方を固定的なものとして捉えず、変化に迅速かつ柔軟に適応し、最新の防御戦略を積極的に採用する姿勢をもつことが、自社の大切なデータという財産を守る重要な考え方となります。

とはいえ、やはりサイバーセキュリティに関する意識が高い企業が行っている施策には、いくつかの共通点はあるものです。

今回は、現時点のサイバーセキュリティのベストプラクティスとして、いくつかの施策を取り上げてご紹介します。

これらのベストプラクティスは、データ侵害のリスクを大幅に軽減するだけでなく、企業全体の信頼性を高め、ビジネスの持続的な成長を支える重要な要素となるでしょう。

また、それぞれのプラクティスは、特定の脅威やリスクに対する対策を提供すると共に、全体として組織のセキュリティ体制を強化します。

これら一連の戦略を効果的に活用することで、組織はデータを保護し、サイバーセキュリティの潜在的な課題に対応する準備を整えることができるのです。

マルチファクター認証

マルチファクター認証(MFA)とは、ユーザーの身元確認の際に、複数の要素を確認することで、安全性を担保するセキュリティ手法です。

例えば、パスワードに加えて、ユーザー自身の生体データや身分証明書、電話番号などを認証要素として設定する方法があります。

こうした複数のセキュリティ認証をかけることにより、万が一パスワードが漏洩してしまったとしても、他の認証要素を満たすことができない場合はアクセスができないため、セキュリティ効果は大幅に向上するのです。

エンドポイントセキュリティ

エンドポイントとは、日本語で「終点」を意味する言葉が示す通り、ネットワークの「末端」であるデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)の全てを指しています。

現代ビジネスでは、社内のデスクに置かれたパソコンなどの端末だけでなく、個人所有のモバイルなどが業務に利用され、データ活用の幅は大きく広がりました。

どこからでもデータにアクセスできることは、業務効率化や多様な働き方の実現に貢献する一方で、インターネット経由でデータにアクセスする全てのデバイスがウイルスやマルウェアに感染するエンドポイントになってしまう可能性を生み出します。

そこで、このエンドポイントを保護するために、アンチウイルスなどを導入して、企業ネットワークに接続するすべてのデバイスを保護する仕組みを作り上げることが重要です。

その他の対策としては、既存の脅威であるブロックやウイルスのパターンを照会し、危険と判断されるファイルを自動的に削除する機能を導入するなど、脅威からエンドポイントを守るプラットフォームを整えることも考えられます。

これは、「EPP(Endpoint Protection Platform)」と呼ばれ、マルウェア感染を水際で防ぐことを目的としたセキュリティ対策の1つです。

また、EPPをすり抜けるウイルスへの対応として、「EDR(Endpoint Detection and Response:エンドポイントでの検出と対応)」と呼ばれる技術が必要となる場合もあります。

EDRは、マルウェアやハッキング攻撃からデバイスを防御するだけでなく、異常な活動を検出して警告する機能も備えているため、早期に問題を察知し、対策を講じることが可能になっているのです。

EPPやEDRを組み合わせてエンドポイントを守る二重のセキュリティが、現代のサイバーセキュリティでは重要と考えられています。

インシデントレスポンスプラン

近年のサイバーセキュリティでは、インシデントレスポンスの重要性が日毎に増しています。

インシデントレスポンスとは、セキュリティインシデント(セキュリティに関する重大な事件や事故)が起こった際、そのインシデントに対応する取り組み全般を指しています。

  • インシデントの原因特定と除去
  • システムや業務の復旧
  • 社内外の関係者との連絡や調整

サイバー攻撃が発生した場合に、これらの対応策を明確にするためにインシデントレスポンスプランを策定しておくことが重要です。

このプランには、問題の早期発見、影響の最小化、システムの回復、事後分析、あるいはどの部門がどのような役割を担当するかなどの取り決めや手順の全てが含まれます。

従来のセキュリティ対策では、「インシデントを発生させないための施策」が重要と考えられていましたが、サイバー攻撃が高度化・複雑化・巧妙化の一途をたどる現代においては、その被害を完全に防ぐことは不可能です。

そのため、インシデントが起こりうることを前提に、「不測の事態に備えた対応策」を想定しておくことが重要なサイバーセキュリティ施策の1つになっています。

まとめ~サイバーセキュリティは1人ひとりの意識向上から

サイバーセキュリティは1人ひとりの意識向上から

DX推進への取り組みは、中小企業にとっても避けて通れない道であり、そのためにはインターネットを通じたデータの活用は必須条件です。

しかし、DXの道のりは、同時にオンラインで扱うデータの増加を意味しているため、サイバーセキュリティの重要性が高まる道のりでもあるのです。

インターネットを介したデータ侵害は、貴社の貴重な財産だけでなく、企業としての評価や成長をも脅かす、重大な危険性をはらんでいます。

サイバーセキュリティはソフトウェアやハードウェアの管理だけではなく、人間的な要素も含みます。従業員の教育や組織文化の改革も同等に重要です。

データ侵害の多くはヒューマンエラーによるものであるとの調査結果も発表されていることからも、この重要性が明らかでしょう。

この調査によると、データ侵害にあった原因には、従業員による誤った情報の共有やフィッシングメールへの誤った対応などが含まれています。

従業員1人ひとりがサイバーセキュリティの基本を理解し、日々の業務においてそれを適用することが不可欠なのは言うまでもありません。

DXとサイバーセキュリティは、貴社が成長し、持続可能なビジネスを構築するための両輪です。

どちらか一方に偏ることなく、同時並行バランスよく進めていくことが求められます。

本記事で紹介したサイバーセキュリティのステップやベストプラクティスを参考に、ぜひとも貴社のDXを成功へと導いてください。

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DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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