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AIを活用した人材育成3つの注意点
AI技術の導入は人材育成の分野においても革命をもたらしていますが、その活用にはいくつかの注意が必要です。
以下、主な注意点を3つ解説します。
- AIを完全に信頼しない
- 必要な機能を選ぶ
- 個人情報の管理を徹底する
AIを完全に信頼しない
AIの分析力は優れたものですが、AIの提供する情報やアドバイスはあくまでも「予測」や「サポート」の範疇に留まるものであり、絶対的な正解を示すものではありません。
人材育成は、人間の成長、能力、感情、そしてキャリアの方向性など、多岐にわたる要素が複雑に絡むプロセスです。
どれだけ豊富なデータを学習したAIであっても、各社員のことが完璧に理解できるわけではありません。
そのため、AIの分析結果や提案をすべて鵜呑みにするのではなく、実際に従業員と向き合う経営者や管理職の社員が、経験や専門知識をもとに最終的な判断を下すことも極めて重要です。
例えば、AIが提案したプランで育成を実行したものの、思ったような成果をあげることができなかった社員は必ず発生します。。
AIが提示した人材育成が想定通りに行かなかった理由は、その社員の持つ個性が「型にはまらないもの」であり、AIの「予測」の範囲に収まらなかったことが原因かもしれません。
つまりAIが提示できるのは、膨大なデータから導き出される最適解や最大公約数であり、もともとデータに含まれていないような際立った個性を持つ人材に対しては、有効な指針を提示できない場合もあるのです。
しかし、こうした「型破り」な人材が、組織のために力を発揮できる環境を整えられれば、これまでにはなかった新たなビジネスモデルの構築や斬新な視点からの組織改革などに繋がる可能性もあります。
経営者や管理職の社員の中には、これまでの豊富な経験から、こうした人材の能力を十分に活かすノウハウを直感的に獲得している人も少なくありません。
AIには不可能な「この人は型破りだからおもしろい」という評価を下し、特別な才能や個性を活かすことができるのはやはり人間だということです。
これは、AIが持つ予測演算の限界とも言えるでしょう。
こうしたAIの根本的な問題を無視し、どんな場合でもAIが提案するプランを強権的に適用してしまえば、企業への信頼の低下、成長やモチベーションの阻害に繋がる可能性も考えられます。
そのため、AIの育成プランをすべて鵜呑みにするのではなく人事担当者や上司の人間としての洞察や経験を用いて、AIの提案を補完して、より適切な方向性を示さなければなりません。
AIは非常に強力なサポートツールとしての役割を果たすことができますが、その結果や提案を盲目的に信じるのではなく、人間の経験などを組み合わせることで、より質の高い人材育成を実現することが求められるのです。
必要な機能を選ぶ
市場には数多くのツールやシステムが存在し、それぞれが独自の機能や特徴を持っています。
中には特定の業界や企業規模・目的に特化したものも多く、すべてのツールが自社のニーズに合致しているわけではありません。
そのため、導入を検討する際にはまず自社のビジネスモデルや戦略、人材育成における具体的な目的や課題を明確に定義することが求められます。
この定義は、後のツール選定の基盤となる重要なものとなります。自社の現状に対する深い洞察と分析があってはじめて、目的や課題に最も適した機能やサービスを提供するツールを選択できるのです。
例えば、オンボーディング(新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセス)を効率化したい場合、初期研修のカリキュラム自動生成機能や、社員のスキルマッピング機能が必要になるかもしれません。
その場合は、これらの機能が充実しているかや、自社の育成プログラムに合わせてカスタマイズできるかなどが、ツールを選ぶ際の大切な基準になるでしょう。
ツールを導入する目的が明確に定義されていることは、無駄な機能や過度に高度なオプションに惹かれて、高額なシステムを導入してしまうリスクの回避にも繋がります。
必要以上の機能を備えた高額なシステムを導入してしまうと、ROI(投資対効果)が低くなってしまうリスクがあるだけでなく、不要な機能があるせいで時間やリソースが無駄になり、実際に必要な人材育成が十分にできない可能性も考えられます。
AIを活用した人材育成ツールは、自社のニーズと合致するものを選ぶことで、最大の効果を発揮するでしょう。
適切なツール選定は、企業の成長と社員の発展のためのカギとなる要素です。
個人情報の管理を徹底する
AIを活用した人材育成ツールは、社員のスキル、経験、業績などの詳細な情報を分析するため、多岐にわたる個人情報を取り扱います。
このような情報が包括的に分析されることにより、社員のキャリア形成や育成において非常に価値のある情報のアウトプットが可能になるわけですが、その一方で、不適切な管理や取り扱いが行われると、情報漏えいやプライバシーの侵害といったリスクが生じる危険性があります。
従業員の個人情報や人事情報の管理は、従来から重要視されてきましたが、様々な情報を一元的に管理するAIを導入する際には、これまで以上のリスク管理が求められることは言うまでもありません。
特に「ChatGPT」などに代表される、コンテンツ生成AIを組み込んだサービスを利用する場合は、外国のサービスプロバイダーに提供することになる可能性があるため、より一層の注意が必要です。
社内での管理体制の徹底だけでなく、利用するサービスのセキュリティや個人情報利用に関するルールなどをしっかりと確認する必要があると言えます。
2023年6月2日に個人情報保護委員会が公開した、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」においても、以下のような注意点が示されています。
参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等/個人情報保護委員会
- 保有個人情報を利用、提供する場合は、特定された利用目的に限られる
- 個人情報を含むデータを第三者に提供する場合は、あらかじめ本人の同意を得なければいけない
- 生成AIサービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報の内容等を踏まえ、生成AIサービスの利用について適切に判断しなければならない
AIを活用した人材育成ツールの導入は、企業の成長と社員の発展を促進するという点で大きなメリットをもたらしますが、それと同時に、個人情報の適切な管理とその取り組みの透明性の確保が不可欠です。
まとめ~人材育成と組織文化のDXはAIの活用が必至
DX時代において、企業の人材育成を含む組織文化の変革は、避けて通れない課題です。
AI技術の進化は、人材育成のDXを加速させるカギとなり、AIによるタレントマネジメントシステムを活用することで、従業員のモチベーション向上や新しい取り組みの創出も期待できます。
ただし、単に人材育成にAI技術を導入するだけでは十分とはいえません。
AIを導入する目的やAIだけに頼らないような運用が肝心です。同時に、DX時代に合わせた組織文化の変革や、従業員1人ひとりの意識変革が重要になってきます。
従来の教育方法や組織文化に囚われず、新しい技術を積極的に取り入れることで、中小企業も大企業に劣らぬ競争力を持つことが可能となります。
新しい技術を恐れずに積極的に取り入れる姿勢は、今後の企業の成長を支える要となるでしょう。
貴社におかれましても、AIの技術と人材育成について改めて向き合い、企業の継続的な成長を目指してください。